おやじギャグは最強。そんなことより国作りしようぜ。
『ぐわはッハハハ』
オークキケローは未だに腹を抱えて笑っている。おやじギャグ好きすぎか!
「おっぱいがいっぱい」
『何を言ってるんだお前は?』
「おう」
おや、どうやら普通のおやじギャグではオークキケローは笑わないようだ。
『それではプレイスタートだ』
”ドンドンドドドドド”
「布団がふっ豚だ」
『ぶふぉ』
オークキケローから笑いが漏れステップが乱れる。なるほど豚を入れたギャグに反応するわけか。
「おまえは豚だ豚野郎だ」
『ぶふぉぉ』
オークキケローがステップを踏み外しライフが削られていく。
『きさまぁ卑怯だぞ!』
すまんな、ダンスの楽しさを思い出させてくれたのには礼を言うが、この世界を破滅させるわけにはいかないんだ、だから弱点を突かせてもらうぜ!
「豚のお肩を叩きましょうトントントントン」
『ぶふぉっぉぉぉぉぉ』
オークキケローがモンキー・ダンス・レボリューションはおろかすべてのリズムゲーをミスった。
『こんなばかなことがぁああああ!!!』
「お前とは正々堂々戦いたかったが世界の命運がかかっているのでな、許せ」
オークキケローは爆発すると一人の褐色の美しい女性が現れた。
女性は始めてシンミアに会ったときと同じく裸で目のやり場に困るほどの放漫ボディーだった。
「豚野郎! やっと解放されたな」
シンミアがその女性に飛び乗るとパシパシと豚耳のついた頭を叩く。女性はそのどでかい胸にシンミアをしまうと俺にお辞儀をした。
え? どうなってるのそれ?
おっぱいの谷間にシンミア吸い込まれたよね? え? え? え?
まあシンミアの仲間なので危険はないだろうけど。
「ええと、あなたが封印されていた神の一人で良いんですか?」
「ええ、そうです。私の名前はスヴィニヤー、風を司る神です。あなたが解放者ですか? まさか私より先にシンミアが解放されているとは」
どういうことですと聞く俺にスヴィニヤーは言う。
通常、解放する場合は風属性であるスヴィニヤーから解放していかないと、封印神を持つ神に勝てないのだと異世界の神に言われたのだと言う。
順序を選ぶのもゲームの一環ですと言っていたのだと言う。
倒す順番は風→土→水→火→闇で、それぞれの解放神の力を借りて戦わないと倒せないように設定したのだということらしい。
「でも、シンミア解放されてますよね?」
「余程激戦だったのでしょうね、あなた様の記憶がなくなるほどに」
そう言うとスヴィニヤーは俺を抱きしめる。
ふっふぉぉぉ!
超巨乳ののおっぱい枕ってこんなに柔らかいの?
なにこれ天国なの?
これが持つ者の力なの?
だが、一瞬俺の脳裏に映像が走った。青い髪の少女? 赤い髪の少女?
二人が笑顔で俺を……。
あああああああああああああああああああああ!!
「何か思い出しましたか?」
映像がフラッシュバックする。何かバグのようにぐちゃぐちゃだが大切なものだ。
「分からない、分からないけど。会いたい……二人に、みんなに……」
俺の目から涙がこぼれ落ちる。分からない。
分からないのに、分からないのに。
それからどのくらい時間がたったのだろうか。スヴィニヤーの胸から頭を引きはがすと、何が起きたのかスヴィニヤーに問いただした。
「私は風が操れます。風は世界中の記憶を持っています。そこからあなた様の記憶を拾ってきました。ただ遠いのであまり戻らなかったようですが」
「そうなのか。ありがとう。少しだけだけど思い出した。俺には大事な家族がいるってことが」
「あなた様が住んでいた場所で風を集められれば、記憶を完全に戻すことも可能です」
スヴィニヤーって思ってたより有能だな、踊り好きのギャグ好きだから、てっきり遊び人みたいな神かと思ってた。
「あれ、スヴィニヤーは光と闇を除いた四人の神様の中で最弱じゃないの?」
「ええ、シンミアが怒るので、そういうことにしてるんですよ。可愛いでしょこの子」
そう言うとクスクス笑う。もちろんそれに怒ったシンミアが顔を胸から出し、スヴィニヤーを攻撃したが「入ってなさい」と押さえ込まれて渋々胸の隙間の中に戻った。
ほんとう、どうなってんのそれ。
「とりあえず、これを着てください」
俺は一瞬で作り出した村人の服をスヴィニヤーに渡した。スヴィニヤー専用装備もあるのだが製造できなかった、素材もレベルも足りていないようだ。
「ところで、シンミアは大丈夫なんですか?」
「ええ、私の胸の中で回復させてますよ。かなり身体が損傷しておりましたので」
やっぱり無理してたのか。
いや、そうじゃなくて、どうやってシンミアその胸にいれたの?
