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14 異世界転生したら魔晶列車が開通したんだが

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五百五十二話 魔晶列車ソルートン延伸 5 俺と親友リーガルのお尻で余裕人生と水色のアイツ様

「すでに列車は王都ペルセフォスを出てしまいましたが、今回の旅程を軽くまとめておきます」



 ちょっと騒動はあったが、お昼にカフェ ジゼリィ=アゼリィ特製お弁当とバニー娘アプティの入れてくれた極上の紅茶を振る舞い荒ぶる女神たちを鎮め平和な世界に戻ることに成功。


 紳士諸君もいつか異世界に来るのだろうし、ぜひ覚えておこう。餌付けは効果大、であると。



「こちらが魔晶列車延伸記念パンフレットです。いままであった王都ペルセフォス駅からフォレステイ駅の路線、そして新たに延伸された新しい路線ソルートンまでの簡易地図が載っています。途中にも何駅か新設されていまして、特急で止まる駅は赤で記されています」


 商売人アンリーナが頭をプレゼンモードに切り替えたらしく、キリッとした目で皆にパンフレットを配り説明。


 うん、こういう説明はアンリーナに任せるのが一番。よく通る声でわかりやすく簡潔にまとめてくれるからな。


 渡されたパンフレットを見ると、確かにフォレステイ駅からソルートンまでの線路が足されている。すっげぇなぁ、本当に列車通ったんだ。


 そして間にも駅を何個か作ったのか。



「見てみて社長~。私たちが毎回寄る宿場の目の前にも駅が出来てるよ~。これでいつでもあの豆スープを飲みにいけるね~あっはは~」


 パンフレットを見ていた水着魔女ラビコが楽しそうに俺に体をぶつけてきて、簡易地図の一点を指す。


 っつ……なんでぶつかってくるんだ。言われてそこを見ると、確かに馬車で行く時に毎回休憩で止まる宿場付近に駅が出来ているな。


 もう意地で毎回そこで同じものを食べていたが、それがラビコの言う豆のスープ。ダシの味をほとんど感じないスープにブヨブヨの豆が入っているあれ。


 想像がつかない? そうだな、簡単に言うとお湯にお好みの薄味の豆を数粒、推奨は五粒、それを浮かせてみてくれ、見事完成だ。数分で君でも作れる一品、ぜひ挑戦してみてほしい。


 そのお湯……スープにクソ固いパンが付いて十Gだったかな。日本感覚千円のセット。懐かしいなぁ、そうかもう二度と命を繋ぐためだけに真顔で食わなくてもいいのか。



 その後サーズ姫様が追加で説明してくれたが、新設した駅の職員さんなどに馬車を生業にしていた人を多く起用したそうだ。


 馬車で毎日のようにそのルートを走っていたベテランさんの土地勘と情報は、線路管理や観光客の案内役としてどうしても欲しかったらしい。


 馬車の会社や、それでも馬車のお仕事を続けたい人には補助金を毎月出すそう。


 さらに新しい駅から馬車で観光地へ移動したい人も多いだろうと、駅前に馬車の拠点を作ったとか。



 駅には警備として多くの冒険者を雇い、安全の確保を図ったんだと。当然国から派遣された騎士も常駐するらしいが。




「今回の第一号記念列車は特急となっていますので、ソルートンに到着するのは普通列車のおおよそ半分、二十五時間での到着を予定しています。具体的に言いますと出発が午前十一時過ぎでしたので、明日のお昼過ぎにはソルートンに着いている計算になりますわね」


