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14 異世界転生したら魔晶列車が開通したんだが

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五百五十六話 魔晶列車ソルートン延伸 9 ついに到着ソルートンとお尻パニック様

『さぁ来ましたよ! ついにソルートンに魔晶列車が到着します! そしてこの第一号の記念列車にお乗りになられているのは、あのサーズ=ペルセフォス様! この後開かれる式典の為にわざわざ来ていただけたという──』



 王都ペルセフォス駅を昨日の午前十一時過ぎに出発してから二十五時間後、俺たちの乗った魔晶列車がついにソルートンの街へ到着。


 正面方向を見ると巨大な建物が出来ていて、それが新設されたソルートン駅だそう。



「うわ、なんか駅のホームが人だかりですげぇことになってんぞ……」


 ゆっくりと列車が速度を落とし、建物内のホームへと入っていく。


 規模は全く違うが、雰囲気がペルセフォス王都の駅っぽい。なんというか、ド直球で言うとソルートンっぽくない新しいシャレオツな建物。


 駅と巨大商業施設が一緒になっているそうで、サーズ姫様と商売人アンリーナが苦労して入店してもらえるお店を集めてくれたそうだ。


 まさかソルートンにこんな巨大商業施設が出来るとは思わなんだ。開店がこのあと開かれる式典直後だそうで、しばらくは大混雑だろうから空いた頃にのんびり見て回りたいなぁ。


 新しいショッピングセンターか、うーむ、ちょっとワクワクしてきたぞ。


 ……それでエロ本屋さんはあるの? え、ない? 普通の健全本屋だけ? ああ、そう……。



「す、すごいです……まるで王都みたいな雰囲気……こ、ここ、本当にソルートンなんですよね!?」


 ソルートンに駅があるという見慣れない不思議な景色に、生粋のソルートンっ子であるロゼリィも嬉しさ半分困惑半分といった感じ。


 左右のホームにとんでもない人が集まっていて、イベント司会のお姉さんが流暢なトークで場を盛り上げ、集まった皆が笑顔で青を基調としたペルセフォス国旗を振っている。


 事前にソルートンにサーズ姫様が来る、と宣伝してあったそう。そりゃあこの国の王族であられるサーズ姫様見たさに人は集まるわな。


 前回は体験型騎士教室に突然講師としてサーズ姫様が来て大混乱になったが、それを踏まえ今回は前回以上の大量の警備を雇い集まった人をコントロールしている感じ。



「あっはは~列車でソルートンに帰ってくるって不思議~。どうだい社長~自分が成したことの凄さを実感出来たかな~?」


 水着魔女ラビコがニヤニヤと笑い俺の横に来る。


「成したとか言われてもなぁ……俺は成り行きで行動したにすぎないし、実際頑張ったのって協力してくれた周囲にいた人だったりパーティーメンバーのみんなだったり、サーズ姫様にアンリーナだったりで……」


「はは、たしかに列車開通に向けて動き回ったのは我々だが、それも全て君がいたからこそなんだぞ」


 俺はせっかく異世界に来れたんだから、この世界の全てが見たいとワガママ言って周りのみんなを巻き込んで動いていただけなんだがなぁと頭をかいていたら、背後からバッチリ式典用の衣装を着たサーズ姫様が現れた。


 うっへぇとんでもなく美しい……異世界に来てから判明した性癖だが、俺って制服物に弱いっぽいからサーズ姫様のこの格好は……くる……。


「まず誰かが動かねば、周りはついてこない。一人で立ち上がったとしても、周囲の者の心を動かせるほどの想いや信頼がなければ後に続かない。そして悲しい話、人の想いや信頼は変わりやすく、これを維持することがどれほど大変か……」


 サーズ姫様が俺を指し、そしてベス、ラビコ、ロゼリィ、アプティ、アンリーナにクロ、さらに後ろにいるハイラにアーリーガル、最後にサーズ姫様自身に指を持っていく。


「さぁ、今君の周りにはどれほどの人がいるだろうか。皆、君のことを信頼したからこそここにいて、君が動いたからこそ、私たちも行動した」


 騎士であるハイラとアーリーガルもちょっと豪華な式典用と思われる制服と鎧を纏い、うんうんと頷いている。


「もっと世界に君の功績を発信したいところだが、君を守るためにそれは出来ないからな。なんとももどかしいよ。その代わりといっては何だが昨夜、英雄である君を個人的に盛大に祝うつもりだったのだが……まぁ今後チャンスはいくらでもある、次回を期待してくれ」


