五百六十七話 大型商業施設ソレイローラ様
「うわぁ、何度見ても大きな建物ですね。いまだにソルートンにこんな規模の施設が出来たなんて、信じられないです」
天気快晴、時刻はお昼過ぎ。
出かける直前に半ケツ露出事件などがあったが、俺たちは無事こないだ出来たばっかりの大型商業施設に到着。
ソルートンという港街の北側に新たに魔晶列車の駅が新設され、そこに直結する形で出来た大型商業施設『ソレイローラ』。
見上げるほどの高さの建物で、数百を超えるお店が中に入っているそうだ。
ペルセフォス王都にある施設には敵わないが、ソルートンという港街にある施設では最大の規模を誇るでのはないだろうか。
ソルートン駅と商業施設開業の式典に俺たちは立ち会ったのだが、さすがにオープニング期間は混雑が半端なかったので、ちょっと落ち着いた時期に来ようと一週間以上あけて今日来たってわけ。
ああそうだ、半ケツ露出って言葉に心踊らせた紳士諸君がいるかもしれないが、冒頭のセリフを言った超グラマラスボディをお持ちのお美人様ロゼリィがお尻を露出したわけではないぞ。
出たのは俺の半ケツだ。
「少しは落ち着いたんだろうが、それでも人の数はすごいな」
建物の中に入ると、人とすれ違うのですら厳しい混雑っぷり。行列もあちこちに出来ているな。
混雑の予想はしていたので愛犬ベスは宿の部屋でおとなしくしてもらっているが、ここまで混んでいるとは思わなかった。
「一階は飲食系のお店が多く入っています。少し過ぎましたが、まだお昼の時間帯と言えますので人が集中するゾーンかもしれません」
俺が人の多さに面食らっていると、商売人アンリーナが館内パンフレットを指してくる。
「じゃあ混んでるところは避けて他のとこ行こっか~。それに食べ物はジゼリィ=アゼリィを超えるお店はそうそう無いだろうし~あっはは~」
パンフレットに載っている飲食系のお店、アンリーナ曰く『世界でも有名なお店』を眺めていたら、水着魔女ラビコが上階を指し笑う。
お前な……あまり有名じゃあないこの街にわざわざ出店してくれたお店になんて言い草だ。
商売人であるアンリーナが世界を巡って苦労して集めてくれたんだぞ。
「そうですね……正直言いますと、味で宿ジゼリィ=アゼリィを超えるお店は無いですわね。珍しかったり知名度があるから人気、のお店が多いでしょうか」
……あのアンリーナさん? あなたがそれ言っちゃあかんでしょ……。
「昼はさっき宿で食べたし、さっさと行こうぜキング! ニャハー、新しく出来たデカイ店ってだけでワクワクするぜ!」
猫耳フードをかぶったクロが興奮気味に辺りをキョロキョロ見回し、グイグイ俺のジャージを引っ張ってくる。
まるで体育館のような広い施設に入って大興奮で走りだそうとする子供みたいな顔をしているが、あなた自分が伝統ある魔法の国セレスティアのお姫様という高尚なお身分なんだって覚えていますか……。
「…………いい香りがしますマスター……」
俺の後ろで無表情ながらもつまらなそうにしていたバニー娘アプティが、急に鼻をすんすんさせ始め俺のケツを鷲掴みしてくる。
おっふ……なんでこの子いつも俺のケツ掴むの……クロみたくジャージを引っ張るなら分かるんだが……。
「あ、あの私、噂の『美の伝道師』さんのお店に行ってみたいのですが……」
左隣りにいた宿の娘ロゼリィが上目遣いで恥ずかしそうに言ってくる。
そう、それ! そういう可愛いのもっとちょうだい。
さすがロゼリィ、俺のパーティーで唯一のまともなメンバーだ。
俺がエロ本とか見ようとしたらSSSSランク黒鬼に変化するけど。
「よ~し、それぞれ興味あるお店が違うみたいだし~ここからは各自行動~! 適当な時間で社長の元に集合~ってことでよろしく~あっはは~」
「もっと美を追求してあなたにふさわしい女性にならないと……!」
「師匠、最上階には愛する若い男女にとても都合のいい宿泊施設があるんです! 今から私のコネでお部屋をキープしてきます!」
「お、魔晶石アイテムのパーツ屋あるンじゃねぇか! 行こうぜキング!」
「……マスター、良い香りがあちらから……」
水着魔女ラビコが館内パンフレットを全員に配ると、受け取ったメンバーが何やら喚き蜘蛛の子散らすように四方に散っていった。
「……え、どういうこと……」
呆けた顔で俺がつぶやくが、すでにメンバーは人混みに紛れ索敵範囲外。
この人とすれ違うのですら厳しい大混雑の巨大商業施設の中から、少ないヒントを頼りにメンバー全員探し当てて回収するゲームが突然スタート……。
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影木とふ




