3 ゆかいな仲間たち
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「初教室で遅刻するとは、お前は一気に有名になったな」
「初めに印象が強い奴は後に飽きられて滅びる奴だ」
俺以外みんな座っている教室に前のドアから入り、みんなから変な目線で見られながら、自分の席に座った自分に話しかけているのは、俺の命の恩人であり、友人であるキール。既知の間であり、唯一話せる人だ。
「そんな顔で見るなよ。周りを見ろ。このクラス女子の平均値は高いぞ」
「そんなのはどうでもいい」
「え…お前…男がいいのか?」
「ちがうよ。今は女を気にするより、学園生活を無事に過ごせるかが問題でしょ!」
「大丈夫だって、確かにもうグループは出来始めているが、まぁ俺がいるから安心しろ」
「それって僕がすでに出遅れているってこと!?︎」
「おっとごめん、ほかの友達に呼ばれたから行くね」
「それが次に出てくるセリフか!おい、親友を早速見捨てないでくれ〜」
急に存命危機な状態となってしまったが、さてどうしたものか。とりあえず、周りを見渡して見た。学校の方針として貴族と庶民が一緒になっているだけでなく、装備、訓練、思想、バイト、恋愛、身だしなみなどの自由を保障している。つまりは中にはアンチがいるということになるが、面接はあるから本当にヤバい奴はいないらしい。そう願おう。そういったアンチの集まった学校があるらしが。そんなまともな清き学び場でアンチになっている僕だが。いや、まだ試合は始まったばかり、必ず逆転できる隙が現れる。そう願おう。しかし、やはりそうか。貴族は貴族のグループ、庶民は庶民のグループで固まっている。校風が自由なので、貴族と庶民の制服以外見分けがつきやすい。身振り、道具、話し方。貴族様たちは相手の家の身分によって話し方を変える。また犬猿の仲だった場合はそれ相応の態度を取っている。お互い従兄弟だというのも、使用人も生徒だというのも珍しくない。
「…おい、おい、落ち込んでんのか?」
キールが俺の肩を叩いた。
「…あっ、ごめん、なんか言ったか」
「せっかくお前に友達を作るチャンスを与えたのに。まぁいい。紹介するぜ。」
おお、キール!
僕に友達を作るチャンスをくれるとは、なんて君は友達思いなんだ。キルスが手のひらで指した方へ見てみると、まるで暴力を体現したかのようなごっつい男がいた。
「………」
「こいつがキルのダチか?ゴーリス・レイドルだ。よろしくだぜい。…あ?何黙ってんだよ。早く喋れよ!」
「あ、えっと、カイト・エルです。こ、こちらこ…」
「おお!カエルか!俺たちダチだぜ!な!な!」
ずっしりと肩に重い腕がかかり、頭に響くほど大きな声で強要してくる。
(おい、何てやつ紹介してんだ!)
(なんか目立ってたし、お前と気が合いそうだなと)
(僕とどう合うと言うんだ。明らかにダメなやつだろ、ていうかなんか勝手にウケないあだ名つけられたんだけど。こいつ、あれだよ、僕たちと価値観違う奴だよ)
(まあまあそう怒るな。他にもいるんだから)
小声でキールに訴えた僕は、他という言葉を受け、大男の隣を見た。ゴーリスという名の男の陰でわからなかったが、自信に満ちている顔をしている女の子がそこにいた。長い茶髪で細身だ。正直かわいい。急な女子に心の準備をしていなく、少し戸惑った。最近女子と喋っていなかったから、慣れてない。この僕に女友達ができるとは。
おお、キール!
さっきのゴーリスというやつはノーカンにしてやる。これからの話しかけが勝負だ。落ち着け、あまり大げさになっても引かれるだけだ。僕は脳細胞全てを使い、言葉を成句して
いっていたところ、
「やあ、少年。私はセリナ・フェルネーテスだ。一緒にこの国をぶっ壊さないかい?」
「……は?」
「この国をぶっ壊さないかい?」
「……え?」
「この国をぶっ壊さないかい?」
「…いやいやいや、ちょっと待て!君、何言ってるんだ?」
「うむ、誰もがそういう反応をするだろう。私は貴族の娘であるが、家の地位は低くてな。我がフィルネーテス家の繁栄のために、まずこの国を転覆しなくてはならない。」
確かこの国の貴族の中には世紀の問題児がいると聞いた事がある。国家転覆を図り、逮捕状が出ても親がなんとか取り消させたが、その思想を治さない問題令嬢。人々は彼女を「叛逆嬢セリナ」と呼ぶ。
(おい、何てやつ紹介してんだ!)
(面白いこと言ってたし、お前と気が合いそうだなと)
(さっきから俺のことどう見てんだよ!こいつ国をぶっ壊すとか言ってんだぞ。関わったらやばい奴じゃん。なんでアンチばっか仲間にするんだよ!)
(お前は勘違いしていることがある)
(?)
(俺はもともとそっち側だ)
(…僕は最初から負け組だったのか)
「おい、何コソコソしてんだよ。俺も混ぜろよ」
「決意を固めてくれたか?では、早速作戦会議を始める」
「お、作戦会議か。面白そうだな」
「サクセンカイギってなんだ?美味しいのか?」
…やばい。こいつらとは関わらない方が良い。何、机を動かしてんの?やばいよ、初回から教室慣れた感出すのは。
「ほら席につけ。HRやるぞ」
やっと担任教官が来た。一人真面目そうな女子が尋ねた。
「教官、なぜ遅れたのですか?もう1時間遅れですよ」
「うるさい。別にいいじゃねーか。ほらほら、出席とるぞっと、あ!お前はあの時俺のパンツ覗いた少年ではないか!」
この後僕は惨劇に見舞われるのだが、もはやこの時点、いや、パン食いパンチラおっさんであるライン教官に会った時から取り返しのつかないことになっていたのだった。