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六十六話 朝風呂からの俺の七股騒動様


「おはようございます、うふふ」




 朝、ぼーっと部屋から出て一階の食堂に降りると、奥の通路からいい香りのロゼリィが歩いてきた。



「あれ、もしかして朝風呂?」


「はい! ちょっと夢が叶いました。朝からお風呂入って好みのシャンプーの香りが自分の髪からするっていいですよね!」


 自宅にあるってのはでかいよな、この異世界では。


 なんか時間があいたらお風呂行ってないかロゼリィ。よっぽど嬉しいんだろうなぁ。



「はぁ~……負けたわ~これは厳しい戦いになるわ~」


 ラビコも通路から歩いてきた。なんか落ち込んでいる。


「参ったね~あれは武器だわ~社長ピンチだわ~」


 俺がピンチ? 何が起きたんだ女風呂で。






「そういえば社長ってさ~女の好みってどんな~?」



 軽く朝食をいただきながら雑談をしていたらラビコが何か言いだした。


「いやぁ聞いたことないなと思って~。ほら、いっつも社長って女の裸で頭いっぱいでしょ~その妄想をちょろっと言ってみてよ~」


 ぶっ。いつもじゃねーよ。


 たまにだよ、たまに。全然違うだろうが。


 見た目の好みなんてエロいやつに決まっている。側にいて欲しい女性の好みとは違うよ。



「そりゃあ、な。大きいに越したことはない」


「あ~そうか~でもそれマズイなぁ~比べられたらマズイなぁ~。社長明日から王都で暮らさない~? ロゼリィはこの街で頑張ってもらって~」


 それを聞いたロゼリィがぐわっとすごい勢いで立ち上がる。鬼の角が見え隠れ。


「ラビコ? あんまり変なことを言うとうちでデザート禁止令出しますよ?」


「そ、それは困るな~ここのパンケーキは食べたいなぁ~」


 よく分からんが、一度王都には行ってみたいぞ。すっげー都会なんだろ? 人口も多いから、美人さんも多くいたりするのかな。




「王都かー行ってはみたいな。お金ないから行けないけど」


「だ、だめです! 行ってはいけません! 王都なんて犯罪者ばかりの怖いところなんですよ!」


 そ、そうなのか? このソルートンの街ってすげー平和だから、そういうの気にしたことないが。まぁ、人口多いと犯罪を起こす人も増えるのか。


「う~ん、まぁゼロではないし、絶対安全とは言えないけど~王都を守る騎士が常に都市内を見回っているし~検挙率は結構高いから安心は出来るよ~」


 ラビコが王都の事情を語ると、ロゼリィががっしり俺の腕を掴んできた。


「い、嫌です! あなたがいなくなるのは嫌です!」


 おほ、お風呂上がりのロゼリィのいい香りが俺を誘惑する。


「うっは~社長だらしない顔~。そっち系じゃやっぱ勝てないかな~じゃあお金で攻めるか~社長~今までの借金チャラにするから~私と二人で王都で暮らしましょう~」


 む、チャラとな。つうか借金てやっぱ積み重なっているんですかね……。




「出勤したら……修羅場に遭遇……」


 九時出勤のアランスが顔を合わせないように横を通り過ぎていく。





 お昼過ぎ。


 バイト五人組の中で俺は七股が発覚し、王都に逃げようとしたところをみつかり修羅場になっていたと話が飛躍していた。


 つうか七股ってなんだよ。あと五人ってお前ら含めて全員かよ。


 俺すごすぎだろ、それ。



 そういう逞しい俺に俺が憧れるわ。










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