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五十六話 空飛ぶ車輪の姫様 3


 狙うは8の字の真ん中に来たタイミング。



 あいつ等の周回スピードは覚えた、群れの数はだいたい五~十か。一撃か二発目で落とせる。


 いくぞ、ベス。せぇのっ!


「撃て!」




 ベスが勢い良く前足を振り、かまいたちが発生。俺が狙った場所に見事に命中。


「どうだ!」


 狙った一団の群れの数は五匹。蒸気が周囲に噴出し、全て蒸発。



 よし、いける! 五匹なら一撃、それ以上なら二発で計算だ。


「ベス、右から落としていくぞ! 撃て!!」


「ベスッ!」



 倒れて動けない女性を守り、固定砲台のごとくベス砲発射。


 近寄って来る群れを次々に蒸発させていく。十、二十……五十、八十……百。くそ……こいつ等何匹いるんだ。


 倒しても倒しても次々と襲ってくる紅い鮫。


 先が見えない戦いは精神が切れたらアウトだ。気張るぞ。ベスもまだ大丈夫、だが考えろ……どうにかこの状況を突破しないと。




「……ぅ……く。はぁっ、はぁっ……貴様等……」


 女性が重い動きで体を起こした。よかった、気を取り戻したようだ。


「…………そうか……すまない。私を守ってくれていたのか。はぁっ、はぁっ……ぐぅ」


「辛いだろうが動いてくれ、そうだ、さっきの車輪はもう使えないのか? このままじゃジリ貧だ」


 ベスに指示を出しながらさっきの空飛ぶ車輪を指した。


「はぁっ……はぁっ、だいぶ壊れてしまったが、飛ぶぐらいならいける。上で皆がまだ戦っているはずだ、そこまで行ければ……」


 上? 上ってどこだよ。




 背後から地鳴りと激しい揺れがきた。まるで地面を削り進んでいるような音。



「これは……」


「くっ! 特異型だ! さっきの巨大な奴がまた来るぞ! 乗れ!」


 靄の向こうから聞こえてくる破壊音。


 木を砕き、地面を削りながら突き進んで来る轟音が近づいて来る。俺は慌ててベスを抱え、女性の操る車輪に乗った。


「うわわっわわ!」


 目の前に巨大な口が現れ、ものすごい蒸気を出しながら巨大鮫が地面を抉りながら突進して来た。間一髪、俺達を乗せた車輪が宙を舞い、巨大鮫の上空に退避。


「こ、怖っ! なんだよあれ!」


「ベルメシャークというやつだ。動く物、体温のある者を見ると襲ってくる化け物。過去にいくつもの村と住民を喰い尽くされている。普段は海の遥か向こうの雲の中から出てこないのだが、とある時期になると降りてきて人や動物を襲う。いつもはなんとか海の上で撃退出来ていたのだが、今年は特異型の数が多くいて街の上空まで攻め込まれて……くそ!」


 村一つ食い尽くしたってかい。なんておっかねぇんだよ。


 小型の鮫が右から突進してきた。


「ベス! 撃て!!」


 ベスが前足を振り、かまいたちで群れごと撃破。くそ、キリがねぇ。


 巨大な奴は大きな岩にぶつかり、今は止まっている。



「ほう、いい指示だ……お前達何者か。私の攻撃を防ぎ、ベルメシャークを易々と撃破する。そんな無名な街の住民など聞いたことがないぞ」


 今は状況打破が優先だ。俺は質問には答えず、思いつき作戦を伝える。




「…………なるほど。了解した。君はいい軍師になれる」



 一匹ずつじゃだめ、群れごとでも効果無し。ならばもっと大量に巻き込むのみ。


 大型のが動かないうちに小型の雑魚をどうにかしたい。


「あなたのこの飛ぶ車輪があるから出来る作戦です。頼りにしていますよ!」



「ふむ……いいだろう! 強くて知恵のある男は好みだぞ」



 強いのはうちの愛犬のほう……です。











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