六百六十三話 ジゼリィ=アゼリィ大宴会と異世界の真理は全裸様 ──17章 完 ──
「それじゃあ世界の宝、大魔法使いラビコさんとその他大勢のソルートン帰還を祝って~、かんぱ~い! あっはは~」
夕方、ソルートンの南側にある宿ジゼリィ=アゼリィにて、大宴会がスタート。
水着魔女ラビコが満面笑顔で乾杯の音頭をとるが、俺はその他大勢なのか……。
まぁこういう、わざと大げさに表現したりするときのラビコは、機嫌が良くて超楽しい気分、って状態。多分。
昼間ラビコが『お酒一杯と料理一品無料』なんて言ったもんだから、お客さんの行列がいつも以上にとんでもないことになっていて、急遽冒険者センターに警備のお仕事を発注して、冒険者さんに列の整備をお願いしている。
つかこのお金、俺が出しているんだよね……。一応水着魔女ラビコも半分出してくれるらしいが。
お前、一夜成金の俺なんかと違って、マジのお金持ちなんだから、半分と言わずに全部出してよ。
「やぁ、ソルートンに帰ってきたんだって? え、星神の国……随分遠くにいっていたんだね……。世界を巡る冒険、夢が膨らむけど、僕らは旅行でいいかな。ソルートンから離れたら、うちのリーダーである君に会えなくなってしまうしね、ははは。」
「わはー、ヨウカンありがとーリーダー! 私お酒飲めないからオレンジジュースー!」
「星神の国かぁ、うちのリーダーはやっぱりすごいね。それで、ソルートンに帰って来たんだから、今度は私たちのリーダーとして何かしようよ、ね、約束」
剣士クロス、魔法使いエリミナル、盗賊ルスレイ、以前知り合った初心者パーティーのみんなも来てくれたのか。
そういや俺ってこっちのリーダーもやっているんだっけ。
彼らはソルートンの商店街の端っこの中古のお店を買ってリノベーション。そこを拠点とし、冒険者をやりつつ、ルスレイの夢だったという雑貨屋もやっている。
そうだな、今度彼らと何かやってみようか。
宿ジゼリィ=アゼリィのオーナー夫妻であられるローエンさんやジゼリィさん、漁師のガトさん、農園のオーナーであるおじいさん、水着魔女ラビコが席を囲み、楽しそうに話している。
周りに聞こえないように、小さい声で喋っているから、おそらくラビコがルナリアの勇者さんの報告をしているのだろう。
みんな安心と嬉しさが混じったような笑顔。元勇者パーティーの仲間だし、心配していたんだろうな。
店内を見渡すと、海賊風漁師ガトさんの息子レセント、娘のシャムちゃん、農園の社員になったハーメル、宝石屋のナディさんと見知った顔が多い。
わざわざ来てくれたのか、ありがたい。
それはまぁ嬉しいんだけども、食堂がとんでもない混雑、これマジいくらかかるんだろう……。
「あっはは~、ラビコさん酔っぱらっちゃった~。飲んでる~少年~?」
目算で金額の計算をしていたら、右横に水着魔女ラビコがお酒片手に座ってくる。超上機嫌。
ルナリアの勇者さんの報告は終わったのかな。
「飲んでいるのはジュースな。その、無粋なのは分かっているけど、これの金額結構いきそうなんだけど……」
今の段階の目算でも、日本感覚二桁万円超えてるし。
「え~? 別にいいじゃ~ん、社長お金持ってるでしょ~? こういうときに使わないで、いつ使うのさ~。自分の為に集まってくれる仲間ってお金以上に大事だよ。それぞれの人生があるのに、その有限の時間を削って会いに来てくれるんだ。その想いに応えないでどうするのさ~」
あ、いや、それはそうなんだけど、その、俺のお金も有限……
「それに~、私としては社長には持っているお金全部使ってもらって~、路頭に迷って私に泣きついてくるのを~狙っていたり~。社長のお金が無くなっても~、私が持っているから大丈夫~。弱らせて寄生させて~、私無しには生きられない身体にしてあげる~! あっはは~」
水着魔女ラビコが大爆笑。
良い話かと思ったら……こ、こいつ……
「だ、大丈夫ですよ、宿でも負担しますから! それにうちは儲かっていますし、私とお店を継ぐあなたがお金に困るようにはなりませんよ。ふふ」
宿の娘ロゼリィが俺のフォローをしてくれるが、後半の話、俺がロゼリィと一緒になる話になってね?