まあ、なにかアイテムストレージみたいなものなのだろう、気にしたら負けだ。
俺たちはクレミアやクリストファが倒れてる場所に行き、念のため追加で回復薬(低)++を飲ませると、スヴィニヤーからさらに詳しい話を聞いた。
「あなた様、生き残った仲間はこれだけですか?」
「いや、そうじゃなくて最初から俺とシンミアそれにこの二人だけでここに来たんだ。それとあなた様じゃなくてケンタで良いよ」
「分かりましたケンタさま。そうですか4人で……。今回はシンミアがいたからなんとかなったんでしょうね」
「そうだねシンミアには無理させてしまった。すまないと思う」
「それでケンタさまはこれからどうなさるのですか?」
「神様を全員解放して異世界の神と戦う気だよ。この世界の神様には恩があるみたいだしね」
「この世界の神ですか? 今封印されている者以外ですと光の神、リュミエール様が生きてらしたのですか?」
そう言えば俺って女神様の名前知らないんだよな。リュミエールって言うのか。
リュミエールは異世界の神から攻撃される他の神をかばい、羽根を散らして異世界の神に殺されたと思っていたのだと言う。
「しかし、スヴィニヤーたち神様が負けた異世界の神って何者なの」
「異世界の神の名は精霊龍デルス・マグラ。しかし敵は神だけじゃないんですよ何千何万というドラゴンテイマーですその力は一騎当千、この世界の者では誰一人勝てませんでした」
異世界の神は龍かよ。それにドラゴンテイマー軍団? モンスターテイマー最上位の存在じゃないですか。
そんな連中が何千何万って無理ゲーじなんて話じゃない。
テイマーに勝てるのはテイマーだけ、そんなの常識だ。
この世界はたぶんテイマーがいない、つまり勝てない、勝つ手段がない。
……だからって逃げるわけにはいかないよな。
シンミアもそうだけど。俺と一緒に戦ったかもしれない人たちがいるこの世界を見捨てて逃げるなんてことはできない。
「兵力増強が必要だね」
「はい、それに次に戦う、水の神が封印された悪魔族の戦いは通常戦闘ではなくチェスを題材にした戦闘を行いますので、今のままではメンバーすら確保できていません」
チェスか。チェス……。なんで将棋じゃないかな。日本人なら将棋でしょ。あかん今回のダンスと同様また自信がなくなってきた。
まあ、弱音は吐いてられないけどな。
「た、倒したのケンタ?」
クレミアが目を覚まし周りを見回して言う。
「ああ、終わったよ。君がいてくれて助かった」
「そう……」
そう言うとクレミアは大剣を俺の首筋に当てる。
先程のゲームの時とは違い剣の動きが全く見えなくなる。超高速のゲームが見えてなんでこれが見えないのかな。
「申し訳ないけどケンタ、あなたの命もらうわよ」
休戦が終わり、また戦闘状態ということか。ならクリストファも……。いや俺だけか、正直完全回復する人間なんてやばいからな。
だけど……。
「悪いけど俺の命はあげられないんだ。世界を救わなきゃいけないからね」
「世界を救う? 何をバカな」
「本当ですよ」
剣を突きつけられてる俺に代わり、スヴィニヤーが今、世界が置かれている状況をクレミアに説明した。
「そんな馬鹿な」
「本当です。この世界はケンタさまがいなければ遅かれ早かれ滅亡します」
「ケンタだけがこの世界を救えるかもしれないの?」
「はい、救えるのはケンタさまだけです。ちなみにこの区域はダンスフィールドが張ってあります。ですから戦闘行為は無効化されてますのでケンタさまをどうこうできませんよ」
どうやらダンスフィールドはこの土地自体に設定されていて、復活した今もそのまま維持されているのだという。
「わかったわ、世界の危機だと言うなら手伝わせてもらうわ」
「手伝う? いや君にそこまで迷惑は」
「バカ言ってんじゃないの。あんたのためじゃなくて世界のためよ」
「……。そうだね、手伝ってくれると助かる」
「クリストファあんたはどうするの?」
どうやらクリストファは寝た振りを決め込んでいたようで、クレミアに起こされ頭を掻く。
「正直、俺はまだ生きていたい。ケンタに言われて、あれから色々考えたんだ。俺のしたことを、それで死を選ぶんじゃなくて少しでも人のために、迷惑をかけた人を救うために生きたいと思う」
「そうか、だけど助けた人から石を投げられるかもしれないぞ」
「分かってる、俺はそれだけのことをしたのだから許されなくて当然だ。だけど、それでも世界を救う手伝いをしたい」
「分かった、なら俺の仲間になってくれないか」
「当然だ。ケンタの側にいるのが一番人のために働ける気がするしな」
「ありがとう」
「それでケンタさまはどうするんですか?」
俺のやることは決まっている。正直、いままで何も考え無しすぎた。世界を救うために何も考えてなかった。
「俺はここに国を作ろうと思う」
「国ですか?」
「ああ、国をつくって兵力を集める。だけど他国を攻めるようなことはしない。それに攻めてきた国を倒すこともしない」
その言葉にスヴィニヤー得心が言ったと手をポンと叩く。
「なるほど、ここはダンスフィールドですから戦えませんしね」
「ああ、それに、それを利用して色々考えてることがあるんだ」
「俺も手伝うからな犬!」
胸から顔を出したシンミアが俺を励ますように言う。
俺はシンミアの頭をなでスヴィニヤーの胸を見ながら俺も埋まりたいと思うのだった。




