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六十七話 ソルートン港祭りと不気味な山様


「おおー! お祭りだ」



 その日はソルートンの港で海に感謝をするお祭りが開かれていた。


 漁港全てを使い魚のキャラクターを描いたグッズで飾り立てられ、魚料理が振る舞われ、仕入れた魚を普段より安く買うことが出来るソルートンの人達が毎年楽しみにしているお祭りなんだそう。




「みんなこの日を楽しみにしてるからね~気合い入れないと圧倒されちゃぞ~?」


 ラビコ、ロゼリィ、ベスとお祭りに来てみた。


 なんにせよ人が多い、ベスは俺が抱っこして移動。


「ふふ、お祭りはいいですよね。何か心がワクワクしてきます!」


 よし、まずは食い物だ。露店で食えるだけ食うぞ! 




 魚のフライ、焼き魚、何かの貝の炭火焼き、鍋物、見渡す限りの魚ご飯。迷うなこりゃ。


 お、向こうにお刺身一山食べ放題やってるぞ。



「お刺身行こう。お刺身、俺好きなんだ」


 俺は人だかりの出来ている、お刺身食べ放題コーナーを指す。


「いいですね、普段は高くてなかなか食べることの出来ない高級なのも紛れているらしいですよ」


 ロゼリィが宣伝看板を見たらしく、心躍る情報を言う。


 まじか、早く行こうすぐ行こう。


「あはは~社長~子供みたいですよ~はしゃいじゃって~」


 すまんな、この興奮は抑えが効かないんだ。俺は食う。




 受付で料金を支払い、整理券を受け取って並んで待つ。


 一グループ単位で買えて、料金ごとに『山』を選べる。


 十Gで小袋一杯分、三十Gで中袋、五十Gで大袋と食べたい量を自分で選ぶ。どれも袋一杯に詰め込んでくれ、相当お得だぞこれ。


「バケツでお願いします!」


 前の男十人グループが『袋』の上の単位『バケツ一杯』を高らかに宣言。


 すげぇ、バケツ一杯分詰め込んでくれるのか。あれで百G、一万円はすごいな。十人いるから一人十Gでバケツ一杯食えるとか、夢の食い物だぞ。


「おおおおおっ!」


 男達がバケツ一杯分の色々なお刺身が詰まった山がテーブルに運ばれた途端、奇声を上げ我先にと割り箸を割り、山に食らいついた。


「す、すげぇ」


 男十人が山と積まれたお刺身をものすごい速度で崩していく。これはバケツ一杯でも持って五分だな。あいつ等、命張りすぎだろ。




「えーと中袋で」


 俺たちはベス含め四人なので中袋で。これでも相当詰まっている。


「き、来ました! あ、赤いのが多く見えます! あれトロじゃないですか!?」


 ロゼリィがトロを数枚発見した模様。


「あはは~あれは譲れないねぇ~」


「これは戦争だな、全員恨みっこ無しだからな。俺は遠慮はせんぞ」


 皆で目を合わせ、戦闘開始。割り箸で剣のように相手を牽制し、獲物に食らいつく。


「おりゃあああ! 赤いのゲットー! あ、タコ……」


 俺は勢いよく積まれた山の赤い物を掴んだが、タコだった。いや、タコも新鮮で吸盤うめぇけど。


「ええええい! あ、来ました! とろけるトロゲットです!」


 しまった、ロゼリィにトロ一枚持っていかれた……残るトロは何枚だ!?


「はい~トロ、大海老、ウニゲット~あっははは~」


 おい、マジかラビコ。どうやったら箸一突きでそんなに取れるんだよ! ズルしてねーよな!?


「ベスはお腹壊さない程度の少量な」


 ベスに少し分けていたら、二本の箸が残像を残しながら飛び交い、高級そうなものはあらかた消えてた。




「く、敵は手強かった……」


 肩を落とし、次の露店へ。


「戦いなのです! 譲りません!」


 ロゼリィが鼻息荒く、フンフンしている。こりゃー本気ださないとだめだな。



「海鮮汁配ってるよ~社長行こうよ~」


 ラビコが何かみつけたようだ。よし、無料か。これは並ばねば。


 相当の人数の最後尾に並ぶ。もらえる海鮮汁はお茶碗一杯分、なんと豪勢なのか。




「なんて出汁がすごいんだ。これ何入っているか分からないけど、すげぇうめぇな」


 とにかく山盛り。判別出来るものだけでも鮭、タラ、いくらが入っている。


「あ、カニです! カニが底に沈んでいました!」


 まじか。俺は……入っていない。


「カニ味噌おいしい~これ並んでよかったね~」


 ち、鮭がおいしいから満足だけどね!




 漁船直売り所に移動し、イケメンボイス兄さんに頼まれたブツを探す。


「しかしマグロ一匹買うってマジかかなり高いぞ?」


「今日の夜はマグロ三昧メニューを食堂でだすんだそうです。頑張って選びましょう」


 よし、俺もいい物食いたいし、いいマグロ選ぶぞ。



 取れた魚が大量に並んでいる。一体どれにすればいいのやら。


「おお! 兄ちゃん! 元気かーがっはは!」


 あれ、海賊おっさんじゃん。


「マグロか? 兄ちゃんがいるってことはジゼリィ酒場で出すんだろ? ホラこれなんかどうだ」


 えーと、値段が二万G。に、二万Gってことは二百万円か……やっぱ一本は桁が違うなぁ


「あはは~もちろん昔のよしみ、ラビコさん相手だと値引くよねぇ~?」


 ラビコがぐいっと前に出て来た。


「おっと、ラビコか。参ったな、まあいいか! ホラ一万五千Gで持ってけ! 台車も付けるぞ!」


 海賊おっさんがかなり値引きをしてくれたので、安く仕入れることが出来た。




 とりあえず食いたいもの食ったし、マグロを宿に届けるか。



 ベスが台車に乗っかり、三人で重い台車を引く。


「お、重いです! でもおいしいマグロ!」


「そうだ、頑張って運んでうまいマグロ食うぞ!」





 台車を引っ張りながら、ふと沖のほうが気になり目を向ける。



「なぁ、ラビコ。海の向こうに大きな山って普段見えたっけ?」



 海の遥か沖、なにかぼんやり山が見える。なんていうか俺の世界にあった富士山みたいな形の大きな山。あんなのあったっけ。


「山? いや~この海の先に見える範囲には陸地はないよ~私には見えないけど~?」


「私にも見えないですけど……」


 おかしいな、ほらすっごい遠いから小さいけど山が見えるだろ。


「なんか綺麗な台形みたいな形の山、かなりの高さあるぞ、あれ」


「山……? それって靄は見えるのかい~?」


 えーと、なんか霞んでいるようには見える。


「ああ、そう見えるな」


「あっはは……それはかなりマズイね~ごめん魚は任せるよ~!」


 ラビコが血相を変えてどこかへ走って行った。




「ど、どうしたのでしょう?」


「わからん。でもラビコのあの慌てようはちと怖いな」


 靄、か。



 かなり嫌な予感。














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