六百九十話 お風呂上りロゼリィの誘惑とハイラの恋の必勝法様
「ふぅ、やっぱりこの宿のお風呂は最高だぜ」
「ベッス」
夕方、ご飯の前にお風呂に入ってきた。
今日は湯船に赤とかピンクとか薔薇をたくさん浮かべた、この宿ジゼリィ=アゼリィで一番人気の『薔薇の湯』だったぞ。
ハイラがソルートンに来た理由も、街に騎士が多かった本当の理由も分かった。
そしてそれはサーズ姫様だったり水着魔女ラビコだったりが、俺を守ろうと、すっごい考えた上で動いてくれていることも理解した。
この二人が本気で動いているんだ、俺は怯えることも不安に思うこともない。
俺の夢はこの異世界の全てを見ること。
この夢は、引きこもっていては叶わない。
俺は今後も動き、世界を見る。
みんなの厚意に甘える形になるが、いつかその恩を返しますので、今はお許しください。
「つか、俺ってみんなのお世話になりっぱなしだな。情けないご主人でごめんな、ベス」
「ベッスベッス」
みんなもお風呂に入ったらしく、宿の食堂のいつもの席には、俺と愛犬のみ。
ベスの頭を撫でると、愛犬が嬉しそうに俺の手に絡んでくる。
「ふふ、お一人ですか? あ、ごめんなさい、ベスちゃんも一緒ですもんね」
なんだか石鹸の良い香りがして、誰かが隣に座る。
ベスがその人物の足に絡みつき、存在をアピールしだす。
「ロゼリィか。お、紅茶ありがとう」
ロゼリィが俺の隣に静かに座り、持ってきてくれた紅茶セットをテーブルに置く。
まぁ大体歩きかたとか音で分かるんだけどね。
あと、ベスが俺以外で積極的に絡みにいくのは、宿の娘ロゼリィのみ。
「いえいえ。皆さんまだお風呂なので、二人っきりになれちゃいました」
ううーん、ロゼリィの湯上り美人っぷりがすごい。
「ハイラさん、お風呂でも元気でびっくりしました。あとアプティのお友達のお二人、すごくお綺麗ですよね。あなたのことを『ご主人様』とか呼んでいますけど……どういったご関係です?」
ぶっふ。
そういやあの二人の説明って、詳しくしていないんだっけ。
アプティのお友達、的な紹介のみだったか。
というか、それ以上言えないし……
「ああ、なんかアプティを尊敬している年下の友人らしくてさ。そのアプティが俺をマスターと呼んでいるから、アプティに失礼がないように、ご主人様とかになったらしいよ」
適当だが、まぁまぁ納得出来るのでは。
「そうなんですか……すごくお美しくて、とても魅力的な身体をされていますよね」
アーデルニとドロシー、服の上からでもすごいのだが、そうか、ロゼリィはさっきお風呂で二人の裸を見たのか。
待てよ、そういえばさっきまで、ロゼリィに水着魔女ラビコ、猫耳フードのクロにバニー娘アプティにアーデルニとドロシーと騎士ハイラが全員お風呂に入っていたんだよな。
ほうほう、なんという豪華共演。
みんなスタイル良いからなぁ……何かは言えないが、もう想像だけで今夜は頑張れそうだぞ。
「……何か想像しています。誰のを考えました? アプティ……ですか? 最近、あなたはアプティと仲が良いように見えますし……」
俺が映像ではお見せ出来ないような、すんごい肌色空間を妄想していたら、宿の娘ロゼリィが不安そうな顔で覗き込んできた。
「え……全員……あ、いや、ははは……」
う、最近のロゼリィはラビコ並みに鋭い瞬間があるな……俺がエロん妄想してたのバレてたのか。
つか俺って顔に出やすいとかみんな言っているから……それだろうけど。
「私はどうですか……? 一言下されば、お応えできる準備はしてあります。こういうことは早いほうがいいと聞きますし、最初のハードルさえ超えてしまえば、二回目以降は気軽に……ひゃん!」
「あのさ~、ここが夕食の時間で混み合う食堂だってご存じ~? すっごい注目されてるよ~。他に女がいないと分かったら、発情娘はどこでも色気たっぷりで誘うから困ったもんだね~。場所と時間ぐらい選ばないと~、あっはは~」
お風呂上りでとんでもなく色っぽいロゼリィがぐいぐい迫ってきて焦っていたら、背後から現れた人物がロゼリィの脇を軽く突く。
水着魔女ラビコさん、湯上り水着一丁のあなたも食堂の男たちの熱い視線がすごいって気付いてます?
「別にいいンじゃね? 誰か一人でもキングとヤりゃあ、それをネタに強請ってヤりゃあいいだけだしよ。まぁ最初は誰だ……はモメるかぁ、にゃはは!」
猫耳フードのクロさんは何を言っているんですか。
あとクロさんは服を着て下さい。
あ、といっても、今紳士諸君が想像した真っ裸、ではなく、クロは下着一丁にブカブカのシャツだけなので……正直裸よりエロいな……うん。
「……マスター、私と、仲が良い?」
「お誘いに乗ってこないときの対処法……この雑誌はダメですね、載っていないです。新しいのを買わないと」
「ええー、面倒だから、ドーンって襲っちゃえばいいじゃん。あ、でもご主人様って強いんだっけ、逃げられちゃうかなー。うーん、ご主人様と戦ってみたいし、なんだかワクワクしてきたから、一回試してみようよ!」
バニー娘アプティに、メイドバニーであるアーデルニとドロシーもお風呂上りか。
「ふふん、雑誌なんかに頼っているようでは、先生は落とせませんよ。まずはペルセフォス聖光樹に圧倒的パワーを貰い、毎日のお祈り、そしてお供え。あとは先生の出生情報から全てを調べ上げ……って先生の情報ってどこにも無かったんですよね……。ペルセフォスのお城の極秘資料にも記載が無いですし……先生って他国のご出身なんです?」
一番最後に現れた騎士ハイラが、見下し目線でご登場。
おっとハイラさん、お城の極秘資料って……日本でいう戸籍情報とかそういうの?
異世界だからルールは知らないけど、アカンでしょ、勝手に見たら。
つか俺の情報は日本にはあるけど、異世界であるこっちには無いんすよ。
「お祈り、お供え……新しい……。ご主人様、ペルセフォス聖光樹というのは、王都にある大きな木、ですか? お祈りとお供えというシステムも詳しくお聞きしたいのですが」
「ああ、あのでっかい木ー? なんか樹齢数千年とかあるやつだー」
ちょ、ハイラの情報にアーデルニとドロシーが食いついたじゃないか……。
大体、何? お祈りにお供えって。
ハイラは彼女たちが蒸気モンスターであるということを知らないと思うけど、闇の種族であるルリエラさんに襲われたときも、舌が疲れた、とか言っていたり、今回もアーデルニとドロシーの興味を引くワードを言ったり、あなたマジで大物ですよ……。
「異世界転生したら愛犬ベスのほうが強かったんだが」
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影木とふ




