六百五十七話 銀の妖狐の島の進捗と湯上り指輪順位様
「そうそう、島のほうもだいぶ完成に近付いたんだ。時間があるとき、また来て欲しいな」
王都レディアホロウの温泉施設で癒されていたら、なぜか隣に来た銀の妖狐。
キチンと入口で料金を支払い、頭の狐耳や九本の尻尾を隠し、人間と変わらない格好で入って来た。
こいつ、狐耳とか無ければ、ただの銀髪ロングイケメンなんだよな。しかも俺が歯ぎしりするレベルの。
どうにも俺がサリディアの大穴で、闇の種族の上位蒸気モンスターと接触したことが心配だったそうだ。
心配……というか、他の種族と会って、どういうことが起きたのか確認しに来た感じだろうか。
銀の妖狐曰く、闇の種族のリーダーであるルリエラは、しつこくて執念深くて子供っぽいんだそう。
愛犬ベスの咆哮で服が弾け飛んで、裸の状態で転ばせたのだが、それを相当怒っていたからなぁ……。
って、裸にしたのは偶然だぞ? 決して俺の指示ではない。
絶対にやり返しに来ると思うよ、とか銀の妖狐に言われてちょっと不安だが、裸にされて転ばされるぐらい、まぁ別に……。
ふにゃん、は言いたくないけど。
「ふふ、君のお世話をしてもらったメイドたちも、毎日君の部屋を掃除して待っているんだよ? 主人が帰って来ない部屋を彼女たちが悲し気に見ていたけど、彼女たちの顔を笑顔に変えてくれたら嬉しいんだけどなぁ、ふふふ」
銀の妖狐がニヤニヤ笑い、俺の肩に頬ずりをしてくる。
ああああ……そういうことをやめてくれれば、だいぶマシなんだけどな、こいつ……。
「……それは申し訳ないと思うけど……」
そういえば、銀の妖狐の島に連れていかれた時、俺のお世話をしてくれたメイドたちがいたな。
確かに彼女たちは気になるけど……
「ホラ、君が欲しいって言っていた、本屋さん。あれはもう出来ているんだ。どうだい、そこの本のラインナップは気になるだろう?」
銀の妖狐が熱い吐息を俺の耳に吹きかけながら小声で語りかけてくるが、それマジやめて。周りの男たちにすごい目で見られているの。
くそが、何度も言うが、もちろん俺の返答はこうだ。
「今度行く」
俺は即答した。
「ほ、本当かい? あはは、それ嬉しいなぁ。絶対にみんな喜ぶよ! ふふ、じゃあ早く帰って、君を迎え入れる準備をしないとね!」
本屋というのはアレだ。俺がとても興味のある、この異世界の図鑑や歴史書などが揃っている本屋のことだぞ。
決して銀の妖狐の島では人間が決めた法律とかいう縛りが発生せず、未成年の俺でもエッチぃ本が買えるから、では、無い。もちろんだ。
勉学の為、俺は銀の妖狐に頼んで、世界中から英知を集めてもらい、それら全てを俺は迷わず買い、何度も熟読して、この異世界で生きていく糧を得ようというのだ。
「あの、追加で眠そうな目の子系のも……頼むよ」
「え、眠そうな……? えーと、ちょっとそのジャンルは分からないけど、探してみるよ」
俺の知識欲は日々増える一方、なので英知の追加も真顔でお願いした。
……まぁ、以前一回だけ銀の妖狐の島に行ったけど、バニー娘アプティが実家に帰って来た、って感じで、無表情ながらもちょっと嬉しそうだったんだよね。
お世話をしてくれたメイドたちも気になるし。
ほら、本屋はついで、なのである。俺、健全思考。
「これ、みんなで分けて欲しい」
「え、い、いいのかい? まさか君から贈り物を頂けるとは……あああ……今日はなんと満たされた日なのか……君の裸も見れて、お土産も貰えるなんて……!」
お風呂上がり、温泉施設の売店で日持ちがするお菓子がたくさん入ったお土産を大量に買い、銀の妖狐に手渡した。
俺の裸って……こいつ、狙って温泉で接触計ってきたのか?
「……独り占めするなよ? ちゃんとみんなに渡すんだぞ」
「え。も、もちろんさ! 絶対に独り占めなんてしないよ、うん……」
渡した袋に銀の妖狐が恍惚の表情で頬ずりをし、ヨダレを垂らす勢いだったので釘を刺しておいた。
「じゃあ島に帰るね。ふふ、今度は君を抱っこして一緒に帰れるかもしれないね、ああ……その日が楽しみだよ」
温泉施設の前で銀の妖狐を見送る。
行くとしたら、バニー娘アプティに連れて行ってもらうっての。なんでお前に抱っこされにゃあならんのだ。
「……マスター、島で結婚、で、よろしいのでしょうか……」
温泉施設の共用ロビーに帰ると、湯上り美人のバニー娘アプティが背後から話しかけてきた。
え? 島で結婚……? あのアプティさん? お客さん多いんだから、無表情で背中に顔こすりつけるのやめて。すっごい見られているし。
「ベッス」
おっほ、愛犬ベスも負けずに俺の足に顔をこすりつけてきたし。
「あ、ず、ずるいですアプティだけ……わ、私も……!」
とりあえずアプティの頭を撫でて落ち着かせていたら、宿の娘ロゼリィがダッシュで近付いて来て自分の頭を俺にグイグイ向けてくる。
撫でろ、と。
うっは、アプティもだけど、ロゼリィの髪からも甘い香りがする。
「ふふ、優しくて大きな手です……」
湯上りでちょっと赤い顔、うーん、ロゼリィがとってもエロい。
「こら~! アプティが慌ててお風呂上がったから何かと思ったら、抜け駆けかよ~! 指輪順位一位の私を差し置いて、アプティとロゼリィを優遇とかおかしいだろ~!」
水着魔女ラビコが激怒しているが、何だ、指輪順位って。
「次アタシな。まぁヤれりゃあ何番だっていいだろ。とりあえず指輪さえあれば、キングは抱いてくれるンだろうし、にゃっはは!」
猫耳フードのクロが、肩で風を切るヤンキー特有の余裕の歩きで近付いてくる。
あの、人が多くいる公共の場で、カタカナのヤとか抱くとかの単語はやめて。
「ほっほ、そうか、この指輪にはそういう意味があったのか。それは期待してしまうのぅ。つまりわらわは、王の抱きたい女候補に入った、と思ってよいのだな?」
アインエッセリオさんがさっきプレゼントした銀の指輪を触り、嬉しそうにしているが、だから何度も言いますが、それは『感謝の指輪』ですって!
ああもう、なんかアインエッセリオさんって、慣れてくると結構ノリが良いような……
「異世界転生したら愛犬ベスのほうが強かったんだが」
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影木とふ




