六百五十四話 王都レディアホロウ観光とアインエッセリオさんへ感謝の指輪様
「それじゃあ本日は王都レディアホロウ観光といこっか~。あっはは~」
ルナリアの勇者さんたちと別れた翌日、俺たちは朝一で魔晶列車に乗り、星神の国の王都に戻ってきた。
翌日っても、夜中に横穴ダンジョンで色々あっての数時間後、なんだがね……そう、眠いのである。
「ラビコは元気だな……」
サリディアの街から特急で三十分、もうこのままソルートンまで魔晶列車に乗っていようか、ぐらいの眠気だったが、せっかく来たのだから王都観光ぐらいはしていこうとなった。
「まぁ、長年会いたくても会えなかった元仲間に会えたンだから嬉しいんだろ。あとは自分の男をリンデルとサクラに見せれてテンションマックスってやつだな、にゃっはは」
猫耳フードのクロが、朝ごはんを食べるお店を物色しながら言う。
「まさかルナリアの勇者さんご本人にお会いできるとは思いませんでした……。本当にあなたと一緒にいると、普段考えられないことが連続で起きて毎日ワクワクドキドキです。あとカエデちゃん、かわいかったですね。ああいうの、憧れます……あの、子供はお嫌いですか?」
宿の娘ロゼリィも少し眠そうだが、昨日会ったリンデルさんとサクラさんの娘、カエデちゃんを思い返し幸せそう。
ロゼリィが俺の左腕にがっしり絡んできたが、毎度ながら素晴らしきボリューム……え、子供?
「ああ、カエデちゃん。かわいかったですよね。そして子供、いいですよね。そこにいてくれるだけで楽しくなるというか、明るくなるというか。俺もいつかは……家族ってやつが欲しいですね」
「ベッス!」
「おっと、ごめんごめんベス。お前も俺の大事な家族だよ」
俺の発言が気になったのか、足元の愛犬がアピールしてきた。
ごめんごめん。
しかし、言葉が分かるのか、ってぐらい、良いタイミングで吼えたな。偶然なんだろうけど。
「ふふ、ふふふ。私もです。不思議ですね。二人とも同じことを考えていたということは、それはもう夫婦というもので、やはり私たちはお似合いの夫婦……」
「はいそれ私の出番~。ああ、じゃあ今日はそういう日にしよ~。社長もやぁ~っとやる気になったみたいだし~、レディアホロウで一番良いホテルがあるから~、そこで朝まで二人で頑張ろう~。あっはは~」
可愛い愛犬を撫でていたら、ロゼリィがニッコリ笑顔で顔を近付けて来て、右からは水着魔女ラビコが抱きついてきて、どこかへ連れて行こうとグイグイ引っ張っていく。
え、あの二人共、今日は王都観光では……
「子供なぁ。アタシもキングとヤるって決めてるし、ヤってりゃいつか出来ンだろ。つかキングって、えげつない行為の連発なんだろうな。まぁアタシは全部受け止めるどころかカウンター決めてやっから、覚悟しとけよキング。にゃっははは!」
猫耳フードのクロが爆笑しながらビュンビュン拳を出し、ファイティングポーズ。
あの、クロさん、今午前九時過ぎとかの、人口結構すごい王都レディアホロウの往来なんですよ。そこでカタカナの『ヤ』を使った表現連発は人目がすごいのでやめてくれないですかね……。
あとそのファイティングポーズ、毎回なんなの。
「……マスター、島で結婚……適齢期……」
バニー娘アプティが無表情で俺のケツを掴んでくる。
オッフゥ……アプティさん、だから王都の往来……。そして適齢期って、何。
「ほっほ、王よ、そういうときはいつでも言うがいい。わらわが人間などでは味わえない、極上のプレイを堪能させてあげるぞ?」
アインエッセリオさんも眠そうな目で楽しそうに言うが、人間では味わえない極上のプレイ……ゴクリ、それは一体どういう……
「って、そうだ。一つ寄りたいお店があるんだけど、朝食後に行ってもいいかな」
