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七十一話 ソルートン防衛戦 4 二人の男の背中様

 

 港に上がって来る魚ゴーレムは海賊のおっさん、街のほうの空飛ぶ紅鮫と巨大エイはローエンさんとジゼリィさんが軸になり、蒸気モンスターの侵攻を抑えている。


 他の冒険者のグループは濃い蒸気で周りが見えていないらしく、各地で点々と応戦している。




 海の向こうの島からは次々と蒸気モンスターが押し寄せて来ている。


「これは……長くは持たないぞ」


 こちら側で戦力になっているのは三人。それに対し蒸気モンスターの数は数千~万。


 しかも増え続ける一方。無限ポップポイントをどうにかしないとこちらに勝ち目は無くなる。




「きゃああああ!」

「こ、こっちに来たぞ!」


 俺の後ろで悲鳴が上がる。


 見ると、紅鮫とエイの一団が俺達に気づいたらしく街を素通りし、こちらに向かって飛んで来ている。避難していた街の人が四方に逃げ走り出す。


 くそっ! 俺はロゼリィの手を掴み……どこに行く? どこに逃げる? 他の人を見捨てて逃げるしかないのか? ベスと応戦するか? 


 しかしあの数、全て俺達に向かってくれればいいが、逃げ惑う街の人を広範囲で襲われたらどうしようもない。何人死ぬか想像もしたくない。



「それでもやるしかない、ロゼリィは宿の皆と行ってくれ。俺はここで応戦する、ベス! 気合入れろ!」


「い、嫌です……嫌です! 私はあなたと……」


 俺はベスの頭を撫でる。


 ここにいる全ての人は守れない、すまない。


 俺はロゼリィと宿の皆を中心に守ることしか出来ない。覚悟を決めろ、この選択はおそらく一生後悔するのかもしれない。でも今の俺ではこの決断をするしかない。俺の力では守れる命の数は少ないんだ。


 それでも全てを倒すことは出来ないだろう。


 ベスの力が尽きるまで、それがタイムリミット。


 そうなったらベス抱いて、ロゼリィを優しく抱きしめて目を閉じよう。





「友よ、俺の命も、使って欲しい」


 逃げ惑う街の人の中から一人の男がゆっくり歩みを進めてきた。笛を持ち、デカイ剣を背中に背負っている。


「ハーメル、いいのか。今回は報酬は山分け出来ないぞ」


 ハーメルが笛を小さく吹くと、倉庫の向こうから巨大なクマが立ち上がった。


 無数のホエー鳥を引き連れ、足元にいる犬、猫、猿、イノシシなどの動物達と共にこちらにゆっくり歩いてくる。その巨大なクマに驚き、逃げる足を止める街の人達。


「いい。友の、立ち向かう、覚悟を、見た。それで、じゅうぶん、だ」


「背中は預けるぞ、ハーメル」


 俺とハーメルがコツンと握りこぶしを合わせた。



 嫌がるロゼリィを新人五人組に預け、イケメンボイス兄さんに謝る。




 俺は覚悟を決め、ベスとハーメルに目を合わせる。


「さぁ行くぞ。追い詰められた人間の力ってのを見せてやろうじゃないか」

「ベスッ!」

「行こう。友よ」


 先行してこちらに向かって来る紅鮫の集団に目標を定め、ベスに指示を出す。



「撃てぇ!」










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