七百話 お城の七枚の外壁トラブルとサーズ姫様のご登場様
カフェジゼリィ=アゼリィのほぼ目の前にあるペルセフォス城。
確か今から八百年前ぐらいに出来上がったとか。
つまり国として八百年の歴史があるのだが、この異世界の中では比較的新しい部類らしい。
まぁ魔法の国セレスティアや花の国フルフローラ、火の国デゼルケーノ、こないだ行った星神の国レディアホロウなんかは、もっと古く、千年以上前からあるらしいからな。
「あ~、だっる~。なんなのこの城~、巨大な外壁が七枚あるのだけでもウザイのに、入口が毎回正反対の場所にあるかとマジ意味不~。か弱いラビコさんには永遠に辿り着けない~。社長おんぶ~、それか馬車~」
カフェジゼリィ=アゼリィでお昼をいただき、騎士ハイラを送り届ける目的地、ペルセフォス城へ向かう。
水着魔女ラビコが駄々こねだしたが、まぁこのお城、ちょっと面倒なんだよね……。
お城を囲うように分厚く巨大な外壁があるのだが、これが七枚等間隔で設置され、一個目の壁の門をくぐると、次の壁の門は正反対の場所にあるという、迷路に放り込まれたネズミの気分が味わえる、という仕様。
お城を守るための仕組みなのだろうが、歩くと結構時間かかるんだよね。
以前このお城に泊まらせてもらったがことがあるが、ご飯を食べにさっきのカフェジゼリィ=アゼリィに行こうとしたら、外壁をぐーるぐる……結局お城を出るのが面倒になり、お城の食堂でご飯を済ませていたこともある。
「おんぶって……絶対俺よりラビコのほうが体力あるだろ。馬車は……ロゼリィ、大丈夫か? 辛いなら馬車をお願いするけど」
「大丈夫です! むしろ、健康のためにはもっと歩かないといけません……が、おんぶをしてくれるというのなら……その……」
俺とかラビコはいいとして、宿の娘ロゼリィは冒険者でもない普通の人だからな。
体力的に厳しければすぐに馬車を呼ぼうとロゼリィに聞いてみるが、大丈夫そうか。
つか、なんで後半モジモジしだしたの。
ロゼリィをおんぶ、かぁ……。
うん、お胸様が大きなロゼリィをおんぶ……それはもうあれだな……俺の背中に夢が広がるご褒美タイムだな。
お城を囲う外壁の中には、基本一般人は入れない。
だが入る目的が認められ身分確認を済ませたあと、騎士が御者をやってくれている馬車に乗ることは出来る。
有料だがお城の入口まで運んでくれて、超楽。
異世界では体力が無いとやっていけないし、俺も基本歩くようにしているが、ロゼリィが辛いというのなら、喜んで俺が馬車になりますよ!
「分かった! 俺がロゼリィをおんぶ……」
「ちょ~っ! 私の時は一瞥で拒否してなんでロゼリィのときだけそんなに甘いのさ~! ずっるい! ずっるい~! 絶対ロゼリィの巨乳目当てだろ~! こんのクソ童貞が~! 私だって胸そこそこ大きいっての~!」
俺が鼻息荒くしゃがみ、自慢の広い背中でロゼリィを受け止める準備をしたら、水着魔女ラビコが意味不明にブチ切れて俺に飛び掛かってきた。
「ロゼリィは冒険者じゃない普通の人なんだぞ! 配慮は当然で、リーダーである俺が背負う責任が……あ、こら、ズボン下げようとすんなこのクソ魔女ぉぉ!」
いたたっ、うんご……! パーティーリーダーとして個人の体力面に配慮しただけであって、童貞関係ねぇだろ!
……極わずか、一ミクロン以下、微量に下心はありましたけども!
ってラビコが俺のズボンを下げようと、とんでもない握力を出してきたんだが、ここってペルセフォスの騎士さんが普通に行きかう道だって分かってんのか!
もしここで俺の自慢の大剣が露出しようものなら、そこにいる騎士さんに秒で捕まるだろうが!
「にゃっはは、マジでキングとラビ姉って仲良いよなァ。相性が良いっつーか、お互い信頼し合っているっつーか。何でも遠慮なしに言い合えるとか、夫婦の理想だよなァ」
「……羨ましいなぁ……私もああいうの、憧れます……」
ちょ、猫耳フードのクロにロゼリィ、お願いだからこのクソ魔女さんを止めて。
羨ましいって何の話……こんなトラブルメーカー、水着魔女ラビコ一人で手一杯だっての!
「……マスターのはこれぐらい……でしょうか」
「え、すごい……! ラビコ様頑張って下さい! ぜひ先生のあれのご披露を……!」
バニー娘アプティが無表情に手振りで何かの大きさを表現し、それを見た騎士ハイラが顔真っ赤。
あの、ハイラさん、ご披露って……あなたは騎士で、むしろこういうのを取り締まる側でしょうが!
「ベッス」
愛犬に助けを求めるも、興味無さげに大あくび。
お願い、誰か助けて……
まぁ欲を出した俺が悪いんだけどさ……。
「はい到着ペルセフォス城~。あっちには私の研究所があるけど寄ってく~?」
その後、俺が半ケツを出したところでアプティが止めてくれて、露出罪とかで捕まらずに済んだ。
俺を半ケツにした張本人、水着魔女ラビコがニコニコ笑顔でお城の入口から横に伸びる道を指すが、研究所には行かねぇよ。
そういやこいつには専用の研究所があるんだよな。
お城横とか、さすがの好待遇ってやつだな。
以前行ったが、キャベツが育ててあって、それ以外は広い空間とデカイお風呂があった、ぐらいか。
今はサーズ姫様にハイラを送り届けるのが目的なので、寄り道はしないっす。
「やぁ、待っていたよ。ようこそペルセフォス城へ……と、どうした、随分と疲労しているようだが?」
お城の門で身分確認を済ませ、中に入ると巨大な吹き抜けホール。
久しぶりのお城に感動していると、赤いじゅうたんが引かれた豪華な階段から女性が降りてきた。
あれはサーズ姫様……! 相変わらずお美しい……ん、待っていた?
今日俺たちが来るのが分かっていたのか?
携帯端末での連絡が取れない異世界で、どうやって?
と、とりあえず挨拶だ!
「あ、お、お久しぶりですサーズ姫様! こ、この度は突然お伺いしたのにも関わらずご対応していただきありがと……」
「どうした、そんな他人行儀に。私と君の仲だろう」
俺が全力でこの国の王族であられるサーズ姫様に頭を下げ挨拶をするが、サーズ姫様が近寄ってきて、笑顔で俺の肩や腕をポンポン触ってくる。
他人行儀? あ、いえ、さすがに職業『街の人』の俺とサーズ姫様では身分差がすごいので、この対応が最善かと……。
「肩で息をして随分と疲弊……ああそうか、来る途中の列車で全員としたのか。それは羨ましい」
サーズ姫様がさすが王族、気品ある仕草と柔らかな笑顔で……とんでもないことを言い出した。
ちょ……! なんでカフェジゼリィ=アゼリィのシュレドと同じ発想なんですか!
俺が疲労しているように見えるのは、直前に水着魔女ラビコが暴れたからですって!
外壁の門からお城に歩いて移動した……これだけですよ、たった十六文字で表せる行動なのに、あいつが暴れたおかげでこんなに文字数が膨れ上がって……
つかしてねぇっす!
おかしいな……サーズ姫様ってこんな人だっけ……?
なんと700話ー!
長いお話にお付き合いいただいている読者様に感謝ァ!
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影木とふ