「そうそう、キングが金に困るとかありえねぇだろ。まぁもしダメになっても、アタシと一緒になれば問題無いしよ。な、セレスティアのお城で一緒に暮らそうぜ、にゃっははは!」
猫耳フードのクロもフォロー? してくれるが、そっちも俺とクロが一緒になる話だな。つかあなた王族なのに、セレスティアを家出してますやん。
早くお姉さま、現在魔法の国セレスティアの女王であるサンディールン様に、現状のご説明をしたほうがいいのでは。
「……大丈夫ですマスター……何かあっても、島で結婚すれば全て解決します……」
バニー娘アプティまでもが無表情でフォローをしてくれる。
うん、嬉しいけど……毎回言う、島で結婚ってどういうことなの。
「ベッス」
おお、愛犬までも俺の心配をしてくれるのか。
まぁ何かあっても、ベスさえいれば大丈夫。
だって世界のどこかで開かれているペットレースに出て、無敵のベスで荒稼ぎすればいいしな。虐待? 違うって、ベスは誰かと一緒に走るのが大好きなんだよ。
貰えるお金はおまけ。
俺が見たいのは、愛犬が元気に走る姿、それだけ。見ろ、俺の目には一点の欲の曇りもないぞ。
「あ~、社長と一緒だと本当に楽しい~……私もう絶対に離さないし、どんな手を使ってでも寄生させてやるんだ~、あっはは~」
ラビコさんの発想がたまに怖いんだけど、これ酔って言っている、この場だけのおふざけだよね?
「そうですね……あなたと出会ってから、私は泣いたり怒ったり、そしてとても笑うようになりました。あなたと一緒なのが、私の自然体。なので早く身体的な意味でも一緒になりまして、その先の人生、子供たちと一緒に楽しい宿屋経営をしましょう。ふふ」
あ、いや、ロゼリィさんも最近結構重めの発言するようになりましたわ。
「まぁあれだ、とりあえず指輪持ち全員とヤってくれよキング。細けぇことはそのあと、出来てから考えりゃあいいだろ。金も人脈もあンだから、なンとかなンだろ? にゃっははは!」
クロさんは、ストレートにヤバイんですよ、発言が……。
それにあなた魔法の国セレスティアの王族様なんですから、成り行き任せじゃあなくて、もっと慎重に動いたほうが良いかと……。
「……私が一番ですが、島では多くの、マスターを慕う女性が、います……種族繁栄のためにも、マスターには頑張っていただき……」
ん? アプティさん? 種族繁栄……?
なんか一番ヤバイ重めの発言しなかった?
「ね~社長~、次は? 次はどんな面白いことするの~? いいよ~、もう大サービス、この大魔法使いであるラビコさんがどこでも付いて行ってあげる~。みんなで一緒の時間をもっと、もっと楽しもう。行っていないところもまだたくさんあるし~、みんなで行ってみたいところもたくさんあるのさ~。思い出を語るのはいつでも出来るからさ、今はその思い出をたくさん、みんなで、このパーティーでいっぱい作ろう。この世界は悲しむためじゃなくて、楽しむためにある、そうでしょう社長~。あっはは~」
……この世界は楽しむためにある、か。
そうだな、そう考えるのが正解だと思う。
辛いことや悲しいことは必ず起こる。
でも、諦めず乗り越え、前を見て歩みを止めなければ、その先に必ず楽しいことが起こる。
そしてこのメンバーなら、その楽しいことを起こすことが出来る。
俺の夢は、この異世界の全てを見ること。
それは俺一人の夢だったが、このメンバーとなら、一緒にいる時間を楽しむ延長で叶えられそうな気がする。
みんなで、笑顔でこの世界の全てを見ることが出来ると思う。
そう、みんなと一緒にいることが、俺の夢を叶える一歩となる。
次か、そうだな……宿の混雑解消もしないといけないし、王都のカフェジゼリィ=アゼリィの様子も見に行かないとならない。
商売人アンリーナ。なんかいつもアイランド計画がどうのとか言っていて、それが気になる。
ああ、初心者パーティーのみんなとクエストもやりたいし、毎日頑張ってくれている正社員五人娘にご褒美もあげたい。
銀の妖狐の島にも行きたいし……ああ、これはお世話をしてくれたメイドたちに会いたいって意味で、決っして完成したというエロ本屋に行きたいわけではない。邪推はよしてくれ。
王都のハイラもどうしているか気になるし、サーズ姫様、花の国フルフローラのローベルトさんにもお会いしたい。
火の国にはアインエッセリオさんのお仲間がいるみたいだし、冒険者の国のクラリオさんにもまたお会いしたいし、ケルベロスにはまた地下迷宮に来いとか言われているし。
もちろんまだ行っていない国にも行きたい。
うむ、つまり選択肢は無限にあるのだ。
「えーと、次は……明日考える! 今はこの時を楽しむ、よし、俺にカードゲームで勝ったら、お酒か料理どちらか二つまで無料にするぞ! さぁ我こそはカードゲームキングだという強者よ、俺をこの王座から引き落としてみろ!」
俺は旅行用に持っていたカードを掲げ、食堂にいる皆に勝負を挑む。
「うわ~……よりによってカードゲームできたか~。これは全裸も覚悟ってことかな~」
「ええっと、食堂で全裸はちょっと……その……」
「アタシもやるー! 見てろ、一瞬にしてキングを丸裸にしてヤっからよぅ! にゃっははは!」
「……マスター、全裸になりましたら、島にお連れしますね……」
「ベッス!」
全裸?
