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六百六十六話 ルナリアの勇者の親族様





 愛犬ベスの散歩をしていたら連れて行かれた、ソルートン冒険者センター。


 冒険者センターの二階って、基本関係者しか入れないはずだが、水着魔女ラビコがズカズカと侵入していく。


 怒られるんじゃ……と怯えながら待っていたら現れた、冒険者センターソルートン支部長様。

 

 え……やっば、ソルートン冒険者センターで一番偉い人じゃん、この人……!


 やっぱ俺、冒険者をクビになるんじゃ……!




「冒険者センターソルートン支部長のマイス=ライトです。お話はラビコ様から聞かせて頂きました」


 がっしりとした体格の五十代ぐらいの男性が名乗り、俺に声をかけてくる。


 ラビコからお話……?


 どういうことだ? 確かに俺、冒険者のくせに『街の人』なんて職業だし、表立って言える冒険者らしい実績もさほど上げていない……ああああ、やっぱ、クビか?


 銀の妖狐とか、火の国の千年幻とかは水着魔女ラビコの実績になっているし……。



「この度は貴重な情報をお持ち下さり、本当にありがとうござ……」


「うわぁあああああ、ありがとうございますー! 本当にありがとうございますー! 兄は無事だったんですね……うわぁぁあああん」


 ソルートン支部長の男性が丁寧に頭を下げてくるが、急にドアがドカンと開き、若い女性が泣きながら俺に駆け寄ってくる。


「こらリズベル、職員が冒険者センター内で走るなとあれほど……」


「うわあぁんごめんなさいお父さん……でも嬉しくて無理ですー」


 冒険者センターの制服を着た若い女性、ってよく見たらこの人、俺が初めて冒険者センターを訪れたときに担当してくれた女性だ。


 リズベルさんって言うのか、そしてこの男性がお父さん……? 


 二人は親子だったのか。


 兄が無事……? えーと、お兄さんもいると。


 それで、何で俺がお礼を言われているんだ?



 よく分からんが、とりあえず落ち着いてもらい、出してもらった紅茶をいただく。


「お~? さすがにお高い紅茶出してきてんじゃ~ん。前まで飲めたもんじゃないレベルだったのに~、もしかして宿ジゼリィ=アゼリィで買った~?」


 水着魔女ラビコが遠慮なくグビグビ飲み干し、失礼なことを言いながらおかわりを要求。


 おいこらラビコ、出してもらったお茶を飲み干していいのは帰る直前だろうが。


「はい、ラビコ様がいらっしゃる宿ジゼリィ=アゼリィで紅茶の茶葉を買わせていただきました。紅茶もですが、あちらの宿で出されているお食事、どれも美味しくて参りました。何度か通わせて頂いていますが、全メニュー制覇まではまだまだ時間がかかりそうです」


 冒険者センターソルートン支部長のマイスさんが追加の紅茶を注ぎ、ジゼリィ=アゼリィのマークが入った紙袋を見せてくる。


 あれれ、マイスさん、宿ジゼリィ=アゼリィの常連さんでしたか……それはありがとうございます。


「私も通ってます! ジゼリィ=アゼリィのご飯、超美味しいです! 売っているローズ=ハイドランジェとジゼリィ=アゼリィのコラボシャンプーも全種類買いましたし、お風呂も使わせてもらっています! 薔薇のお風呂最高です!」


 冒険者センターの受付の女性、リズベルさんが宿ジゼリィ=アゼリィで売っているシャンプーとボディソープの小瓶を出し、笑顔で見せてくる。


 おや、リズベルさんも常連さんでしたか。


 しかもうちのお風呂を普段から使っているとな……!


 リズベルさんがうちで裸に……!


「……一体今の流れのどこに興奮する要素があったの~? そろそろ話進めるよ~? 名前で気付いたかもだけど~、この二人はあの勇者の親族で~、リンデルが生きていたこと伝えておいたから~」


 ラビコが呆れ顔で俺を小突き、俺たちが冒険者センターに来た本題に入る。


 名前? 勇者の親族? リンデル?


