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14 異世界転生したら魔晶列車が開通したんだが

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五百四十五話 サーズ姫様からの説明と暴走系女子集結様

「やぁ、王都に滞在をお願いしておいて、大したおもてなしも出来ず申し訳なかった。来週のソルートン行き第一号記念列車にはなんとか乗れそうで安心だよ」



 王都に滞在して一週間、せっかく長くいるのだからと支店であるカフェ ジゼリィ=アゼリィの現状把握と今後の展開の会議を連日行っていた。



 この王都支店は、魔晶石と化粧品販売で世界的に有名な企業ローズ=ハイドランジェと共同で運営しているお店。


 ローズ=ハイドランジェ側から派遣されているナルアージュ=シートさんという女性がいて、彼女は経営からパティシエまで難なくこなすというウルトラハイパー優秀ウーマン。


 ジゼリィ=アゼリィ側の代表は店長を任せたシュレドという、一見筋肉モリモリイケメン格闘家。


 彼はソルートンにいる神の料理人イケメンボイス兄さんの弟で、料理の腕は超一流。


 しかしお店の経営に回す頭は無く、本当にナルアージュさんがいてくれて良かったと思う。


 週報告と月報告をナルアージュさんとシュレドで交代で担当してもらっているのだが、的確に綺麗な字で送ってくれるナルアージュさんの回だとスムーズに事務処理が終わるのに対し、謎難読文字と解読不能イラストで送りつけてくるシュレドの回はみんなで集まって書かれている内容を相談しないと処理が終わらない。


 兄であるイケボ兄さんが解読をしてくれるからなんとかなっているけど、出来たらシュレドさんよ、イラストではなく文字で情報を伝える努力をお願いしたい。


 いやまぁ代わりに料理のスキルがグラフ突き抜けるぐらい高いからいいんだけども……。




「うわ来たよ変態姫が~。せっかくここまで平和な日々だったってのに~。てっきり毎日のように夜に襲撃してきて、変態の冠を背負うにふさわしい姿を見せつけられるかと思っていたけど~」


 お城前に作ったカフェ ジゼリィ=アゼリィの三階にある関係者用個室での会議も終わり、そろそろお昼にしようかと思っていたら、この国のお姫様であられるサーズ姫様がド緊張気味の接客スタッフさんに案内されフラっと部屋に入ってきた。


 お昼休みにランチを楽しもうとこのお店に来てくれたのだろう。


 俺の右隣りに座っていた水着魔女ラビコがムスっとした顔で反応したが、サーズ姫様が背負っているのはこの国の冠ネームのペルセフォスであって、変態なんて冠を背負ってはいないだろ。


 まぁラビコはこの国の王と同じ権力を与えられている身分だし、サーズ姫様とも仲が良いから言える挨拶代わりみたいな言葉なんだろうけど。



 サーズ姫様はそれはもうとんでもないクラスのお美人様で、態度仕草言葉使い、放つオーラにいたるまで全て隙きがなく『ザ・お姫様』。


 その上頭も良いし戦闘スキルも高いし日々の鍛錬も怠らないという、まさに人の上に立つにふさわしいお方。格好いいよなぁ、本当にいつも尊敬しています。


 でもちょっとたまに、極稀にではあるがラビコに乗せられて暴走して俺に跨りたいとか言ってくることがあるが、それはラビコに煽られての行動だろうし、いつもの素晴らしい人物像からしたら微粒子単位のブレだろう。


 人間誰しもストレスは貯まるし、極稀に起こす一点の行動を指しての変態扱いはおかしいってもんである。


 つまり、俺が極稀に起こすエロ本が欲しい行動も人間誰しもが起こすストレス起因のことであって、決して変態的行動ではないってことだ。うん。



 そういえばこの個室の横にサーズ姫様自ら出資して下さり作った王族専用の部屋があるのだが、そこにズラっと並べられたピンクと水色のクマさんのぬいぐるみ、あれ可愛いよな。


 でもあのぬいぐるみどこかで見覚えが……あれを人と同じ大きさに膨らませると……う、なんか頭が痛い! はやくこの思考を止めて封印しないと大変なことになる予感……!