いや、俺に勝ったらもう一品サービスってやつですよ。
単に二人同時にカードめくって、どっちが大きいかの勝負ね。
脱ぐとか脱がないとかは、無いっす。
決してフリでもないよ。
──どうでもいい後日談。
めくってどっちが大きいかゲームでは、なぜか俺は全敗。
多分誰かが不正をしていたと思う。じゃないとありえない確率だろ、全敗って。
まぁいい、俺が負ければ、勝ったお客さんが一品無料になる。
とっても盛り上がったし、騒ぎすぎてちょっと警備の騎士さんが入ってきて苦笑いが起きたりしたが、お客さんが喜ぶ笑顔を見れれば、俺の勝ち負けなどどうでもいいのだ。
そう、例え俺が全裸で負け続けたとしても、皆の笑顔があれば、それでいいのだ。
……いいのだ。
──これから異世界に来る予定の紳士諸君、俺からのありがたいアドバイスだ。
身体を作っておけ。
異世界では全裸になるのが日常茶飯事、見られてもいい身体を事前に作っておくことを推奨する。
君がカードゲームキングであれば裸は回避出来ると思うが、水着の魔女に挑まれたらそれは諦めてくれ。
あいつ、マジでチートクラスの豪運持ちだから……
そうだ、俺はいつでも君の異世界参戦を待っているぞ。
ぜひとも協力して、水着魔女ラビコを負かして裸を見ようじゃあないか!
異世界に来たら、ペルセフォス王国にあるソルートンという港街を目指してくれ。
今は魔晶列車が通っているから、来やすいと思う。
そこの南側にある宿ジゼリィ=アゼリィ、そこで俺は君を待っている──
「異世界転生したら愛犬ベスのほうが強かったんだが」
17章 異世界転生したら星が落ちる国があったんだが ── 完 ──
17章を最後までお読みいただきありがとうございました
今回のお話は新たな国、星神の国でのお話となりました
冒険者センター公式ガイドブックに載っていた「着物」の写真
これが気になり、主人公くんは星神の国へ
資料館で調べてみたら、どうやら千年前にいたという勇者が
日本から来たと思われる着物の女性
そしてついに出てきた「ルナリアの勇者」
第一章から名前だけの登場で、いつ出てくるんだよ! と
思われていた読者の皆様もいたと思いますが、ついに出ました
しかも回復魔法を使う女性、サクラさんも一緒に
どうやら千年前の女性と回復のサクラさんが異世界へ来た方法は同じようですが、
主人公くんはどうもそれとは別のようです
今後、そのあたりのお話を出来たらいいなぁ
今後・・・? そうまだ続きますよ!()
現在、絶賛18章を構築中!
いつになるか分かりませんが、初夏?あたりに・・・(未定
それでは、また18章でお会いしましょう!
こんな長い物語を読んでくれている読者様に最大の感謝を!
(リアルタイム初期から読んでくれている方っているんですかね。。。
近々、書籍 ② 巻 が出ます!(予定
発売中の ① 巻 共々よろしくお願いいたします・・・
②巻はついにハイラとアプティが出ます!
イラストが楽しみだー!
コミカライズ版 ① 巻も発売中です
それでは・・・!
(ご感想などありましたら、お待ちしております
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影木とふ




