六百六十七話 NEW冒険者センター公式グッズとソルートンの異変? 様
「お土産をいただいてしまった……」
「ベッス」
ソルートン冒険者センター支部長であるマイスさん、リズベルさんに見送ってもらい、冒険者センターを離れる。
別れ際、リズベルさんが愛犬ベスの可愛さにやられたようで、何度も頭を撫でてくれたな。
何か大きめの包みを渡されたが、中身はなんだろうか。
お金か……? いやいや、そんな下世話な。
多分冒険者センターの名前入りタオルとか?
「しかし……ルナリアの勇者さんのご家族が冒険者センターにいたとは驚いたよ」
「あ~、それもあんまり言わないでね~。名前でバレるかもだけど、不必要に広めるのもね~。彼等にリンデルの情報伝えたら、どうしても社長にお礼が言いたいっていうから連れて行っただけ~」
そうか……まぁ五年間音信不通、生きているかも分からないご家族の吉報、それは嬉しかっただろうしなぁ。
「それで~、何もらったの? お金? お金でしょ~。彼等からしたら、大金にも値する情報だったんだし~、あっはは~」
水着魔女ラビコが右手に持っている紙の包みを楽しそうに小突いてくるが、だからこういうお礼を表すときにお金を直接とか渡さないんだっての。
お金の多さで人の気持ちを計ることはしないんだよ。
でもお金だったら嬉しいな……いやいや、俺は何を言っているんだ。
「バカ言うな、これは彼等の気持ちなんだぞ。数字では表さないだろ」
「え~? じゃあ何~? あ、社長が欲しがっているエロ本とか~? あっはは~」
公園のベンチに座り、頂いた袋の開封の儀を執り行う。
ラビコが俺の右横に接近して座り、早く開けようと促してくる。
エロ本て……冒険者センターの支部長さんがそんな物をくれるわけがないだろう。
俺、未成年だし。
いや、成人でもお礼には選ばないだろ。
「あのな……まぁいい、マイスさん、リズベルさんありがとうございます。開けさせていただきます……お、おおおおおおおお! これは……!」
「何々~? ……え~……何これ~……」
手を合わせ、感謝を示しつつ開封。
軽いけど、何かチャラチャラ金属音。もしかしてマジでお金か? とも思ったが、まず目に飛び込んできたのは、タオル生地。
あれ、マジで冒険者センターのロゴ入りタオルか……と思ったが、よく見たらタオルには何かがフルカラーでプリントされている。
ラビコは中身を見てテンションダウン、俺はテンションアゲアゲ。
「キタキタキタキタキタキター! すげぇ、冒険者センターガイドブックに使ったラビコの写真がフルカラープリントされたバスタオル……! あとこちらも小さくラビコがプリントされたキーホルダー……! 分かってる、分かっているじゃあないか支部長さん!」
袋の下のほうには何やらキーホルダーも数個入っていて、見るとそちらもラビコがプリントされたもの。
「うわぁ~……許可出したとはいえ、マジで何にでも使ってくるなぁ~……ったく……あんの行き遅れ勇者不足女……今度直接文句言いに行ってやる~」
袋の中身を見た水着魔女ラビコが呆れ顔。
行き遅れ勇者不足女、と称したのは、冒険者の国にいるクラリオさんのことだろう。つか、いくら仲良しとはいえその呼称、失礼すぎだろ。
中に紙が一枚入っていて、説明が書いてある。
どうやら今度冒険者センターで販売予定の商品らしい。
事前にお確かめ下さい、ってとこだろうか。
ラビコのエロいプリント写真入り商品、これは売れるぞ。つか俺が大量に買う。
以前、冒険者センター公式ガイドブック発売記念の激レアグッズ、ラビコがプリントされた大きな枕カバーは、世紀末覇者軍団が激戦となった抽選を勝ち抜き手に入れていた。
多分あれが好評だったからそれの簡易版、プリントバスタオルを作ったのだろう。
キーホルダーもとても出来が良い。大事にしまっておこう。
「いやぁ、嬉しいなぁ、さすがソルートン冒険者センター支部長さん、俺のことをよく分かっている! さっそく今夜からこのタオル抱いて寝よう」
「うっわ……本人目の前にしてキモ発言やめろっての~。つか~、そんなに抱きたいのなら、タオルじゃなくて本人である私を抱けばいいだろ~? なんでいつもいつも遠くの物にばかり手が早いのか……」
え? 小さい声で言われてもテンションマックスの俺には聞こえないぞ。
見てくれこのラビコのエロい表情とスタイル。
これを見ながら毎日寝れるとか、最の高である。