アインエッセリオさんを見て、一つ思い出した。
今回、彼女にはとても助けられた。
そのお礼をしなければならん。
「社長がご希望の宝石とアクセサリーのお店って、このへんだけど~?」
朝食は開いていたオシャレな喫茶店に入った。
まぁその、味のしない固いパンと数粒のニンジンが浮いたスープ。うん、そのあとデザートで頼んだヨウカンが一番美味かったです。
紅茶も頼んだのだが、バニー娘アプティさんが無表情でブルブル震えるレベルの美味しくない物でした。
「アインエッセリオさん、今回は一緒に来てくれて本当にありがとうございました。おかげでルナリアの勇者さんを救うことが出来ました。そのお礼と言ってはなんですが、ずっと欲しがっていた指輪を贈りたいのですが、好みとかありますか?」
水着魔女ラビコにお店を案内してもらい、俺はアインエッセリオさんに笑顔で指輪が置かれているコーナーへ誘う。
マジで、今回はアインエッセリオさんがいてくれて良かった。
闇の種族のリーダーさんの情報とか、的確に出してくれたおかげで対処がしやすかった。
やはり情報を持っているってのは、相当な武器になる。
「ほっほ……そうかそうか……! 王はやはりわらわの身体が目当てだったのだな? よいぞ、王の欲の全てを受け入れよう」
俺の言葉を聞いたアインエッセリオさんが、眠そうな目を限界まで開き驚く。
あの、アインエッセリオさん、俺に抱きつくのではなく、指輪を選んで……
「ええ~、それどういうこと~? 本妻の私の目の前で浮気とか~、信じられないんですけど~」
水着魔女ラビコが不満そうだが、指輪プレゼントは浮気じゃあないし、俺に本妻とかいないし。
「でも助けてくれたのは事実ですし、いてくれて良かったと……」
「おお、まぁいいンじゃね? マジで助かったし。キングとの約束全部守って、言うことも全部聞いてたし」
「……マスターの判断にお任せします……」
宿の娘ロゼリィ、猫耳フードのクロ、バニー娘アプティは認めてくれたか。ありがとう。
「……良いのか? わらわは人間ではないのだぞ?」
「関係ありません。アインエッセリオさんは何度も俺たちを助けてくれました。そして今回も。あなたはもう、俺たちのパーティーメンバーで、家族だと思っています。ぜひ、受け取ってほしい」
「ほっほ、まさか本当にもらえるとはのぅ……やはり王は面白い男よのぅ。どうだ、似合うかのぅ」
あまり好みは無い、とのことなので、お値段はそこそこするがシンプルなシルバーリングをアインエッセリオさんに贈る。
なんだか眠そうな目で嬉しそうに付けた指輪を見せてくるが、あの、なんでまた左手薬指なんですか……
「皆、ここにつけているのぅ。わらわもここでよいのだろう? ほっほ」
アインエッセリオさんがニヤニヤと俺を見てくる。
くっ……どこに付けるかは本人の自由ですが……一応言っておきますけど、これはみんなと同じ、『感謝の指輪』ですからね……。
「まぁ……助かったのは事実だけど~。社長が贈りたいならいいけど、これ浮気現場だからね~?」
水着魔女ラビコがちょい不満そうだが、自分の左手薬指のシルバーリングを触りながら言う。
だから、誰ともお付き合いしていない俺が、どうやったら浮気ができるのか。
「わらわが人間のパーティーメンバーで、家族、か……なんだか嬉しいのぅ。ほっほ」
その後、観光であちこち見て回ったが、アインエッセリオさんが頻繁に自分の左手の指輪を見ては眠そうな目を細め、嬉しそうにしていた。
「異世界転生したら愛犬ベスのほうが強かったんだが」
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影木とふ




