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六十二話 宿屋拡張計画様


「兄さーん、野菜の下処理終わりましたー」




 俺は二メートル近い直径の深鍋に皮をむいた野菜をゴロゴロと入れる。



「おお、ありがとう。いやー未来の宿のオーナーにこんな仕事をさせていいのか、いつも悩むよ。あはは」


 この宿屋の料理人、イケメンボイス兄さんが申し訳無さそうに笑う。


 ここのオーナー? 未来の話をしてもお金はもらえないので、今バイト代下さい。




「ロゼリィーはい、宿泊代。バイト代貰った五秒後支払いとか、俺ギリギリだなぁ」


 ロゼリィに今までに稼いだお金から宿泊代を支払う。


「ふふ、はい。では三日分いただきますね。何度も言いますが、うちの社員になれば宿泊代の支払いはいらないんですよ?」


 ロゼリィがなにやらオーナーのサイン入りの書類をヒラヒラさせている。ここの宿屋の正式雇用の書類だろうか。つか、もう用意してるんかい。


「待ってくれ、ロゼリィ。俺は世界を見たいんだ。この世界を色々見て、それから自分の行く道を決める」


 異世界に来たんだぞ。あちこち見て回らないと損だろう。俺はこの異世界生活を満喫すると決めているんだ。


「はい、分かっていますよ。ふふ、お父さんにも言ってあります。世界を相手に戦えるお店作りを勉強するんですよね。私、すっごく楽しみなんです。あなたが成長して帰ってきたら、この宿屋はどうなるのか……ああ、もう楽しみ過ぎます!」


 はて、世界と戦える宿屋を作る? そんな約束したっけ、俺。


 まぁ、この宿屋にはお世話になっているし、お金稼げたら投資しますよ。



 そうだなぁ、今よりお客さんの数を増やすには料理以外の欲求を満たせるものが必要かな。料理は兄さんが才能開花で相当頑張っているから、この成長速度で問題ないと思う。


 あとは施設の魅力。



「やっぱ温泉かなぁ……」



 宿屋ジゼリィ=アゼリィには温泉がない。


 この世界の人は、街のあちこちにある温泉施設でお風呂を済ませるのが常識になっている。


 ここでお客さんを少し持っていかれてしまっていると思う。


 なんとか温泉を引くか、ここでお湯を沸かせるシステムを作って大浴場を作れないものか。



 宿の裏手の手付かずの庭、ここいいんじゃないかな。


 広さもテニスコート二個分ぐらいはある。


 宿の裏を流れている綺麗な小川。ここから水は取れる。ここにボイラーを作って、お湯を沸かし、湯船に流す。


 うーん、素人考えだがオーナーに企画書書いてみるか。


 施工業者に頼めばいい物が出来ると思うし、この宿屋の売りがもう一個出来る。よし。





「許可が出た……」


 紙に絵を描いて企画書っぽいものをオーナーに見せたら、すぐに了承してくれた。



 あのオーナー、見た目すげぇ渋かっこいい紳士っぽいんだけど、かなりのギャンブラーだな……。こんな汚い絵の企画書にあっさり投資してくれたぞ。


 ああ、ロゼリィのお父さんのローエンさんね。お母さんはこのお店の名前になっているジゼリィさん、さすがロゼリィのお母さんってぐらいグラマラス美人。




 すぐに業者さんが下見に来てくれ、見積もりを出してくれた。


 

 聞くと、この宿屋を建てた業者さんで、オーナーのローエンさんのお知り合いなんだとか。


「若旦那、これは一部屋根ありで半分は露天風呂にするのかい?」


 オーナーのお友達で業者の社長さんぽい人に呼び止められた。


 若旦那? まぁ、いいか。


「はい、せっかくなら露天で情緒ある風景にしたいですね。お風呂入りながら月見とかたまんないっすよ」


「あっはは、いいね~それ。さすがローエンが褒めるだけはあるよ、若旦那は。よし、後は任せな。きっちりいい物作っからよ」




 さっそく次の日から工事が入った。


 行動早いなここの業者。



「え、え、え!? 何か急に動きが……」


 ロゼリィが工事の作業が始まったのを見て驚いていた。そういやロゼリィには言っていなかった。


 簡単に説明しないとな。



「お、お、お、お、お風呂が出来るんですか!? うわわ、やりました! 嬉しいです! 私大勝利です!!」


 ロゼリィが歓喜の勝利宣言を出した。


 うん、ロゼリィはお風呂好きだしな。自宅に出来るようなものだし、嬉しいだろう。


 つか、俺もお風呂代少し安くなるんじゃないかとワクワクしている。


「ふふ、お父さんが機嫌良かったので何かと思ったら、あなたが動いていたのですか。うちの宿屋にお風呂が出来るなんて、夢のようです。これならお客さんさらに増えそうですね。お母さんが宿泊プラン色々考えていましたけど、なるほど、こういうことですか」



 そういえばこの宿屋に露天風呂出来たら、この俺の靄の先が見えるとかいう能力がチートクラスに大活躍するんじゃないだろうか。



 俺の若さと情熱が止まらない予感。












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