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14 異世界転生したら魔晶列車が開通したんだが

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五百四十九話 魔晶列車ソルートン延伸 2 出発魔晶列車とソルートン人口推移様

「王都ペルセフォス発ソルートン行き第一号魔晶列車、発車!」



 午前十一時過ぎ、国王であられるフォウティア様の言葉が合図となり、発車の笛の音が駅に鳴り響く。


 足元で重い車輪が動き出すガコンという音が鳴り、ゆっくりと魔晶列車が前へ進み始める。


 ホームに待機していた楽団による演奏が始まり、周囲の人から見送りの拍手が巻き起こり始めた。



「すごいなぁ、やっぱり列車が開通するって大きな出来事なんだな」


 午前の時間帯を臨時休業にしてまで見送りに来てくれていたカフェ ジゼリィ=アゼリィスタッフに車内から手を振りつつ、俺がボソっと漏らす。


 まぁ元いた日本でだって、新たな駅が建造中です、とか全国区のニュースで連日特集組まれていたしな。ましてや国の中心である王都絡みの路線、注目度も高いか。


「もちろんだ。私も、まさか自分が生きている間に魔晶列車の開通に立ち会えるとは思わなかったよ」


 サーズ姫様が俺の隣に来て、窓の外に手を振り微笑む。


「ま~ね~社長が考えている以上に大きな出来事だと思うよ~。だって魔晶列車の駅があるかないか、でその街の人口が変わってくるぐらいだしね~。商売しかり、安全面しかり、自分がこれから独立して生きていこうと考えた時、魔晶列車が通じているかで拠点を決める人はかなり多いかな~あっはは~」


 列車窓際に設置されているテーブルに酒瓶を並べ、カフェ ジゼリィ=アゼリィで作ってもらった特製弁当をアテに一杯いきつつラビコがご機嫌に笑……っていつの間に酒買ったんだこの魔女は。


 そしてもう飲んでるし。



 ああ、魔晶列車開通に合わせ、カフェ ジゼリィ=アゼリィ製の列車開通記念ロゴ入り駅弁をペルセフォス王都駅で販売するんだ。


 今回だけの特別で、今頃王都駅で販売が始まっているはず。


 この記念の第一号列車に乗った人には無料で全員に配られていて、早い人はラビコのようにお昼ごはんとして食べ始めているのではないだろうか。


 ソルートン開通記念ということで、ソルートンから食材を取り寄せ作られたもので、海鮮系が主役のお弁当となっている。


 正直、魔晶列車で食べられるご飯は味の無い固いパンを辛いスープで無理やり胃に流し込む、みたいなものだったので、ご飯が楽しみな列車旅ってのは安心感が違うよな。



「……そうですわね。嫌な話ですが新たにお店を開こうとしたとき、売上を考え人口を、働くスタッフの身の安全を考え警備面を、と考えるとどうしても基準として船や魔晶列車などの交通機関がある場所、を優先して選びがちになってしまいますわね……」


 商売人アンリーナもお弁当を開け、中身の確認をし手帳に書かれている何かと照らし合わせながら食べ始める。


 このお弁当企画はアンリーナも関わっているからな。お仕事として、最終確認ってとこだろうか。


 つかみんなお腹すいてるのか、ラビコとアンリーナの動きを見た他の人もお弁当を開け始めたし。


 じゃあ俺も食うか。紅茶の神、アプティに良い感じの紅茶をお願いしてみよう。なんかカフェでいつも持ち歩いているマイ紅茶缶の補給をしていたみたいだし。



 俺はせっかく運良く異世界に来れたのだから、この世界の全てを見たいと思い、それを目標に動いている。


 だって元いた世界じゃ絶対に見れなかった龍が普通にいたり、ゲームやアニメでしかいない存在であるエルフなんて種族までいたんだぞ。そりゃあワクワクするし、出来たら全部見たいと思うだろ。