「お、何か封筒も……って、ペルセフォス王都までの魔晶列車の往復券が入ってる。これ、お高いだろうに」
「あれれ~、マイスってばマジで奮発してんじゃ~ん」
六枚も入っているな。
ラビコも少し驚いているが、これ、結構な金額だぞ。
いつも俺たちが使うロイヤル部屋ではなく、一個下の三人まで利用出来る個室のチケット。
これは……そうだな、ありがたいが初心者パーティーのみんなにあげようか。
剣士のクロスに魔法使いのエリミナル、盗賊のルスレイ、彼等ともクエストに行かないとな。
今度チケットを渡しておこう。
その後、ベスの散歩の続きをしつつ、ラビコと新しく出来たお店に立ち寄ったりしてみた。
なにやら終始ラビコがご機嫌だったが、好みのお店でもあったのかね。
「あ~、楽しかった~。社長と二人きりでデートなんてひっさしぶり~。それで~、この後は~? 社長が期待していたホテルに行っちゃう~? いいよ~、今のラビコさんご機嫌だし~、リンデルとサクラのお礼もしたいから、誘われたら付いて行っちゃうかもよ~? あっはは~」
宿ジゼリィ=アゼリィへの帰り道、ちょっとベンチに座り休憩していたら、水着魔女ラビコが笑顔で俺に抱きついてきた。
デート? 一応競合店調査と、正社員五人娘へのお土産を買いたかったからだけど。
え、ホ、ホ、ホテル……ですか……ふぅん……それはあれですか、ちょっと大人の階段が登れちゃったりするやつですか……ふぅん。
って危ねぇ、これ真に受けて誘ったら、絶対に爆笑と共に一生イジられるやつだろ。
「俺は誇り高き童貞……怪しい誘いには乗らないぞ。それよりラビコ、街を歩いていて気付いたんだけど、最近ソルートンの警備をしてくれる騎士さんの数、多くないか?」
スーハースーハー……、俺は何度も深呼吸をし、ベスを撫で心を落ち着け、怪しく微笑む魔女の誘いにギリギリ耐え、道中気付いたことを聞く。
「は~? 何さ誇り高き童貞って~。ただの自己保身奥手野郎じゃん。ってああ、社長も気付いた~?」
ソルートンは以前、魔晶列車の駅が開通、その駅直結の大型商業施設なんかも開店し、一気に人口が増えた。
サーズ姫様が色々配慮をして下さり、駅や大型商業施設の混雑対策で王都から騎士さんを多く派遣してくれている。
宿ジゼリィ=アゼリィの名前も世界で広まり、観光客も増え、ソルートンの街中はとんでもなく人が多い。
トラブル対策の騎士派遣なのだろうが、それにしては数が多い。
魔晶列車が開通したときより、体感倍ぐらい……いやもっとか。
街中のどこを歩いても、騎士さんとすれ違うレベル。
港のほう、連絡船の建物の出入口なんか、びっくりするぐらいの数、騎士さんがいるぞ。
あと観光客なのか冒険者なのか分からないが、街中を歩くとラビコを目で追う人がとても増えた印象。
水着魔女ラビコって、それこそルナリアの勇者パーティーに参加していたマジで世界に名を馳せる有名な大魔法使いさんだし、彼女に憧れを持った冒険者が多いのだろう。
観光客の視線も、たまたま観光でソルートンに来たら、有名な冒険者である水着魔女ラビコがいて、興味本位で見ている人も多いのだろう。
でもたまにそうではない、なんと表現していいのか迷うが……鋭い視線というのか、何か計るようなものが紛れている。
そしてその視線は、たまに俺にも向いてくる。
さて、何なのか。
単純にラビコが水着姿だから目立つしエロいってのも……あるのかもしれないけど。
俺の隣にいる水着魔女ラビコって、性格はアレだが、マジでとんでもなくお美人さんなんだよね。
スタイルも良いし、しかも普段から水着装備、そりゃあ男の視線は魅力的なラビコに集まるわけで。
さてその集まった視線の横にいる冴えない男、とんでも美人さんのラビコには不釣り合いのお前は誰やねん、ってことか?
それなら、分かる。
自覚も、ある。
「まぁ基本、急に増えたソルートンの人口対策なんだろうけど~、本命はそれ以外……。あの変態姫、社長のこととなると、マジで行動してくるからね~」
水着魔女ラビコがまた酷い呼称をしているが、変態姫ってのはこの国の名前を背負いし王族、サーズ姫様のこと。
え、これって俺絡みでのことなの?
全く身に覚えが無いが……さて、俺の知らないところで一体何が起きているのだろうか。
「異世界転生したら愛犬ベスのほうが強かったんだが」
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影木とふ




