六百三十五話 新たな国へ2 港街ビスブーケ到着と星神とは様
「はい到着、花の国フルフローラで一番賑わっているビスブーケ~。あっはは~」
昨日の朝六時にソルートン港を出発。
夜の二十二時にペルセフォス王国最南端にあるティービーチ港にて補給、そして現在朝六時過ぎ、俺たちが乗った連絡船は無事ビスブーケ港へと入港。
花の国フルフローラ最大の港街ビスブーケ。もう何度も来ているが、相変わらず雰囲気が良い場所だ。
特徴としては建物に使われている石材が赤っぽく、もうそこら中に花壇が作られわんさと花が植えられている。まさにザ・花の国。
連絡船の中で、なんとなく冒険者センター公式ガイドブックに乗っていた簡易世界地図を見ていたが、立地的にこのビスブーケってすげぇ良い場所にあるんだよな。
大陸の東側で多分最大の港街、魔晶列車の駅もあり、ここから北にあるペルセフォス王国だったり南にある火の国デゼルケーノ、さらに西に向かえば水の国オーズレイク、そしてこれから行く星神の国レディアホロウにも繋がっている。
物流の拠点、といった感じか。
ソルートンもそこそこ大きな港街なのだが、魔晶列車の駅が無かったので、ビスブーケほど巨大にはなれなかった。
だがソルートンにはつい最近魔晶列車が繋がり、新たに駅が出来た。
もしかしたらソルートンはこれから新たな物流の拠点となり、大発展を遂げるのかも……しれない。
実際魔晶列車の駅が出来てから、ソルートンの人口すんげぇ増えているんだよなぁ。
「しかしまだ朝の六時過ぎなのに、もう暑いな。さすがビスブーケ」
「まぁね~、花の国フルフローラは南の国だし~。フルフローラ王都より人口も多いし活気があって良いよねビスブーケ~。あっはは~」
連絡船から降り、魔晶列車の駅まで歩いていると、水着魔女ラビコがニヤニヤと俺に絡んでくる。
なんでわざわざフルフローラ王都と比べたがるのか。いいじゃないか、ビスブーケにはビスブーケの、王都には王都の良さがあるだろうが。
フルフローラ王都なぁ……観光客からは田舎王都とか呼ばれていたり、実際行くと、この栄えたビスブーケとの落差で余計に田舎感が際立つんだよな……。
いやいや、フルフローラ王都は田舎ではなく牧歌的、みんなの故郷、さんはいっ。
でもフルフローラ王都は、こないだ商売人アンリーナと共同でカフェを開いたり移住者を募ったり、ペルセフォス王国のサーズ姫様がフルフローラに行こうキャンペーンとかをやってくれたから、状況は変わっているかもしれないぞ。
「フルフローラ王都には寄らないのですか? ローベルトさんに会いたかったのですが……」
ニヤニヤと右腕に絡む水着魔女ラビコを軽くあしらっていたら、左腕に驚きの大きさの柔らかき物が……ってロゼリィか。
ローベルトさんっていうのは花の国フルフローラの王族様で、ロゼリィとお友達になった女性。
「……マスター、ここは紅茶の生まれし場所……全ての地を巡りご挨拶を……」
突然後ろから俺の尻を掬い上げるようにつかんできた女性、バニー娘アプティが無表情に圧をかけてくる。
なんだよ急に……って、そういやアプティは紅茶好きだったな……。
「今回は寄らないよ~。目的地はフルフローラじゃなくて、星神の国レディアホロウだからね~」
俺がチラっと水着魔女ラビコを見ると、首を振り残酷な言葉を吐く。
ロゼリィとアプティがシュンとなるが、まぁ今回は新たな国、が目的地だからな。
「しかし星神の国、か。随分大げさな名前が付いているが、一体どういう国なんだ?」
ビスブーケ駅にて魔晶列車のチケットを購入、到着駅は王都レディアホロウ。
いつものごとく、列車最後尾にあるロイヤル部屋を確保。
お値段は高いが、部屋なので体が楽なのと、プライベートが守られるのが魅力で、必ずここのチケットを買ってしまう。
今回は蒸気モンスターであるアインエッセリオさんもいるし、ご迷惑をかけないように一般の方と離れるのが正解だろうし。
そのアインエッセリオさんは物珍し気に窓からの景色を見たり、「またしても遅い乗り物だのぅ」と少し不満気。
目的地にいかに早く到着するか、も大事ですが、のんびりと到着するまでの過程も楽しむのが『旅行』っていう人間の文化なんですよ。
ん、いや待てよ……一般の方と一緒の普通席のほうが周りの目があるから、連絡船のようなロゼリィの暴走は防げそうか……? いやいや、快適重視。お金ってのはこういう時に使うものだ。部屋単位だと、愛犬も籠ではなく自由にさせてあげられるしな。
「レディアホロウって千年ぐらい前に一回滅びかけてよ、そこに光と共に神様が現れて、勇者として国を救ったらしいンだ。で、その神様ってのを讃えて星神祭が開かれて、周りからも星神の国って呼ばれるようになった、だったかなぁ、にゃっはは」
俺の問いに猫耳フードのクロが応えてくれた。
滅びかけた?
そういや、出かける前にラビコがそんなことを言っていたな。光が落ちて神様が現れて勇者として国を救っただの。
「もう一個、芸術の国って呼ばれているのは、その光から現れた勇者ってのが国を救う手段として提案したのが『歌劇』だからなンだよ」
ん? 意味が分からんぞ。
「つまり~、経済的に滅びかけていたレディアホロウにお金稼ぎの手段を提示して大成功~、千年経った今でも、その『歌劇』は国を支える収入源~ってわけさ~。あっはは~」
水着魔女ラビコがお酒片手に言ってくれたが……てめぇもう飲むのかよ。つかどこで買った。
歌劇、つまり歌あり踊りあり物語ありのステージってことか?
それが発展し、歌、演劇、絵画へと色々なものに派生し、芸術の国と呼ばれるまでに栄えていったってわけか。
「それで~、その神様って存在がどこから出てきたと思う~? なんと王都の近くに巨大な大穴があって~、そこから光が天まで打ち上がって、流れ星として地上に落ちてきたのさ~。すっごいよね~、あっはは~」
王都の近くの大穴? そこから光が出てきた?
そして流れ星として地上に落ちて、勇者として国を救った……か。
はて、なんか既視感。
その光景、映像に変換してみると……まるで異世界転生転移──
++++++++++++++
【以下定型文】
作品を読んで興味を持ってくれた読者様! よろしければ下にある
『☆☆☆☆☆』のポイントをよろしくお願いいたします。
応援する意味でブックマーク登録やご感想、レビュー等いただけたらとても嬉しいです!
影木とふ




