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2話 憑依

 グリストに剣術を教えてもらうことになったのはいいが、問題はいくつも残っている。

 戦闘訓練では魔物と戦う必要があるのにこちら側は一人で戦うことになる。


「グリスト、実体化とかできないの?」

「無茶を言うのう。この体でできるのは憑りつくことだけじゃ、それも相手が抵抗したらすぐに追い出されてしまう。とてもじゃないが何かできるわけではないの。」


 やっぱりか、となるともう相手に憑りついてもらって嫌がらせをするぐらいしか…。とは言っても存在は知られているわけで、簡単にはさせてもらえるはずもない。


「とりあえず一度僕に憑りついてもらっていいかな?不快感がどの程度のものかも分からないし。」

「セリアがいいのなら儂は構わんが。」

「じゃあ頼む。」


 息を大きく吸い未知の体験に備える。


「じゃあ行くぞ?」


 声と共に体の中にぬるりとした生ぬるい異物が入るような感覚がくる。異物のような感覚はすぐに消えたが、体の内側から徐々に温度が下がっていくような不快感がくる。

 ひとまず、拒絶しないように気持ちだけでも受け入れるつもりで身をゆだねる。腕には鳥肌ができているが我慢する。


「おかしいのう。」

「ッ!?」

「グハッ…」


 突然のことで思わず拒絶してしまったらしい。体から影が飛び出してくる。しかし、今のは…。


「痛いのう、突然追い出さんでもよかろうに。」

「ごめん、ついね。ところで僕の体に入ってるときに「おかしいのう。」とか喋った?」

「そのことか。いやの、普段なら入ってすぐにでも追い出されるのがしばらく中に留まることが出来たから不思議に思っての。」


 やっぱりか、さっきの声はグリストが出していたものだったのか。グリストはやったつもりは無いみたいだけど、僕が受け入れようとしていたからか。


「どうしたんじゃ?まだ体調が悪いかの?」

「あぁごめん。ちょっと考え事をね。グリスト、もう一度入ってみてくれるかな。」

「構わんが本当に大丈夫じゃろうの?」

「うん、お願い。」


 先ほどと同じ気持ち悪さと共にグリストが中に入ってくる。心構えはできてるので早速試すことにする。


「グリスト、聞こえる?」

「うむ、聞こえるぞ」


 僕の口からグリストの返事が聞こえる。やっぱり僕の体を使ってグリストが話してるみたいだ。


「じゃあ、腕を上げてみてくれる?」

「儂、腕無いんじゃが…。」

「そこは生きてた時のイメージで、無理そう?」

「こうかのう…。」


 何かに持ち上げられるように右腕がゆっくりと上に上がる。力を入れている訳でもないのに、不思議な感覚だ。


「む、これは儂が動かしとるんかの?」


 グリストも気づいたようで、腕を上下に動かし始める。


「うん、僕は動かしてないよ。さっき話してたのも僕の口から話してた。」

「ほほう!いいのう、腕とはこんな感覚じゃったか。無くなってから忘れていたが便利なもんじゃのう」


 久しぶりに体を持てたのが嬉しいのか近くに置いていた本を持ち上げてみたり、手を閉じたり開いたりしている。


「でもこれが使えるかっていうとどうだろうね、相手が受け入れてくれることなんてないだろうし。」

「意識を落としたら乗っ取れたりせんかの?」

「できるかもしれないけど意識を落とせてたら苦労しないよ。」


 となるとやっぱり剣術の練習をするしかないのか。グリストがどう戦いに関わるかまだ分からないけど、僕自身が強くなるのが一番なのは確かだ。立派な先生もいることだし多少はましになるだろう。


「今は剣術の練習をすることにするよ、教えてもらっていい?」

「それはいいんじゃが、儂も頼みがあっての」

「僕にできることなら構わないけど…。」


 グリストからの頼み?思い浮かばないけど、僕にできることなら少しでも叶えてあげたい。教えてもらってばかりというのも個人的にはよろしくない。一応主って扱いだから、ほら見た目が。


「たまにでいいから体を貸してくれんかの」

「体を貸すの?」

「無理にとは言わんがの。さっき体を動かしてみて思ったより懐かしくて楽しくての、無茶はせんし都合のいい時だけで構わんから少しだけダメかの?」


 多少の気持ち悪さはあるけど耐えられないものじゃないし、もしかしたらゴーストとして強化されるかもしれない。コツを掴むみたいに。そのうち相手に与える影響も大きくなるかもしれない。そんなかもしれない可能性が少しでもあるなら喜んで貸そう。


「いいよ、貸す前に一言言ってくれたら。」

「よいのか、お主の体調が悪くなるんじゃぞ?」

「それくらい大したことないからね、憑りつく練習にもいいだろうし。」

「ありがとうの、今から楽しみじゃ。」

「その代わりに剣術の練習はしっかり頼むよ。」

「任された、根を上げるんじゃないぞ?」




「それで剣術の練習って何をするの」

「まずは体作りじゃの、今のセリアが剣の形を作っても体を壊すのが目に見えておる。まずは体を作り、次に剣を振ることに慣れ、最後に形を作る。大きく分けるとこの3つじゃ。」

「基礎ばかりな気もするけど。」

「基礎は極めれば応用より役立つからの。あんなものおまけじゃ、おまけ。それと、目標を定めるほうが身に入るんじゃが。セリア、学校の戦闘訓練はいつからじゃ?」

「2ヶ月後だよ、それまでに魔物についての授業がいくつかあるからその後になる。」

「なら、その戦闘訓練が目標じゃの。相手を倒せるくらいにはなってもらおうかの。」


 楽しそうな声と共に影がゆらゆら揺れる。思ったより感情が影に表れてるらしい。しかし2ヶ月で戦えるようにするとはどんな練習が待っているのか…。


「厳しくいくから覚悟しとくんじゃぞ。」

グリストのイメージはDQのメラゴーストです。顔を無くして色を黒くした感じ。

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