 昨夜盛大に祝うつもりだった? はて……ああ、そういやサーズ姫様は今回のソルートン行きの列車に乗るために連日徹夜でお仕事をされ、さすがに昨日は早めにお休みになられてしまったからな。


 何かイベント的なことを考えてくれていたが、寝てしまったということだろうか。


 それはありがたいお話だが、サーズ姫様ご自身の体調を優先、でお願いします。


 つか、お疲れのサーズ姫様とあの変なクマさんズがバッティングしなくて本当に良かったと思う。



「あぁ~? 次回なんてねぇよクソ変態姫が~……」


「おっと、もう降りねばならんな。ラビィコールも式典には参加してもらう約束だ、準備を頼むぞ、はは」


 サーズ姫様の発言に水着魔女ラビコがつっかかろうとするが、列車が停まりホームからお出迎えの楽器演奏が鳴り始めた。


「……ここからはラビィコールと元勇者パーティーの功績を讃える式典になる。魔晶列車延伸のきっかけになった英雄である君の名前が出ないのは許して欲しい。この式典に集まってくれた人の多くの感謝が君に向くことはないかもしれないが、どうか誇って欲しい、君が示した勇気は確実に世界を動かし、多くの人の命を救ったのだということを。側にいた我々は知っている、覚えている、そして忘れはしない。今はサーズ=ペルセフォス個人の感謝を君に──」


 優しく微笑んだサーズ姫様がゆっくりと歩みを進め、目を閉じ俺の右頬に唇をつけてくる。


 う、うわっ……!


「では私も! 先生がいたからこそ私は今ここにいるんです。飛車輪レースで先生に貰った勇気と想いは、私の弱かった心と人生を変えてくれました。ありがとうございます先生。おかげで私は思ったことを何でも普通に言えるようになりましたし、行動出来るようになりました。遠慮なんてもうしません。だってこれが先生に貰った、いえ、私の勇者様にもらった勇気という力なのですから」


 サーズ姫様の後ろにひかえていた騎士ハイラも俺に瞬時に近付き、左頬にキスをしてくる。


 ちょ……!


 つかハイラさん、あれ以降弾けて思うがままに行動し過ぎとかいうのは、言っちゃいけない言葉ですかね。いやまぁ自分に素直に、我慢せずに行動することはとても良いことだとは思うけども……。


 それを受け止める俺の苦労が限界突破しているのはまぁその、俺の懐が狭いとかいう、いわゆる努力不足なのかな……うーん、頑張ります……。



「て、てめぇら~! 何を勝手に私の男を誘惑してんだよ! さっさと式典終えて帰りやがれ……」



「あ、じゃあ僕もかな」



 サーズ姫様とハイラの動きをポカンと見ていたロゼリィにクロにアンリーナだったが、水着魔女ラビコがすぐに我に返り二人を俺から引き離す。


 直後、誰もいなくなった俺の前にイケメン騎士アーリーガルが笑顔で現れた。


 え……お、おいウソだろ……。この流れで僕もかな、とか……やめろよ、冗談でもやめろよ! 


 でもこいつ、長い髪のカツラかぶせて女性物の服着てもらえれば結構な美人さんに見えそう。俺の目にそういう外部フィルターかければいけるか……って俺は何を妄想してんだ! 


 男のキスはNO! 差別とかじゃなくて、感謝の気持ちを伝える手段は他にもあるよねっていう俺の提案!



 女性陣全員が振り返り、見つめ合う俺とアーリーガルの動きを固唾を飲んで見守っている。


 どうしたんだよラビコ! ほけーっと見ていないで、早くこの男女どっちもOK爽やかお尻スキーも止めてくれよ!


