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九十七話 過去はワケありとベッドの上に広がる夢様


「ロゼリィこれ、今週分の支払いです……」


「はい、確かに二人分頂きました」




 異世界に家は無いので、俺は『ジゼリィ=アゼリィ』という宿で暮らしている。


 宿泊費は毎回一週間分を前払いしているのだが、なぜか俺の支払いは二倍になった。



 この間から給料を貰えるようになり、宿泊費も従業員割引で通常価格の二割の支払いで済んではいるけど。




「マスター……洗濯終わりました。この下着、穴が開いていました……捨てますか?」


 アプティが洗濯物の入ったカゴを持って現れ、俺のパンツを開いて見せてきた。


「きゃっ……パ、パパ……」


 ロゼリィが顔を真っ赤にする。


 顔に手を当て見えないようにしているが、指の隙間からチラチラ見ている。



「自分のは自分でやると言ったはずだが……まぁ、ありがとうアプティ。でもそういうのは人が多くいる食堂では見せないようにな。じゃないとまた噂が、な」


 俺の苦言にアプティは無表情で首をかしげている。


 どうにもこの子、少し常識がずれている気がする。まぁ、そこがかわいかったりするが。

 

 そしてこの子がなぜか俺の側を離れなくなった。


 宿の部屋を借りてとりあえず様子は見ているが、出て行こうという気配が無い。そして支払いはなぜか俺。





「家出じゃないのかな?」


「さぁ……そういう込み入ったお話は本人には聞きづらいですし……」


 ロゼリィと小声で話す。


 彼女、年齢は俺より上だろうか。もう子供じゃないのだろうから、帰るも帰らないも本人の意思で好きにしていいとは思うが。


「でも野暮な話、お金の負担が俺なんだよな……」


 毎朝起こしてくれたり、身の回りのお世話を積極的にやってくれたり、たまに肌色多めの服なのをいいことに、その豊かな胸をじーっと見ても怒らなかったりと、大変いい子なんだけどさ。特に最後ね。




「は~い社長~調べてみたよ~」


「お、ラビコ。どうだった?」


 ラビコの部屋に行き。頼んでいた結果を聞く。



「一応、この街の警備の騎士に調べてもらって~王都にも情報探ってみたけど~家出捜索であの子の情報はなかったね~。分かったことは、とりあえずこの街の住人ではないみたい~ぐらいかな~あっはは~」


 そうか。まぁ、それ言ったら俺は何者だと思われているんだって話になるしな。


「気になって~社長も調べてみたんだけど~この国には情報なかったね~社長ってどこ出身~?」


 う、マズイ。


 異世界から来たとか言いにくいし、どうにか誤魔化そう。


「すまん、俺もワケありだ。この街に来る以前の話は聞かないでくれると助かる。だからアプティも同じ境遇な気がして放っておけないんだ、理解してくれると嬉しいんだが……」


 俺の話をふぅーんといった感じで聞いているラビコ。


 やっぱ怪しいよな、俺。


 よくみんな受け入れてくれたよな……そこは感謝しかない。


「ま、基本冒険者なんてやっている人はワケありだしね~。しかも社長は十五、六かい? その歳で放浪の冒険者とか、ワケがなきゃおかしいもんね~。ま~それだったら私が十歳から冒険者やってたから~私のほうがワケありだしね~あっはは~」


 ラビコって十歳から冒険者だったのかい、そりゃーすげーな。俺はラビコの頭を優しく撫でる。



「すごいな、ラビコは。よく頑張ったな、えらいぞ」


「ほぉっ……ちょ……はぁ~社長ってなんか~お父さんみたい……年下なのにな~。もっと撫でろ」


 ラビコが目を閉じて静かになる。




「マスター洗濯物、干し終わりました……」


 ラビコの部屋にいつの間にかアプティが立っていた。


「うぉ!」

「ひっ……!」


 俺とラビコがマジで驚きの声を上げる。


 だってラビコの部屋のドア、鍵かけていたし。



 なんなのこの子……。





 俺の部屋見たら、その洗濯物がお誕生パーティーか! ってぐらい立体的に洗濯紐が張り巡らされ干されていた。



 俺のだけでなく、アプティの下着も干されているのはなぜ。


 しかもちょうど俺のベッドの上に集中している。





「縞パンかぁ……」


 そこには俺の夢が広がっていた。














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