 アンリーナがパンフレットのソルートン駅を指して言う。


 あれ、記憶ではペルセフォス王都からフォレステイまでが特急で二十四時間だったような。ってことはフォレステイからソルートンまでって、たった一時間なのかよ。


 馬車だと半日かかっていたってのに……こりゃあ確かにソルートン・王都間はだいぶ気軽に行ける距離になるな。



 大まかな説明を受けた後、サーズ姫様たちはソルートン駅についてからの式典の準備やら書類の整理があるとかで貸し切りになっている一両前の個室へ。


 俺たちは最後尾の車両の部屋でのんびり。ラビコはちょっと眠そう。つか酒飲んでたしな……とこれはチャンスか。



 俺は女性陣を刺激しないように、こっそりと部屋を抜け出す。


 愛犬ベスはロゼリィの膝の上でスヤスヤ……ってクソ……! なんと羨ましい……あとでロゼリィのぬくもりが残ったベスの足舐めさせてもらうか。



 最後尾含め三両は王族用と警備の騎士たち用にと貸し切りになっている。


 車両間の扉を開け通路へ。



「……リーガル、ちょっといいか」


「え? 僕かい? どうしたんだい」


 イケメン隠密騎士アーリーガルがサーズ姫様の個室の扉前で立ち警備、これはちょうどいいと俺はアーリーガルに小声で話しかけカメラを渡す。


「……分かるなリーガル、この意味が」


「カメラ? え、いやさっぱりなんだけど……」


 ちっ、この鈍感野郎め……あんまりストレートに言うとバレたとき俺にまで被害がくる。ここはやんわりと童貞の心を伝えよう。


「いいかリーガル、お前が見ている景色は今この瞬間しか見ることが出来ないSSランクの輝きなんだ。もしかしたらその行為は他人には理解してもらえないかもしれない、でも俺たちは魂が繋がった親友、俺はお前の味方だ。つまり盗撮……いや形はどうあれ美しいものは美しいし、その素晴らしい情熱ビジョンをカメラで撮ることは欲というものを飛び越えた美の形なんだ。そう、この旅行でしか残せない二人の熱くて大切な秘密の夜の思い出にしたい。協力……してくれないかな」


 どうだ、伝わったろ。


 いっつもこいつだけサーズ姫様のお尻見てズルいっての。俺も見たいんだよ。

 

 お前はいつもサーズ姫様の背後に陣取ってんだから、こっそりお尻撮るぐらいちょろいだろ。頼むぜ、最高に熱いローアングルの写真を撮って、二人の夜のソロカーニバルに捧げる極上の奉納品にしようぜ。


「夜の……ああ、そうか……もう気が付いているんだね……分かった。君はもう覚悟を決めているんだ、ならば僕もそれに応えよう。今夜のことはしっかり記録に残し、お二人の大切な思い出にして欲しい。……正直僕はあのお姿での行為は理解出来ないけど、尊敬するお二人が望むのならば全力でフォローするし、綺麗な思い出になるようなアートな構図になるよう撮らせてもらうよ。あ、いや三人分かな」


 俺がサーズ姫様のエロいお尻の写真を想像しちょっと興奮気味にカメラを渡すと、リーガルが全てを理解したような顔になり静かに微笑む。


 おお、分かってくれたか。さすが熱き魂の童貞仲間。


 アートな構図? いや全力でエロく撮ってきて欲しいんだけど。枚数は三人分じゃなくて、俺とお前の二人分な。頼むぜ。




「ふんふん~ふふふーん」


 列車は順調に進み、今は夕食後のまったりとした時間。


 ちなみに夕食もカフェ ジゼリィ=アゼリィ製のレシピを使ったお料理が出てきた。もう安心の味。きっちりレシピを再現してもらえれば、どこだろうとある程度の味の保証はできそうだな。


 オリジナルの手の込んだ料理はさすがにイケボ兄さんや弟のシュレドがいないと無理だけど、簡易メニューならば現地の料理人を雇えばお店開けそうだな。



「キングご機嫌だな。やっぱ地元ソルートンに列車が開通して嬉しいのか」


 あれから俺はとても心穏やかに笑顔で過ごし、女性陣に何を言われようが仏の心で優しい言葉を諭すように返した。


 心の余裕。ああ、なんと素晴らしい気持ちなのか。このあと手下リーガルからサーズ姫様のお尻写真集を受け取る……エロが俺を待っている。今なら童貞マジきもいとか路上で言われても、アイドルのような微笑みを返せる。


