六百八十一話 暗闇の襲撃者3 裸土下座に囲まれたけどハイラは大物様
「初めまして、グレイフィルと申します。この度は我らがリーダーがとんでもないことをしでかしてしまい、本当に申し訳ございません。何度もお止めしたのですが、全く聞いてもらえず、私に出来ることと言えば、こうして少しでも誠意をお見せしてお許し願うことだけです」
冒険者センタークエスト「ブルードロップ探索」で夜の山に来てみたが、なぜか闇の種族のリーダーであるというルリエラさんに襲われた。
裸で。
いや、裸になったのは、うちの愛犬ベスの警告咆哮で発生した衝撃波で服が吹き飛んだから、であって、俺が脱がせたわけじゃあないぞ。
それにもめげず、ルリエラさんが裸のまま、俺の腹を舐めてきたのだ。
そしてそれを見たバニー娘アプティが激怒、目を赤く光らせ口から蒸気を出す本気モードで俺を襲ってきたルリエラさんをマジ蹴り。
ハイラの前で正体表すのはマズイ、と俺はハイラの視線を奪うために俺の腹を舐めるよう指示。
そうしたら、ハイラが大興奮で俺の腹を舐めてきた、というわけだ。
……ああ、簡潔に表現してみたが、もちろん言っている俺も意味が分からない。
とりあえず、街灯もない真っ暗闇の夜の山で俺の腹が女性二人に舐められて、無限にくすぐったかった、ということだろうか。
「あの、頭を上げて下さい。許すも何も、こちらには特に被害はなかったですから……」
最初に青く光る木の実、ブルードロップを持って走っていた男性、グレイフィルさんと言うらしいが、彼が俺の前で土下座スタイルで謝罪をしてきた。
裸で。
……なぜ服を脱いで謝ってきたの、このイケメン。
闇の種族、上位蒸気モンスターだろうが、攻撃の意志は無さそう。
あ、俺の腹を舐められたという被害はあったけど、それはルリエラさんという結構なお美しい女性の裸を見れたので水に流そうじゃあないか。
ああ、俺は心優しき変態だからな。
「ふん、なぜこちらが謝らなければならないのか。私はやられたことをやり返しただけだ。というか失敗したし。私は納得していない」
星神の国で出会った上位蒸気モンスター、闇の種族のリーダーである女性、ルリエラさんが超不満そうにグレイフィルさんの後ろに立ち、俺を睨んでくる。
裸で。
いや、服を吹っ飛ばしたのは申し訳ないけど、襲ってきたのはそっちだし、つか少しは体を隠して下さいよ!
「お言葉ですがルリエラ様、こちらにいらっしゃる方々はご存じですか? 彼女たちと、そのご主人様と呼ばれる方に手を出しておいて、あのお方が黙っているとお思いですか? ではここで謝らず、この後こじれて、彼と交渉や戦うことになったとしても、全てルリエラ様お一人にお任せしますからね。私は嫌ですよ、あのお方は苦手なので」
グレイフィルさんが俺に頭を下げたまま、後ろでプンスと怒っているルリエラさんに苦言を呈す。
こちらにいる方々というのは、バニー娘アプティとメイド二人のことか。
つまり、水の種族に手を出しておいてあの人が黙っていると思っていますか、そしてそれは……銀の妖狐のことか。
「うっ……それはその……あいつと喋ると背中がゾワゾワしてくるから嫌だぞ……! くそぉぉ! 謝りたくない謝りたくない絶対に謝りたくないけどアイツと交渉なんてしたくないし戦うのなんてもっと嫌だ! アイツ妙に頭キレるし強いしニヤニヤキモいし……それが嫌で私は大穴に引きこもったんだ! くそぉぉぉ、こいつ、あのクッソ面倒な奴と繋がりあったのかよぉぉ……!」
ルリエラさんが頭を抱え悶え、叫ぶ。
ああ、闇の種族の方々も銀の妖狐が苦手なのね……分かる、それすごく分かる。
俺もアイツと喋ると背中がゾワゾワするし。
「ルリエラ様、それは最初の接触の時に理解していたでしょう。それでもやると言ったのはルリエラ様なんですからね」
グレイフィルさんがチラとバニー娘アプティを見る。
星神の国のとき、アプティもいたしな。
つかこの男性、人間である俺に普通に頭下げて来たりして、偏見の無い人なのか?
頭良さそうだし、この場を誤魔化す為にそういう振る舞いをしているだけかもしれないが、話が通じる相手はとてもありがたい。
「申し訳ございませんご主人様……こういう事態を想定し派遣されたというのに、この失態……連携も取れず、情けない……どうかご容赦を」
「うわーん、脱ぐから許してご主人様ー!」
そして闇の種族の方々の横にメイドバニーであるアーデルニとドロシーもいるのだが、こちらも土下座……。
いやいや、なんで蒸気モンスターの方々が全員土下座なんですか。なんなのこの光景。
まぁ、アプティも連携無視して一人で突っ込んできたしなぁ……連携は……今後のんびり学びましょう。
そしてドロシーさんがメイド服を脱ぎ始め……ちょ! やめなさい!
闇の種族の方々が裸土下座だからって、影響受けないでください!
う、結構大き……いやいやいや、俺は見ていないですからね!
「……マスターの……舐めた……」
俺の後ろにはバニー娘アプティが立っているのだが、ルリエラさんとハイラを無表情ながらもムスっとした顔で見ている。
「先生、もう帰りましょうよー。舌が疲れちゃいました」
そして俺の左腕に絡んできているハイラは、満足気な疲労顔で帰ろう連呼。
……確かにアプティの出した蒸気を誤魔化すために俺の腹を舐めろ、とか言ったのは俺だけど、加減無しで長時間やったのはハイラの自己判断だろ。
やめてって言っても止めないし……。
なんというか……正体をバラしていないから分からないんだろうけど、ハイラさん、あなた、上位蒸気モンスターで闇の種族のリーダーとその部下、そして水の種族のアプティにアーデルニにドロシーっていう二種族の上位蒸気モンスターに囲まれて「舌が疲れた」とか言って平然としていられるのは、大物ですよ……。
俺なんてどう対処したものかと、結構怖かったんだぞ。
無敵の愛犬ベスがいたのと、今回はあちらから謝ってくれたから何とか被害なしで収まったけど、本来だったら結構なバトルに発展しかねない状況だったと思う。
あー疲れた……マジで。
今何時……真っ暗で時間が分からない……でもすげぇお腹減った……。
冒険者センターの報告とか査定とかは明日にして、もう帰ろう、宿ジゼリィ=アゼリィに帰って、いい加減夕飯にしよう……。
今から馬車で帰ると、時間的には夜食になるかもしれないけど。
「異世界転生したら愛犬ベスのほうが強かったんだが」
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影木とふ




