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七十話 ソルートン防衛戦 3 今を守る親の力様


 あまり寝ることも出来ず早朝。



 俺はベスを引き連れ小高い丘に登り、状況を見る。


 不気味な島はもうだいぶ近づいている。数キロ沖ぐらいか。




「きた……」


 島の濃い靄を纏った富士山のような高い山から、何かがこちらに向け飛び立った。ものすごい数、もう黒い雲のような集団。


 海にも巨大な影が見える。何かがものすごい数、蠢いている。



「空からと陸から。陸は港で地上戦で行けるが、空は……」


 対空攻撃は手持ちの武器では届かない。下手したら一方的にやられてしまう。




「皆さん、大丈夫でしょうか。お父さん、お母さん……」


 ロゼリィが俺の横に来た。泣いてはいない。覚悟を決めた顔。


 他の人もやはり街が気になるようで、この高台に登ってきている。



 空からの部隊が早い。街の港上空に到着すると、8の字で周回し始めた。


「あれは鮫のやつだ」


 以前、お姫様のとき戦ったやつだ。


 あれはとても素早く、隙を見せると集団で突撃してくる危険なやつ。この街の冒険者がどこまで戦えるか。


 あとは見たことの無い、巨大なエイのような奴が空からの部隊に混じっている。


 相当でかい、ここから見ても分かるぐらいの大きさ。鮫を蟻と表現すると、蝶ぐらいの大きさがエイになる。



 港の各地点から、遠距離攻撃が始まる。


 弓、投石、一部魔法のようなもの。どれも当たる事はなく、威嚇ぐらいにしかなっていない。


「鮫にあんな遅い攻撃は当たらない……」



 港に海を蠢いていたものが着いた。


 ゆっくり港に上がってくるそれは、人の倍の大きさはある魚頭のゴーレム。動きは遅い。


 続々と上がって来る魚ゴーレムを一人の男が巨大な斧でなぎ倒していく。一振りで十匹近くを切裂き、蒸気に変えていく。


「すごい……あれ、海賊のおっさんだ! すげぇんだな、あの人!」


「え、お世話になっている海賊みたいなおじさんですか? よく見えますね、私には何か小さなものが動いているぐらいしか……」


 群れをなして押し寄せる蒸気モンスター。


 それぞれが蒸気を出している為、街中が蒸気で覆われてきて視界が相当悪い。


 そして倒すと蒸気に変わる為、さらに視界は悪くなる。長引くと数、状況がどんどん不利になる。


 数の比率は人が一に対して蒸気モンスター千、ぐらいか。とにかく上空を漂う鮫の数が半端ない。



 冒険者達は各々の地点で応戦している。


 守りたい物がそれぞれ違うのだろう。船だったり、家だったり。しかしあれでは……。



 空中に浮いていた巨大エイが真下に向け、蒸気の塊を吐いた。


「逃げろ! まともにくらうぞ!」


 真下には数人の冒険者グループ。あの鎧、酒場によく来ていた世紀末覇者の人達だ。だめだ、覇者達の動きは遅い。



 港に向け走っていた二人組みの女性のほうが二刀流の長い剣を上に掲げ、叫ぶ。


二本の剣が光り、その人を中心に港の地面に枝が張り巡らされるように光が連鎖していき、港にいた冒険者全員の体が光の粒で覆われる。


 エイが放った蒸気の塊が下の世紀末覇者達に命中。しかしその光の粒のシールドが蒸気の攻撃を弾いた。


 二人組みのもう一人の男が両手に薄い光る円盤を作り出し、上空のエイに向けて投げる。二枚の薄い円盤はエイを貫通、さらに上空にいた鮫、エイを蒸気に変えていく。



「すげぇ、ほぼ港全域の冒険者にシールド張るとか広範囲どころじゃねぇ……あの二刀流の女性と光る円盤の男性……あ……」


 俺は隣のロゼリィを見て言葉を止めた。



「ど、どうしたんです? なにが起きているんですか!?」


「大丈夫。すごい人がいるみたいだ、この街には」


 ロゼリィが首をかしげる。



 余計な心配をかけないように、ロゼリィには言わないほうがいいのだろうか。




 君の御両親はものすごい冒険者みたいだよ、と。






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