 俺の、いや、元いた世界の全人類永遠の憧れ、魔法なんてものもある世界なんだぜ俺は使えないけど。



 だが、全てが見たいとか言いつつも、俺が今までに行けた場所は船か魔晶列車で行けるところが中心。


 火の国デゼルケーノに行こうとしたとき水着魔女ラビコに脅されたことがあるが、魔晶列車が通じていない内陸は基本的に危険、だそうだ。


 駅前で行われた式典で国王であられるフォウティア様もおっしゃっていたが、魔晶列車が走る場所は一定の安全性が確保が出来なければ不可能なもの。


 それは地形だったりモンスターだったり治安だったり、場所によって理由は異なるが、この世界に住む一般人の常識として交通機関が通じている街はある程度安全、と考えるらしい。


 

「アタシも冒険者として放浪してあっちこち見たがよ、やっぱ駅がある街ってのは栄えているもンだぜ。交通機関のない内陸から徒歩で死ぬ思いで移動してよ、ボロッボロになりながら魔晶列車の駅がある街に着いたら、あぁーやっとまともな街だー! とか思うからな、ニャッハハ」


 猫耳フードのクロが実体験っぽい話をするが、なんとなく分かる話かも。


 運良く馬車があればいいけど、交通機関が無いルートは歩くしかないからなぁ。しかもモンスターとかいるし……。


 ペルセフォス王都で少し見かけたぐらいで、ほとんど普及していない魔晶石をエネルギーにした自動車なんてものは一応あるが、本体代に維持費を考えると個人で入手するのは無理ゲークラス。


 王都ぐらいでしか見かけない理由は高い、だけじゃなく、王都以外では平らな道路がほとんど無いってのが大きいかね。



「ソルートンという街には元々港があったが、それ以上の知名度も無く人口は緩やかに減っている、ぐらいのものだった。そこに五年前あたりから有名なルナリアの勇者の出身地というネームバリューが加わり人口の減少が止まりはじめ、最近になってそれまでの緩やかな数値グラフはなんだったんだ、という曲線が出来上がった」


 サーズ姫様がソルートン人口推移と書かれた紙を見せてくれるが、緩やかな上下を繰り返していた線が、とある時点からバカが描いたグラフ、みたいな急上昇をしている。


 なんだこれ。


「師匠、小さな港街にある宿ジゼリィ=アゼリィの売上が、名だたる一流企業を凌ぐ勢いで上がり続けている理由はそこにあるのです。とある時期を境にソルートンの人口が一気に増えだした、そう、以前お見せしたソルートンにある魔晶石を販売しているローズ=ハイドランジェのお店の売上データを覚えていますでしょうか」


 お弁当のチェックを終えた商売人アンリーナも一枚の紙を見せてくる。


 ああそういや王都に滞在しているときに見せられたような。横ばいだった売上が、最近になって急上昇したってやつ。


「見てください師匠、サーズ様がお持ちのソルートンの人口の推移と我がローズ=ハイドランジェのお店の売上の推移を」


 サーズ姫様の持つ紙とアンリーナの持つ紙がゆっくり重ねられ……あれ、このバカが描いた曲線がほぼ一致する……。


 正確には人口の増加の曲線に少し遅れて、釣られるように売上の曲線が上昇しているな。


「ここにさらに、以前ソルートンのローエン様より資料としてご提供いただいたデータを」


 アンリーナがさらにもう一枚の紙を取り出し重ねる。


 ソルートンジゼリィ=アゼリィ本店売上推移、と書かれた紙。それがアンリーナの持つローズ=ハイドランジェの売上推移と途中までほぼピッタリ合い、とある地点からジゼリィ=アゼリィの曲線が直角みたいなエグイ角度で真上に向かっていっている。


「商売とは、買ってくださる人がいなければ成り立ちません。極端に言ってしまえば、人口=売上、となるでしょうか」


 ……それは分かるが、ほんと、バカが描いた線だぞこれ。



「以前言いかけていたソルートンの人口増加の話。これを見れば一目瞭然だろうか。そしてこれらのデータに共通する、とある地点がある」


 サーズ姫様が三枚の紙の曲線の変化が現れる一点を指す。


「あのルナリアの勇者の活躍が世界に届いた頃がここ、そしてその数年後、今現在が……ここだ」


 少しふわっと線が持ち上がり、そのちょっと先でその線が爆発的に伸びだす。



「さぁ何が起きたと思うかな……と、はは、こんなつまらない質問はないか。……君だ。ソルートンという港街に君が現れたんだ」







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