「クロ、細かな理由は知らないが、生まれ育った国を出るという決断は辛かっただろう。でも大丈夫、俺がお前の全ての面倒を見る。安心して悩み、ゆっくりでいい、きちんと自分の言葉で答えを出すんだぞ」


 猫耳フードのクロがニヤニヤと話しかけてきたが、俺は父親のような見守る心でクロの頭をなでる。


「ニャッ……! な、なンだよ急に! って、え、いいのか? キングが一生アタシの面倒見てくれンのかよ。やったぜ!」


 目を見開き顔を赤らめたクロが俺に抱きついてくる。ははは、よく分からんが、お金ならあるぞ。



「あ、ず、ずるいです! わ、私も、その、面倒を見てもらうお願いをしてもいいです……か?」


 宿の娘ロゼリィも興奮気味にすり寄ってくる。宿に住まわせてもらっていたり、面倒を見てもらっているのは俺のほうじゃないかな。


「ははは、ロゼリィにはお世話になっているからなぁ。俺は一生をかけて恩を返していくし、ロゼリィを守っていくぞ」


「い、一生……! 分かりました! あなたに守ってもらえるなんて、こんな嬉しい言葉はないです……!」


 ロゼリィが俺に左腕に抱きついてくるが、俺多分ずっとソルートンの宿で暮らすだろうし、ロゼリィとは一生の付き合いになるかもしれないよなぁ。



「……マスター、私とは島で結婚を……」


 バニー娘アプティが急に背後に現れ、ボソっと無表情に言う。


 最近アプティよくこれ言うんだが、島で結婚てどういう意味なの。アプティの正体は人間じゃなくて蒸気モンスターだけど、文化違いで言葉足らずな、英語を直訳レベルの喋りなんだろうか。


「ははは、あの島にはまたアプティと一緒に行かないとな。メイドの子たちも待っているし、俺好みの本屋も出来るらしいしな」


「……はい、私はマスターとずっと一緒、です」


 アプティが無表情ながらもちょっと嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる。


 ああでもあの島にはきもい銀の妖狐がいるんだよな……あいつさえいなければ、もっと気軽に島にいけるんだが。案内役として島出身のアプティは必須。



「はぁ~? なにこの流れ~。さっきからどったの社長~、なんか変なものでも飲んだ~? いっつも余裕なさそうにザ・童貞って感じでキョドってんのに~何その余裕な大人みたいな態度~」


 水着魔女ラビコがしかめっ面で俺の頭をポンポン叩いてくる。


 余裕、そう今の俺は余裕の塊な男なのさ。なにせこの後サーズ姫様のお尻写真集が手に入るからな。


「まさか、俺はまだ子供だよ。これからも俺は心から尊敬するラビコに習い、いつかはお前を守れる立派な大人になってみせるよ。ラビコ、出来たらずっと俺の側にいてくれないか。お前から学ぶことが、まだまだたくさんあるんだ」


 ニッコリと笑い俺はラビコを見る。多分背景にリーガルから借りたイケメンキラキラエフェクトが貼られ、特殊効果で歯が光っていると思う。


「ちょ、何……その笑顔はずるいって~……。い、言われなくても社長の側にはずっといるつもりだけどさ~」


 俺マジでお前のこと尊敬してんだぞ。頭良いし魔法使えるし、何よりどんなときも相手の真正面に構えるスタイルが格好いい。


 

