五百六十二話 俺の毎朝の風景に新勢力が様
「……」
「──ぃてくれないかのぅ」
「…………」
「──らわは王の側にいたいのだ。そしてその覇道の助力を──」
……おはよう諸君。俺だ。
なにやら騒がしいので目が覚めたが、そこには見慣れた天井。ああ、そういや昨日ついに開通した魔晶列車で王都ペルセフォスからソルートンに帰ってきたんだっけ。
港街ソルートンにある宿ジゼリィ=アゼリィ。俺出資で増改築した際に、ついでに俺の部屋も作った。
飛車輪レースで一攫千金を得、結構なお金を投資したのでそこそこ広い部屋。
といってもここは異世界なので、こちらに来る前にかじりついていたパソコンや、携帯端末等の便利な家電製品があるわけではない。
広い部屋は作った、さて存在しない家電製品以外に部屋に置きたい物……と俺はしばし考えたが特に思い浮かばず、ソファーにテーブル、そして今俺が寝ているベッドぐらいしか目立った物はない。
そのベッドから見える風景は宿の見慣れた天井のはずなのだが、今朝は左右にふるふると柔らかそうな膨らみが四つ見える。はて……
「話にならんのぅ……おお、王よ目覚めたか。よかった、なんとか言ってやって欲しい。このキツネの女め、王を優しく起こしてあげようとしたら、無言で邪魔をしてくるのだ。なんなのだ、この無言無表情女は」
ぼーっとする頭を振り脳を回転させ始めるが、なんだか見慣れない女性が俺の顔を覗き込んできた。
誰……?
「……おはようございますマスター。申し訳ありません、私の力不足で雑音を消すことが出来ませんでした……」
見慣れない女性と対峙するように向かいにいたバニー娘。おお、こちらは分かるぞ、俺のアプティさんだ。
「……おはよう、アプティ。……えーっと、ああ、アインエッセリオさんか。髪下ろすと別人に見えました。後ろで結んでいるのも勇ましくて素敵でしたが、こっちは優しい感じがしていいですね。とてもかわいいと思います」
見慣れたバニー娘アプティの頭を撫で、むくっと上半身を起こす。
何か知らないが、ベッドの上で俺を挟むようにアプティとアインエッセリオさんが睨み合っている。何事。
そういや昨日、宴会後にアインエッセリオさんが訪れたんだっけ……。
話し合いで宿の協力を得られ、とりあえず夜も遅かったので彼女には部屋で休んでもらった。
俺たちも王都ペルセフォスから帰ってすぐだったので、疲れているせいか皆すぐに寝たんだよな。
そして現在、という感じか。
アインエッセリオさんは普段動きの邪魔にならないようになのか、長めの髪を後ろでまとめていた。
しかし今は髪を自然な形で下ろしている。一瞬どこの美人さんが現れたんだ、とびっくりしたぞ。
「ほっほ、さすがはわらわの王。女心というものをよく理解しているのぅ。やはり普段からモテモテの男は違うのぅ」
俺のセリフにアインエッセリオさんがちょっと恥ずかしそうに体をくねらせる。
……うーん、これは俺だけの秘密にしようかと思ったのだが、やはり同じ魂を持つ紳士諸君には情報を公開するので共感してほしい。
今のアインエッセリオさんは普段付けているゴツイ鉤爪や鎧などは装備しておらず、上はうっすいシャツ一枚に下はおパンツ様のみという……わかるだろう諸君。
そう──超エロい。
もう一度、超エロい。
あと、俺はモテモテではない。ラビコなんか確実に俺を突っつくと何か面白いことを言うおもちゃだと思っている。絶対にもてあそばれている。
「……ああ、そうだ。アインエッセリオさんにはどうしても守ってもらいたいことがあるのですが……その、自分が蒸気モンスターである、ということを公言したり、それらしい行動、例えば蒸気を出すような行動は控えてもらいたいです。どうしても僕等人間は蒸気モンスターというものに恐怖を抱くので、混乱を避ける意味でご協力をお願いしたいです」
アインエッセリオさんが俺の信頼を得ようと側にいるのは問題ないのだが、やはり蒸気モンスターであるという情報はまだ伏せていたい。
共存を目指すと言いつつ矛盾なのだが、普通の人にとってまだ蒸気モンスターってのは恐怖の対象でしかない。時期が早すぎる。
まずは宿のメンバーの理解者だけで共存の真似事をしてみようかと。
アインエッセリオさんが蒸気モンスターであるということはジゼリィさんやローエンさん、イケメンボイス兄さんや正社員五人娘、このあたりまでで情報は止めておいている。
これは先輩にあたるアプティに実践してもらっていて、効果はバツグン。
元からアプティさんは俺以外とはあまり喋らないので問題ないが、蒸気をモワモワ出すところを見られると、それは誤魔化しようがない。
まぁ……場所がお風呂で湯気があったりとか、何度か上手く誤魔化した場面はあったが……。
「よいぞ。わらわの王の命、守らずして信頼は得られないからのぅ」
よかった、アインエッセリオさんが了承してくれたぞ。
愛犬ベスがベッスベッス吼えて俺の膝に乗っかってきたが、やはりアインエッセリオさんに対して警戒は無し。うん、大丈夫だろう。
そして今更の疑問なんだが、なんで俺の部屋にアプティとアインエッセリオさんが普通にいるの?
アプティさんは、まぁその、毎回いるからいいんだけども、アインエッセリオさんはどうして俺の部屋に普通にいるんだよ。
ドアの鍵は……多分かかっている。それでもアプティさんはどうやってか部屋に入ってくるが、アインエッセリオさんはどうやって、って窓開いてる……。
昨日は疲れていたのと、ここ二階だからと油断していたか。
うーん、明日からはキチンと窓の鍵しめないとな……でも開けておけば毎朝アインエッセリオさんの超エロんバディが見られるのか……うーん、人として締めるべきか、男として開けておくべきか……。
「…………チラ……」
なんかさっきからバニー娘アプティさんが無言で自分の髪を後ろでまとめてチラと俺を見て、すぐに髪をほどいて無表情ながらもドヤ顔で見てくるのだが……なんですかね、あれ。
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影木とふ




