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九十三話 港復興と俺のクッキーを食う女様


「港も補修終わったのか、早いなぁ」

 



 街の復興がほぼ済み、ほとんどの人が以前と同じような暮らしに戻った。


 港も商店街も以前の活気が戻って来ている。あれから暇を見つけては街を見回り、様子を見ていたがもう大丈夫なようだ。



 ベスの散歩がてら港が見渡せる小高い場所にある公園に来てみたが、船の往来も以前のように活発になっているように見える。



「どれ、イケメンボイス兄さんお手製クッキーでもいただくか」


 宿を出るときに売店で兄さん手作りのクッキーを買い、簡単な水筒にアップルティーを入れてもらった。クッキーはチョコ、ナッツ、ドライフルーツの三種類。


「ベスッ」


 ベスが鳴き、自分もと催促してくる。


 おっと、ベスにはこれだ、兄さん特製味無し小魚の煮干し。もう一つの水筒の水を皿に注ぐ。


 こうしてベスと二人で公園でのんびりしていると、ここが異世界だって忘れちゃうな。




 公園のベンチに座り、ぼーっと海を眺めていたら、甘い香りの風が吹いた。


 ベスが鼻をぴくっと反応させる。


 なんというか女性物のシャンプーの香りのような甘い、柑橘系の香り。この公園には俺とベス以外いない、誰かの髪から香ったのかと思ったが誰もいないしな。


「ベスッ」


 ベスが軽く吼える。警戒音ではない。



「………………」


 ふと振り返ると、そこにはクッキーの袋を持った露出度高めの服を着た女性がいた。


 え、さっきまで誰もいな……。



「あれ? 俺のクッキーがない……」


 女性はモッシモシいい音をたてて食べている、俺のクッキーを。



 長めの髪にウサギ耳のカチューシャを頭につけ、バニーガールのような肌色多めの衣装。


 お尻には動物の尻尾アクセサリーをつけ、膝から下はごつい鉄で出来た武具をつけている。


 冒険者さんか? にしてはエロい格好。もしかしてそれ系のお店の人で今休憩中とか? 


 なんにせよ、なんで俺のクッキー食ってんだよ。ドライフルーツのは最後に食べようと取ってあったのに……。



「……っふ、えっふ……こっふ」


 あ、喉詰まらせたっぽい。


「ど、どうぞ……アップルティーです……」


 女性は俺が差し出したアップルティーを美味そうに飲み干す。


「……これ、おいしい……」


 そ、そうですか。


 兄さん特製クッキーは美味いんですよ。俺もわざわざここに持って来て食べるぐらいです。



 女性はコップをぐいと差し出してきた。


「あ、アップルティーですか? ど、どうぞ……」


 飲み物がおいしいと言ったのか、俺は水筒に残っていたアップルティーを全部注ぐ。


 女性はぐいぐいとコップのアップルティーを飲み干していく……ああ、それ俺が味わいたかったやつ。



「…………」


 女性は俺の隣に無言で座り、豊かな胸の間から一枚の小さな紙を取り出した。うっは、やっぱそれ系のお店の人か?


「きぃ、きっせつ、季節の変わり目って今……どうぞお変わりなくお過ごし? あなたが心配なの、じゃあ抱いて……」


 女性はカサカサと紙を広げ、たどたどしく読み上げた。


 内容は意味不明、最後の抱いてには俺の耳が大きく反応したが。

 

 紙をしまい、じーっと俺を見てくるが、何? 無表情なのがもったいないぐらいすっげー美人さんだけど。



「……抱いて……と書いてある」


「うわっ! ちょっと……! やめっ、ひぃいいい」




 女性はいきなり俺の俺部分に手を伸ばしてきた。


 な、なんなのこの無表情だけど妙に積極的な人は!







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