 しかしすごいな俺、このあとリーガル厳選サーズ姫様お尻写真集がもらえると思うだけでこの余裕。


 やはり人生にエロは必要である。




「君たちはとても仲がいいな、はは。さて、少し早いが私は寝かせてもらうよ。しばらくまともに寝ていなかった身でな、明日はソルートンで大事な式典があるしな」


「うぅ……今なら私も先生に優しい笑顔を向けてもらえる……けど我慢ですぅ、このあと私はそれ以上の行為が出来ますしぃ……で、では私も休ませていただきますぅ」


 俺たちのじゃれ合いをちょっと離れたところで腕組みで見ていたサーズ姫様が、部屋内の時計を見てさっと部屋を出ていこうとする。


 それに続きハイラもチラチラ俺を見ながら、後ろ髪をひかれる感じで部屋を出ていく。


 あれ、てっきりこういうときはハイラもドカンと抱きついてくるかと思ってた。ああ、さすがにハイラも休みを取るために仕事詰めていたし、疲れているんだろう。


「あれめっずらし~。間に入ってこないんだ~ま、まともに寝ていないのは私も同じかな~ふあぁ……変態が社長にちょっかいかけないで寝るんなら安心して私も寝ようかな~」


 それを見た水着魔女ラビコも大きなあくびをし、ロイヤル部屋のベッドに潜り込む。


 サーズ姫様が休みを取るために、ラビコもお仕事を手伝って徹夜続きだったみたいだしな……。



「私もお仕事で疲労がたまっていまして……申し訳ないのですが早めに休ませていただきますね」


 おや、商売人アンリーナまでも早め就寝か。


 アンリーナも今回の為にあっちこち動き回っていたみたいだし、疲れているんだろう。




 時刻は二十二時過ぎ、まぁ寝てもいい時間。俺も早くリーガルからお尻写真受け取りたいし。




 今回はサーズ姫様が部屋を分けて取っていてくれて、最後尾のロイヤル部屋にはロゼリィ、ラビコ、アプティ、クロ。


 一個前の車両の特別室にサーズ姫様にハイラ、その隣の個室にアンリーナ、その横が俺と愛犬ベスにリーガルの男二人部屋という配分になっている。


 てっきりみんな一緒なのかと思っていたが、身分、男女別、これが普通だよな。とてもしっくりくる。



「俺も寝るか……ってさっきからアーリーガルがいねぇな。部屋にもいないし。まだ写真チャンス狙ってんのかな」


 そういやさっきからイケメン隠密騎士リーガルがいない。


 男部屋にも戻ってきていないし、もしやサーズ姫様が寝たところを狙って極上のエロ写真を撮ろうとしているのやも。


 それマジでやったら一発でクビになるレベルの犯罪だが……まぁ、俺はそんな指示はしていない。彼の趣味であって、俺に止める権利もないし、結果いい写真が撮れたら親友である俺にもこっそり分けてくれよな、と。




「────」


「──────」


「……こねぇなリーガル。しゃーねぇ、寝るか……」


 深夜近くまで待ってみたが、単独犯罪者は来ない。


 なんだよ、撮れたてホヤホヤな写真でお祭りを開いてから寝ようかと思っていたのに……ちぇ。



「……──いい夢を──……」


 ……ん? どこからか声が……ってリーガルか?


 なんだこの煙と弱い光……あれ、まぶたが重い……眠気に……抵抗出来ない……──





「……──」

「──────ぅぅ、あれ……俺いつのまにか寝てた……」


 なんか薬と魔法の二段階で眠らされたような感覚。


 両方の強制睡眠を目の力で強引に突破し、まぶたをこじ開ける。



「……なっ……僕の二重睡眠をたった五分で……信じられない……いや、君ならこうでないと、かな」


 暗闇に目が慣れ声の主を探すが、なにやらでかい巨体が……なんだこれ。



 ……可愛いらしい曲線で形作られ、色は水色。


 綺麗なガラスの瞳がチャーミングで、額に『3』と刻まれた着ぐるみクマさん……ってこいつソルートンの砂浜にいたやつじゃ……なんで王都発ソルートン行きの記念第一号列車にこいつが……!


 式典の後の相当な厳戒態勢での出発だったってのに、どうやってこの巨体で不審がられずに乗り込めたんだよ!






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― 新着の感想 ―
[一言]  五百五十ニ話にて。 >もう二度と命を繋ぐためだけに真顔で食わなくてもいいのか。  鉄道でそこのお店のお料理革命が起こってくれたら良いんですがねw >ベスの足舐めさせてもらうか。  判るよ…
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