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八十七話 アンリーナとバラのお風呂様


「ふぉおおおおっ! ふぉぉぉぉ!!」



 俺の隣の席に座っているロゼリィが壊れた。



 ダッシュで自分の部屋に戻り、数本の化粧品のボトルを持って来た。


 なんだ、結構持っていたんだな。確か結構お高いはず。



「わ、私の今の宝物です! あのあの、出来ましたらサインをいただきたいですっ!」



 ロゼリィが震える手で大き目のボトルの化粧品を差し出した。


 ガラスで出来た入れ物で装飾も細かく凝っていて、色が薄く紅色がついている。なんたらオイルと書いてあるな。


「あら、これは二年前のモデルね。私も今これを使っていますわ。近々新作を出しますのでお楽しみにですわ」


 アンリーナがさらさらとボトルにサインをした。慣れた感じのサイン、まぁあちこちでこういうサインの要望があるのだろう。


 ロゼリィはサインしてもらったボトルを上に掲げ、恍惚の表情で眺めている。


 サインが終わったアンリーナがくるっと俺のほうを見て構えている。


「ああ、俺も今アンリーナにもらった化粧品のボトルにサインして欲しいかな」


 待ってました、お安い御用です! といった感じで鼻息荒くさらさらとサインをしてくれた。


 多分これ、かなり貴重品になるんだろうな。メーカーの娘さんの直筆サイン入りの化粧品とか、すごいよな。


「サインも嬉しいけど、俺はアンリーナにこうして会えることのほうが嬉しいかな」


「ひっ……! はぅほおおお!」


 アンリーナが帽子を両手で押さえてプルプル震えながら座りこんでしまった。ど、どうしたんだ。


「もう、普通にそういうことを言えるのがすごいです。最近分かってきたのですけど、妙なところで素直に本音を言うのがあなたなんですよね……そういうところが人を惹きつける魅力なんでしょうけど私としては不安の種です」


 ロゼリィに溜息をつかれる。


 俺なんかしたか?




「おほん、そういえばこの宿屋兼酒場に温泉が出来たのですね。なかなか手広く商売やっていますのね」


 正気に戻ったアンリーナが食堂の奥の通路にある『温泉こちら』の看板に目を付けた。オープン以来、大好評です。



「今日はバラのお風呂の日か、よかったら入っていかないかアンリーナ」


「バラのお風呂!?」


 アンリーナが驚いた顔をする。初めて聞いたらしく、ポカンとした顔をしている。こっちの世界ではあんまりない風習なのか。



「バラの花を湯船に浮かべてあるのですか!? なんですかそれ! 見たいです! 師匠見たいです!」


 アンリーナが大興奮して小刻みにジャンプしだした。


「ロゼリィ、とりあえず案内して見せてやってくれ」


 ロゼリィに言って、お風呂に案内してもらう。入るわけではないから料金はいいだろ。





「ひいぃぃぃいいいい!!」


 女湯から悲鳴。


 アンリーナが全速力で俺のところに走ってくる。


「すごいすごいすごい! あんな幻想的なお風呂初めて見ましたわ! すごいです! あれは女性なら絶対入りたいです! 赤とか黄色とか白とか……もう綺麗で夢に見そうなぐらいですわ!」


 よかった、うちの一番人気のお風呂だよ。


 男の俺でも、あの色とりどりのバラが散りばめられたお風呂は心がときめく。



「もう我慢出来ません……私お風呂に入ってきますです!!」


 アンリーナが興奮しながら吼え、服を脱ぎ出した。


「ちょっ……! 落ち着けアンリーナ。ここはまだ食堂だ!」


 気付いた漢達がヒューヒュー言って盛り上がっている。


 俺は慌ててアンリーナを抱きかかえお風呂まで走る。これまた俺の悪い噂にならないことを祈る。


「ふぅぅぉぉぉ! お姫様抱っこ! 師匠にお姫様抱っこ!」


 アンリーナが別方向に大興奮。


 あんま暴れないでくれ、脱ぎかけの服から……その……見えるんで。




 通路の奥のお風呂コーナーの手前に、背中に輝く強者のオーラを放つ鬼がいることに気がついたのはそれから二秒後のことだった。









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