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五百九十六話 初心者応援クエスト 2 農園でメロ子と再開とソルートンの発展様




「うわ……うわああああああ! くま、クマ、超デカ熊ー!!」



 お昼前、俺たちは港街ソルートンの北側にある農園に来ていた。




 ここに来る前に冒険者センターの食堂で朝食をいただいたのだが、うん、その、美味しくはなかった。


 ただ、注文して五秒で出てきたのにはビビった。ちょっぱや。


 色々なお魚が細切れで入ったスープに固いパン。うーん、見た目の華やかさがない。


 冒険者センターで知り合って現在パーティーを組んでいる剣士クロスに魔法使いエリミナル盗賊のルスレイは美味しいと食べていたが、俺は久しぶりに食べるジゼリィ=アゼリィ以外での食事に軽いショックを受けた。


 そういやこの世界の普通のご飯ってこのレベルだったな……。


 ああ……早くジゼリィ=アゼリィ神の料理人、イケボ兄さんの手料理が食いたい。





 冒険者センター主催の『初心者応援プロジェクト』。



 指定されたクエストをいくつかクリアすると、初心者限定報酬が貰えるという美味しい企画。


 割れてしまった冒険者カードの再発行をしていたら、見た目で初心者だと思われてパーティーに誘われここに至る。


 まぁ……俺、見た目しょぼいしな……。ジャージだし。


 

 冒険者センターの娘、クラリオさんが今現在の冒険者数の減少やレベルの伸び悩みが気になるとか言っていたし、俺なりに市場調査でもしてみようかと彼等と一緒にクエストをこなしている。


 海賊風漁師ガトさんのところで人間ベルトコンベアを体験した後、お次は、と来てみたらなんとも懐かしい場所。





「わは、わはー……! ああ神様勇者様ラビコ様……私の冒険はここまでのようです、さようなら……」


「な、なんだいこの超巨大熊は! ほらあんた、ぼーっとヨダレたらしてないで逃げるよ!」


 おっと、イケボ兄さんの美味いご飯を思い返していたら大惨事になりかけているぞ。



「大丈夫だって、この熊はメロ子っていって、ソルートンを守った英雄の一人なんだぞ」


 高さ五メートルを余裕で超える超巨大熊の登場に慌てふためく三人。


 俺がさっと手を上げ挨拶をするとメロ子も同じように返してくる。この農園で人間と普通に生活するようになったからか、メロ子の動きの人間味がさらに増したな。




「おーおー、メロ子が喜んでいると思ったらお前さんか。そうかそうか、ついにわしの元で体を鍛える気になったか。ほれ、まずは基本じゃ」


 農園の倉庫のほうからおじいさんが歩いてきて、俺に鉄製のクワをひょいっと投げてくる。ちょ、あぶねぇ……。


 そして俺は体を鍛えに来たわけじゃねぇっす。


「は、はじめまして! お、おれ、いえ私はクロスと言いまして、先日冒険者になったばかりの剣士になります! ルナリアの勇者メンバーの三千騎士様に会えて光栄です!」


 メロ子のデカさに尻もち付いていた剣士クロスがダッシュで俺の横に来て、勢いよく頭を下げる。


 おじいさんはこの農園のオーナーなのだが、実はこの人ルナリアの勇者の元メンバーで、ジゼリィさん、ローエンさん、ガトさんのお師匠さんにあたる人。


 実際の戦いっぷりを銀の妖狐にソルートンが襲われたときに見たが、全身真っ赤なフルアーマー装備で長いランスをドカドカ突き、発生した強力な衝撃波で蒸気モンスターをまとめて消し去った技は圧巻だったなぁ。


 三千騎士というのは異名で、わしを倒したかったら三千人の騎士で攻めて来い、と言い放った過去があるからだそうだ。



「ほほっ初心者クエストじゃろ、ほれ、お前さんもクワで畑を耕して足腰鍛えてけぇ、かかか!」


 もう一本持っていたクワを剣士クロスに投げ、倉庫そばにある広大な畑を指す。


 え、ちょ……あの畑、何たらドーム数個分はありそうな勢いだぞ……このクエスト、超キツイやつじゃ……。


「女性陣はこれじゃな、ほれ」


 魔法使いのエリミナル、盗賊のルスレイには丈夫な手袋を投げ、おじいさんが地面に落ちている石ころをつかむ身振りを見せてくる。


「わは……畑の石どかしかぁ、実家でよくやらされたやつだぁ……」


「それはいいけど……あの畑、広すぎないかい……」


 エリミナルがうへぇという顔で手袋を装備。ルスレイもしぶしぶ手袋をつけるが、畑の広さに面食らっている。





「うおおおおおおおおおお!」


「キ、キツ……あとさっきから上空を飛んでるホエーホエー言う鳥は何……う、ああ、みんなが呼んでる……」


 俺と剣士クロスがガッツンガツン畑にクワ乱舞を食らわせていたら、クロスが上空を飛ぶホエー鳥の綺麗な円を描く飛び方に目を回し倒れてしまった。


 お、おい……! だからお前倒れたら俺の負担が増えるだろうが!


 みんなって誰なんだよ。


「友よ、メロ子が手伝いたい、って」


 ヒュロローと不思議な笛の音が聞こえたと思ったら、俺の親友こと、いつの間にか大剣使いからこの農園の社員にジョブチェンジしていたハーメルがクマのメロ子を引き連れ現われた。


 彼は特異な才能の持ち主で、あの不思議な笛の音で動物たちと会話ができる能力者。



 メロ子が俺の横に来たと思ったら、巨大な前足の爪を地面に突き刺しトラクターがごとく畑を耕していく。


 す、すげぇ……!





