六百八十九話 俺は夢を叶えるために動くけど子供の名前が決まっているらしい様
「うう、ありがとうみんな……」
「ああ、泣いちゃったじゃん社長~。ほらおいで~、社長はまだ子供なんだからさ~、周りに甘えたって、ときには泣いたっていいんだって。私たちが何のために指輪をつけていると思っているのさ~」
最近ソルートンに増えた警備の騎士さんも、アプティと一緒に来てくれたアーデルニにドロシーも、そしてラビコにロゼリィにクロにベスに、みんな俺を守るために動いてくれたんだと分かり、俺は思わず泣いてしまった。
水着魔女ラビコが、優しく俺の頭を撫でてくれる。
「ふふ、そうですよ。あなたはずっと私たちの為に頑張ってくれていたのですから、泣いたっていいんですよ。さ、ラビコではなく、私が受け止めますので、こちらに……」
「あーあ、キング泣いちゃったよ。珍しいな、でもこれチャンスだよな。弱った男を介抱する健気な女……これアレじゃね、このあと抱き合う流れじゃねぇ? ひゃっはー、おらキングこっちこい! どうせなら裸で抱き合ったほうがいいだろ? にゃっはは!」
宿の娘ロゼリィと、猫耳フードのクロが同時に俺を引っ張る。
ん? いや、俺今マジ泣きなので……エロいのは考えていないですって。
あ……待てよ?
クロが言ったように、弱ったフリして女性に介抱してもらう延長でエロんなことに持ち込むとか、エロゲーで見た……!
そう、わざと弱みを見せて女性を……!
「……マスター……泣かないで……」
おっふ……! バニー娘アプティさんが俺のケツを掬いあげるようにつかんで……って、何でアプティって事あるごとに俺のケツつかんでくるの……!
「ご主人様、こちらへどうぞ。雑誌によると、膝枕はポイント激熱、とあります」
「ご主人様泣いちゃったー、ど、どうしよう、膝枕、そっか、それをやればいいんだ!」
メイドバニーであるアーデルニとドロシーが俺のベッドに座り、自分たちの膝をポンポン叩いてくる。
「じゃあ私は先生の服を脱がしてお腹を舐める係ですね。さあどうぞ」
騎士ハイラが舌を出しているが……あれ、マジくすぐったいからやめて欲しいんですけど。
でもこれ、誘われている……もしやいけるのか……?
でもゲームだと一人の女性で、今はえーと、七人か……ちと多いな。
攻略キャラが全部で七人いるのは分かるが、七人同時はどうすれば……つか、未成年の俺がエロいゲームを出来るわけがないな。
さっきの記憶は捏造で間違いだった、すまん。
いや待てよ、確か別ゲーでは数人同時のハーレムルートもあったな。
あれ、すっごい大変だった。ステータス調整やらフラグ管理がとんでもなく面倒だった。
……というのを誰かに聞いた。
俺は未プレイ。
あーダメだ、無理矢理エロい考えをしてみたが、涙が止まらん。
これ以上は愛犬ベスを抱いて落ち着こう。
「ベッス、ベッス」
愛犬を抱くと、必死に俺の涙を舐めとろうとしてくれる。
ああ、この感じ、懐かしい。
子供のころ、怖かったり、怒られたりして泣いちゃったら、ベスに甘えていたなぁ。
「あ~……ベスに良いところ取られた~。ちぇ~、私たちもまだまだかな~」
「ベスちゃんはずっと一緒にいたご家族ですし……私たちはこれから、ですね」
「私はもう先生の家族のつもりですー。悔しいですー」
ラビコとロゼリィとハイラが何か言っているが、ちょっと待ってね、ベス吸って落ち着くから。
「ふぅ、復活。とりあえず俺は幸せ者だということが分かった。そしてこれだけのメンバーが考えて動いているなら、何の心配もない」
ベッス吸いが済み、満足した俺はスックと立ち上がり宣言をする。
「誰だが分からない、得体のしれない物に怯えてなんていられるか。俺の夢は、この世界の全てを見ることなんだ。動かなければ叶わない夢だから、俺は今後も動く。来る者拒まず、もしこんな俺に着いて来てくれるというのなら、共に行こう。そしてもし、俺の夢を妨げるようなものが現れたのなら、俺は全力で排除する。そしてその手が俺の仲間に及ぶのならば、その時俺は一切の容赦をしない。使えるもの、使える手、使える人脈、使える力全てを使って友を守る。俺は一人ではなく、みんなと夢を叶えたいんだ」
愛犬と二人で、ってのが異世界に来たときに最初に思った夢だが、今の俺は強欲になったんだ。
共に来てくれる仲間がいるのならば、一緒に夢を叶えたい。
元いた世界では見れなかった景色を、この目に焼き付けたい。
「うんうん、社長はそれでいいのさ~。迷わず、真っすぐ進めばいい。でも~、社長は地理が苦手っぽいから~、世界の知識を持ったこのラビコさんが必要だよね~? あっはは~」
俺は異世界に来たばかりだしな、悪いが地理関係はさっぱりだ。そのへんはラビコを頼らせてもらう。
「私も行きます! この宿をもっと大きくするには、世界の情報は必要ですし! そしてあなたに着いていけば、あなたと宿を継ぐという私の夢も同時に叶いますし」
宿の娘ロゼリィが鼻息荒く手を挙げるが、ロゼリィの夢?
「アタシも行くぜェ! つうか今更だろ、キング。この指輪を貰った時点で覚悟は決まってるっての。そうだな、子供と一緒に世界の景色を見るってのもいいよなぁ。リンデルとサクラ、幸せそうだったしなぁ……実はアタシもああいうのに憧れがあってよ、早くああなりてェンだ」
猫耳フードのクロもヤンキー座りで手を挙げるが、子供と一緒?
そういや星神の国で出会った、ルナリアの勇者さんであるリンデルさんとサクラさん、子供と一緒で幸せそうだったなぁ。
「私も近日中には騎士を辞めますので、先生と一緒に行きますよ! それに皆さんには申し訳ないですけど、私たちの子供の名前、もう決まっているんですよね、先生!」
騎士ハイラも……ってあなたは王都を守る騎士の仕事があるでしょう。
しばらくは騎士を辞めるのは無理だと思いますよ……って子供の名前って、こないだ言っていた謎の単語「フォレッコ」ってやつ?
前も思ったけど、それ、子供の名前として大丈夫なやつなの?
「……社長~? 子供の名前って、何?」
「あの、子供っていうのは……?」
ちょ、水着魔女ラビコに宿の娘ロゼリィさん、今のはハイラの妄言、ほぼ独り言に近いので、俺にはなんら関係のないことですって……!
「……マスターを島に、連れて行く……そうすれば、種族繁栄……」
「なるほど、それは名案ですアプティ様。今夜にしますか?」
「ご主人様のお部屋、毎日掃除して、綺麗にしてるんだよー? 一緒に帰りたいー」
バニー娘アプティにアーデルニにドロシーが集まってボソボソ相談しているが、今「種族繁栄」って聞こえたけど……それ、俺が無事で済むやつ?
つかアプティさん、こういうときだけ二人と普通に話すのやめて。
「異世界転生したら愛犬ベスのほうが強かったんだが」
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影木とふ




