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七十三話 ソルートン防衛戦 6 三千騎士と魔女救出戦様


「ほれぃ! ほれぃ! なんじゃあ? 十回も突かずに終わってしまうんかぁ?」


 

 農園のオーナーのおじいさんが全身赤いフルアーマーで現れ、次々と紅鮫、エイの群れを消し去っていく。



 なんという圧倒的な力。おじいさんはほぼその場を動くことなく、数回突いただけで上空を埋め尽くしていた蒸気モンスターをほぼ蒸発させた。



「す、すげぇなじいさん!」

「おおおお!」


 俺の横の男達と、逃げていた街の人が歓喜の声を上げる。



「こんなもんけぇ。お、ほれ。向こうさんも打ち止めじゃと」


 そう言われ海に浮かぶ不気味な島を見ると、無限にこちらに向かって飛んで来ていた蒸気モンスターの数が一気に減った。



「ほっほ、小さな魔女が動きだすころかのぅ……」



 その瞬間、街の南側にある砂浜、そこで一筋の紫の光が轟音を鳴らし天を貫いた。


 相当離れた場所にいる俺達にも伝わる空気の衝撃波。あの光……。



 上空にいた数匹の紅鮫が方向を変え、その紫の光の柱に向かって飛んで行く。


 丘から下の街をみると、港を埋め尽くしていた魚ゴーレムも砂浜の光に向きを変え、ゆっくりと移動を始める。


 街の上空にいた数千~数万の紅鮫、エイ達もその光を目指し飛んで行く。



「な、なんだ? みんなあの紫の光に向かっていくぞ?」


「蒸気モンスターはのぅ、強い魔力に吸い寄せられるんじゃ。エサを求めての」


 俺の驚きにおじいさんが答える。


 エサ? 吸い寄せられる?


「ここはもう大丈夫じゃの、ほっほ。さぁ勇気ある少年、行くんじゃろ? 心配はいらんけぇ、ここはワシが死守するからのぅ。誰一人、ケガすらさせないと少年の勇気に誓うとしようかのぅ」


 おじいさんが優しい目で俺を見てくる。


「見えるんじゃろ? 街で戦っている冒険者がどこにいるか、残った敵の動きも全部のぅ。じゃがワシ等には見えん。この濃い靄は人の視界を狭め、恐怖を生むんじゃ」



 丘の上から下の街を見る。


 ジゼリィさんが使った光の粒のシールドのおかげで、余計に街で戦っている冒険者がどこにいるかはっきり分かる。光に向かわなかった敵の数、位置全て見える。


「自分が今すべきことが分かったのなら行くんじゃ。例えあの小さな魔女とはいえ、無傷ではすまんけぇ」



 あの天をも貫いた紫の光は、街の被害が最小限に済むようにと取った行動。


 敵が出きったタイミングで放ち、全ての敵を戦っても被害の少なくて済む砂浜に集め、一人で戦う。


 

 敵の数は数万、それでもあいつはその行動を取った。



「……行きます。俺は街に残ったモンスターを全て排除し、そして仲間を助けに行く、大事な俺の仲間を!」


「ほっほ、いい目じゃのぅ。ほれ、老いぼれから勇気ある少年にちょっとしたプレゼントじゃ」


 おじいさんが俺の足にランスの先をコツコツとつける。


「早足の魔法じゃ、五分で切れるがのぅ」


 ありがとうございます。俺は街を丘の上から見回し、冒険者の位置、その人の戦力を十段階で評価、残った敵の位置、数を頭に叩き込む。



「友よ、帰ってこい、約束、だ」

「ああ、簡単には死ぬつもりねーよ」


 ハーメルと拳を合わせる。



 ロゼリィがゆっくり近づいて来る。


「行くのですね……心配です、本当は行って欲しくない……でも友達を、私の親友を助けて欲しい……」


「大丈夫、あいつはそんな簡単にはやられねーさ。でも俺が迎えに行って来る」


 親友か。


 いつも言い合いしたり、喧嘩みたいなことばっかやってるけど、ロゼリィにとってはもしかしたら初めての何でも本音で言い合える親友と思える人なんだろう。




「行くぞ、ベス。バカな魔女を迎えに行く」



 ベスの頭を撫で、俺は走り出す。



「待ってろ、一人でバカな作戦考えたことに文句言ってやるからな……ラビコ!」




















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