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五十五話 空飛ぶ車輪の姫様 2


「戻れベス! それ以上はダメだ! あなたも落ち着いて! 俺は本当に下の街、ソルートンの住民だ!」




 俺の声に反応したベスがさっと転進して戻って来る。


 女性のほうを向き、警戒の姿勢は解いていないが。



 女性は砕けた槍を握り車輪に乗ったままフワッと上空に留まり、キッと鋭い視線を俺達に向けてきた。


「犬に、男……」


 表情こそ平然としているが、その負った傷の深さは相当のものと思われる。


 あの高さから落ちて動けていることがすごいぐらいだ。



「……!」


 周囲が急に暗くなり、何かが上空からこちらに向かって来る音が聞こえ出した。


 轟音と共に現れたそれは蒸気を口から吹き出し、このあいだ見たアーレッドドラゴンとかいう奴よりさらに巨体の空を飛ぶ鮫。


 その開いた巨大な口は俺達とその周囲の地面まるごと持っていけそうな大きさ。



「空飛ぶ紅い鮫……!?」


 俺が驚いていると、その女性は車輪を急降下させ俺とベスを掴み空へ舞い上がる。


「うわわわわ! と、飛んでる……!」


 巨大な鮫は口を開いたまま地面に激突、さっき俺達がいた場所を食い進んでいく。


 鮫の大きさは百メートルは超えている。まるで大きな船みたいな感じ。山の形が変わるぞ、これ。



「た、助かった……ありがとう」


「……はぁっ……はぁっ……ここまでか、無念……」


 女性が力なく崩れ落ち、俺は慌てて抱き支えた。近くで見るとその体に負っている傷の多さが、生々しく分かる。気絶する寸前まで戦っていたのか。


 浮いていた車輪がゆっくり降下。主の指示が無くなり、待機モードってやつか。


 いきなり落下しなくて助かった。



「ベスッ!」


 ベスが上空に向かって吼えた。前足で引っかく動作をし、かまいたちみたいのが真上に飛んで行く。


 上空で爆発が起き、蒸気が吹き上がる。数匹の空飛ぶ鮫の群れがその爆発を見て方向を変えていく。さっきの大型のよりはかなり小さい、それでも五メートルはあるだろうか。


「やるぞ、ベス。空から降ってきたこの女の人を助けたら、絶対天空のなんたら剣とか貰えるイベントな気がする。異世界に来たからには空に浮かぶ城の一つもあんだろ! いや、あってくれ!」


 俺の熱のこもった演説にベスも頷いてくれた気がするので、戦闘開始といくか。



 さっきの船みたいにでっかい奴はいない。上空にいるのは小型タイプのみ。こいつ等はベスの攻撃で倒せていたし、いけるだろ。


「いいかベス、俺が右手で指した方向に、撃て、と言ったらさっきの前足の攻撃を出すんだ」


 小型のは動きが早く、数がいたので散発で撃っても効果は薄い。一匹ずつ倒すのではなく、なるべく多く巻き込むように撃って効率を上げる。



 俺達の上空に小型の鮫が集まって、攻撃するタイミングをうかがっている。見ていると、数匹が群れになり先頭の個体の動きに後続が合わせるように8の字で周回している。そういう習性か。


「なら、余計に当てやすい。いくぞ、ベス」

「ベスッ!」



 俺はベスの頭を撫で、一番近い群れに向けて右腕を向けた。狙うは先頭のちょっと後ろあたり。ベスのかまいたちが飛んで行く速度も考えて、こんなもんか。


 ベスも俺の右手の動きに合わせ、指示を待っている。


 そう、もう少し……せーのっ……!




「撃て!!」











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