「…………」


 今まで全く興味なさそうにしていた無表情バニー娘アプティが、チラとアーリーガルを見る。


 た、頼むぞアプティ……ラビコが動かない今、頼れるのは君だけなんだ!



「あれ、どうしたんだいそんなに構えて? 僕だって君に感謝しているんだよ。君と出会わなければ、毎日淡々と裏舞台での仕事をこなすだけのつまらない人生を送っていただろうからね」


 アーリーガルが超イケメン笑顔でゆっくりと俺に近付いてくる……や、やめろ……おいやめろ!


 俺はお前を殴りたくないんだ、分かってくれ……俺に拳を振り上げさせないでくれ……!


 俺の肩にイケメンの手が置かれ、耳元に顔を近付けてくる危険因子アーリーガル=パフォーマ。


 ──だめだ、俺はもう親友を殴るしか生き残る術はない……せーのっ──


「君と知り合えたおかげで、今まで以上にサーズ様にお近付きになれる機会が増えてね、もう毎日がとても充実しているよ。ほら、ささやかだけど僕からのお礼と、約束のもう一枚の写真だよ」


 大きく振りかぶり、俺の十六年間生きてきた全ての経験を右拳に込めたところでリーガルが小さい声でぼそっと呟き、充填率百パーセントの俺の右手に何かの紙をそっと握らせてくる。


 なんだ、これ?


「──ふぉぉををおおおお!」


 大親友アーリーガル=パフォーマ君が俺の右手に託してきたものは、一枚の写真。


 なんともアングルの凝ったサーズ姫様を背後からとらえたもので、それはそれはお尻の形が服の上からでもよーーく分かる奇跡のベストショット。


 どれぐらいすごいか、今の俺の魂の叫びで全てを察してくれ。見せろ? 馬鹿言うな、文字で伝えたので充分だろ。あとは紳士諸君が無限の想像力でどうにかしてくれ。



「ありがとうアーリーガル=パフォーマ、君こそ俺の親友……俺の心の友!」


 俺は涙を流し親友に抱きつく。


「そ、そんな大げさな……でも頼むから誰にも見せないで……」


「う~わっ……これ変態姫のお尻写真じゃん。リーガルさ~うちの社長と知り合って明らかに悪影響受けてない~? 顔は相当良いんだから~真面目にしていればいっくらでもモテるだろうにさ~。ほ~い変態姫、バカ二人が組んだ結果がこれだとさ~あっはは~」


 男の友情に感謝し、貰った写真をポッケに入れようとしたところ、その写真を横から引き抜かれる。


 水着魔女ラビコがすぐ真横にいて、写真をじっくり見た後、呆れ顔でサーズ姫様に放り投げる。



 ──終わった……俺の異世界物語がここに潰える──



「ふむ、さすが我が部下アーリーガル=パフォーマ、とてもいい構図じゃないか。それはいいのだが、ちょっとおかしくないだろうか」


 サーズ姫様が受け取った写真を見て不思議そうな顔をする。


「なぜ君は私のキスより、私のお尻が写った写真のほうに大興奮しているのだろうか。逆、じゃないだろうか。いや私の写真で興奮してもらえるのは嬉しいのだが、なんというか納得出来ないというか……」


 不満そうに頬を膨らませ、サーズ姫様がぐいぐい体を俺に押し付けてくる。


 え、いやその何と言いますか……写真は夜に一人で盛り上がれる貢ぎ物になるというか、このあとずっと楽しめる永久機関といいますか……。



 一応この騒動は窓から離れた位置で、外から見えない状況なのだが、列車のドアが開いているのに一向にサーズ姫様が降りてこないことに駅のホームがざわつき始めてきた。


 

 なんでだ……ソルートンに魔晶列車が到着し、サーズ姫様が一番で降りるという歴史的な瞬間の直前にどうしてこんな揉め事が起きた……。



「……マスター、私のほうが形、良いかと……」


 サーズ姫様のお尻写真を横から無表情にじーっと見ていたバニー娘アプティが、超不満そうに俺を見てくる。


 え、何、この状況でなんでアプティさん怒ってんの……。



 もう分からない、誰か早くネクストステージって雑に画面出して、場面転換お願いします……。






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