 あ、こないだ星神の国で出会ったルナリアの勇者さんの名前がリンデル=ライトさん、だったか。


 確かに冒険者センターソルートン支部長さんはマイス=ライト、と名乗ったが……そうか、ライト、お二人はルナリアの勇者さんのご家族でしたか。


「あんまり広めたくないけど~、ずっと心配していた関係者だし~、言ったほうがいいか~って思って~。社長に許可取らずに言っちゃった~、あっはは~」


 ラビコが笑うが、いやいや、ご家族に情報を伝えるのに、俺の許可なんていらないでしょう。


「リズベル=ライトです、世間ではルナリアの勇者と呼ばれているリンデル=ライトの妹です……。本当に、本当にありがとうございます。兄は生きていたんですね……五年前から情報が途絶えてしまって……本当に心配で……ここまで情報が無いとなると、最悪もう……と諦めかけていたのですが……良かった……兄は生きていたんですね……!」


 受付の女性、リズベルさんが涙ながらに俺の手を握ってくる。

 

 そうか……ルナリアの勇者さんは回復魔法を使う女性を守るために消息を絶ったが、それはご家族にも彼の生存情報が絶たれることになる。


 ずっと生きていることだけを信じていたが、あまりにも情報が無いまま五年間……それは……辛かっただろう。


「ラビコ様にお聞きしました。兄の消息が分かったのも、あなたが尽力してくれたからだとか……ありがとうございます、本当にあなたのおかげです! 出会った時からあなたはどこか普通の冒険者とは違うと思っていましたが、ソルートンの英雄さんは私の英雄さんでもあったんですね」


 ソルートンの英雄?


 あ、そうか、銀の妖狐撃退とかの記録はラビコが冒険者センターに書き換えさせているみたいだけど、彼等がその書き換えた冒険者センターの関係者か。


 ならば俺のことも知っている、と。


 良かった……俺、冒険者をクビにならないんですよね?


「あ、その……お兄さん、ルナリアの勇者さんはサクラさんとご結婚なされていて、可愛いお子さんもいらっしゃって、とても幸せそうでしたよ」


「はい、情報はそこまでね~。申し訳ないけど~、場所とかは言えないかな~」


 俺のセリフに水着魔女ラビコが反応。


 おっと情報管理……回復魔法を使う女性、サクラさんを守ろうとしているルナリアの勇者さんの行動と決意を尊重しなければ。 


「いえ、私たちにとっては充分な情報です。生きていた、それだけでもう私は嬉しいです」


「はい、兄の行動も理解できますし、いつか笑顔で帰って来てくれるんじゃないかと……その日を心待ちにしています」


 マイスさんとリズベルさんもルナリアの勇者さんの情報管理に納得してくれているのか、ありがたい。


「そうか……リンデルは結婚をして、子供がいるのか……。十年前、突然冒険者になってソルートンを出ていきました。世界を巡り蒸気モンスターを倒したという、成した実績は素晴らしいとは思いますが、私たちにとっては大事な息子……どれほど心配したか……。特に妻のアンナは……せめて墓前に報告に来いというのに……あのバカ息子……。でもリンデルは今、幸せそうでしたか……そうですか…………」


 マイスさんが立ち上がり、窓を見て俺たちに顔を見せないように語りだす。


 ……おそらく、涙を見せないように、だろう。


 

 ルナリアの勇者さん、息子であるリンデル=ライトさんが生きていることを信じ、奥様は亡くなられてしまったのか……。


 ……今はまだ彼等の拠点は星神の国のサリディアの大穴でしょうが、少しずつ変えていくと言っていた。


 リンデル=ライトさん、サクラ=ライトさん、娘のカエデちゃん。


 いつか三人が笑顔でこのソルートンに帰って来てくれるはずです。



 おそらく近い未来、必ず──

































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よろしくお願いいたします。


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         影木とふ








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