「ほい、報酬じゃけぇ。頑張った分、おまけもつけといたから仲良く食え、かっか!」


「ありがとうございます! 畑の野菜をこんなにも、嬉しいです!」


 規定の時間になったらしく、おじいさんが俺たちに報酬の入った紙袋と木箱いっぱいの野菜を持ってきた。


 えーと、主に頑張ったのはクマのメロ子さんじゃないかな……と思うがまぁいいか。


 これはどうしようかな、そうだ、ジゼリィ=アゼリィに持ち込んでこれを使った夕飯とかにしようかな。





「……な、なぁ君、もしかしてルナリアの勇者メンバーの三千騎士のおじいさんともお知り合いとか……?」


 農園からの帰り道、剣士クロスが聞いてくる。


「おじいさん、親戚の子供でも見るような目でみていたよ?」


「あんな巨大な熊とも知り合いとか、あんたの交友範囲ってどうなってんの」


 魔法使いエリミナルと盗賊ルスレイも俺を不思議そうに見てくる。


「いや知り合いってか、ここも以前お手伝いしたことがあるんだ。まぁソルートン在住の初心者冒険者なんて、だいたい同じところにお世話になるんだよ」


 初心者にはうってつけの、危険度の低いクエストってなったらだいたい似通うだろう。


 そして最初のガトさんの漁船手伝いだったり、今の農園のお手伝いだったりと、冒険者センター主催の『初心者応援プロジェクト』は、基本的に戦闘があまり発生しないクエストが多めに選ばれているんだろうな。



「ふぅん。私ソルートンには初めて来たけどさ、結構いいところだよね。以前は線路が繋がってなくて魔晶列車で来れなかったけど、今は駅が出来て大型商業施設なんてのも出来て、なんか急に都会っぽく発展してる感じ。街の雰囲気も良いし、ここを拠点にしてもいいかなー。ほら、ルナリアの勇者メンバーとも気軽に出会えちゃうし」


 盗賊女性ルスレイが駅直結の大型商業施設のパンフレットを楽しそうに眺めている。


「わはーそれ賛成ー! このパーティー楽しいし、ソルートンの街も楽しい! ここを拠点にしてみんなで成長していきたーい。そしていつか憧れのラビコ様の髪の毛を一本こっそり抜いてお守りに……ふひ」


 ……魔法使いのエリミナルさん? 今ふひって……



「そうだな、俺もこのソルートンが気に入ったよ。ルナリアの勇者の出身地ってことしか知らなかったけど、来てみたら俺の田舎なんかよりよっぽど都会だよ。船もあるし魔晶列車もあるし、ここを拠点にすれば世界のどこにでも行けそうだ」


 剣士クロスが夕方になりオレンジに染まった空を見上げ言う。


 そういやそうだな。


 今やソルートンは魔晶列車の駅が出来たから、王都ペルセフォスまで特急で一日、それこそ船に乗れば世界のどこにでも行ける。


 結構便利な場所になったのか。




「よし、この調子で今日はもう一個クエストをこなすぞ! 次ももちろんルナリアの勇者メンバーに会えるクエストだ!」


 剣士クロスが街の地図を広げ、受けたクエストの目的地を指す。


 初心者応援プロジェクトで選べるクエストはたくさんあるようだが、どうやらクロスがルナリアの勇者メンバーに会いたいと、そういうクエストだけを選んでいるようだ。


 そしてあと残っている、ソルートンで会える所在地の分かるルナリアの勇者メンバーっていったら……



「宿屋ジゼリィ=アゼリィ! みんな当然知っているだろう! あのルナリアの勇者メンバーのご夫婦、ローエン様とジゼリィ様がやっている宿屋だ!」


 まぁ、そうなるよな。


「わはー! 知ってるぅ、そこ超知ってるぅー! ご飯がすっごく美味しいんだって、私の街にまで噂が来ててさー、今日ついにジゼリィ=アゼリィでご飯が食べられるんだぁ……ああラビコ様すいません、私今日美味しいごはんを食べちゃいます!」


 剣士クロスが地図の南側、俺にとってはすっごく見慣れた場所を指すと、魔法使いエリミナルが嬉しそうにピョンピョン飛び跳ね、懐から取り出したラビコの写真を見てヨダレを垂らす。


 ……写真? そんな物さっきまで持っていなかったよな……ってよく見たらそれ、冒険者センターに貼ってあったポスター切り抜いたやつじゃ……!


 だ、ダメだってそういうの……!


「うわーついにジゼリィ=アゼリィかー。私、実はペルセフォス王都出身でさ、ここに来る直前までお城の目の前に突然出来たお店『カフェ ジゼリィ=アゼリィ』に通い詰めていたんだ。もーご飯とかデザートとか最高に美味しくてさー……そしてソルートンのジゼリィ=アゼリィっていったら本店でしょ? ああ、楽しみ……」


 いつも冷静な感じだった盗賊ルスレイが興奮気味に語りだす。


 あれま、急に女子っぽくなったぞ。


 そしてルスレイさん、ペルセフォス王都のご出身ですか、都会っ子ですなぁ。


 王都のカフェに通っていてくれたとか、作った側の立場としてちょっと嬉しいお言葉。もしかしたらお店ですれ違っていたかもしれないですな。




 さて、お次のクエストは宿ジゼリィ=アゼリィか。


 なんかみんなご飯食べに行くような感じで盛り上がっているけど、クエストで行くんだよな?



 そして俺にとってはこれ、「家に帰る」って行動になるんだよね……。











++++++++++++++



【以下定型文】




作品を読んで興味を持ってくれた読者様! よろしければ下にある


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         影木とふ






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― 新着の感想 ―
社長さんが色んなところを梃子入れ してますねぇ。 結局仕事してる。 国を跨いでのコンサルタント業。 さすが王の眼。フル活用。
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