「すまないな、英雄である君には毎日のように私が夜のお世話をするつもりだったのだが……」


「な~にがお世話だ。てめぇの変態的私欲をうちの社長で発散させようとしていただけだろ~? そういうのを襲撃っていうんだっての~」


 突如サーズ姫様が現れ驚いたが、ラビコがいつもの調子で対応。


 俺と宿の娘ロゼリィ、会議に参加していたシュレドとナルアージュさんがビシっと姿勢を正すも、興味なさげなバニー娘アプティは無表情に紅茶を優雅にすすり、猫耳フードのクロは大股開きでランチは何にしようかメニューを熟読中。


 後ろの二人さ、もうちょっとこう態度とかさ……うーん、アプティさんはサーズ姫様に強者として認められているし、クロは魔法の国セレスティアのお姫様で同格とすればラフな態度も問題ないんだろうけども……。



「お待たせいたしました先生! というか私、この一週間超頑張りました!」


 サーズ姫様が俺に近寄ろうとしたところを水着魔女ラビコが止め、二人が揉めている横から真っ直ぐに俺に飛びかかってきた機影が、ってハイラか。そういや一週間本当におとなしかったな。


「前倒しで出来る過酷で達成感のない点数稼ぎの肉体業務とつまらない無意味な事務処理をもうそれは必死にこなし、来週の先生との新婚旅行でたっぷり可愛がってもらえると思い、毎晩の襲撃を我慢し……」


 サーズ姫様の前で達成感のない点数稼ぎの業務とか、つまらない事務処理とか言うな。お前は騎士の模範とも言える、ペルセフォスの今年の代表騎士になったんだろうが。


 来週の新婚旅行って謎ワードは……なんだろうか。俺の理解を超えた言葉で解説が出来なく申し訳ない。


「あー! よく考えたらこういう業務を全部無視して毎日先生にベッタリしていれば、一週間たっぷり先生と肉体的快楽を楽しんだうえに騎士も晴れてクビなれるという願ったり叶ったりの状況だったのに! 失敗しました!」


 ハイラが俺の腰にまとわりつき、頭をグリグリ押し付けながら吼える。


 いやあのハイラさんさ、冗談とはいえ主であるサーズ姫様の前でそういう過激な発言はよそうよ。ペルセフォス王都のお昼休みって無礼講が通じる時間帯なのかな。




「お昼休みも短いので仕切り直させていただこう。まずは二週間も王都に滞在して欲しいとお願いしておきながら一週間たいしたおもてなしも出来なかったことを謝罪する」


 とりあえず睨み合っていたラビコとサーズ姫様を止め、ハイラを腰から引きはがした。

 

 すぐにサーズ姫様が正気に戻り頭を下げてきたが、王族様が街の人である俺なんかに頭を下げないでくださいよ。お城に宿泊用の部屋を用意してもらえているだけで十分なおもてなしですって。


「い、いえ、お願いですから俺なんかに頭を下げないでください。それにサーズ姫様が来週のために必死にお仕事を詰めているんだなというのは分かっていますから」


「……すまない。しかし君はどんなに偉業を成し遂げようが驕り高ぶらず、いつもの君なんだな。もっとこう、英雄なのだからと大きく見返りを求めてもいいと思うのだが……」


 俺が必死に頭を上げるようお願いするが、当のサーズ姫様は不思議そうに俺を見てくる。


 いや、俺別に偉業なんて成していないし英雄ってなんのお話でしょうか。


「例えば女性を求めたり……おっと、それは今度個人的に話そう」


 サーズ姫様が俺の手を握ろうとするが、ラビコが舌打ちをしながらその手を振り払う。



「さてこの一週間、王都の雰囲気を見てもらい感じたと思うが、今とても大きな話題で王都は盛り上がりをみせている」


 頭を切り替えたっぽいサーズ姫様が、持ってきていたカバンから数枚の紙を取り出す。


 見ると王都を歩いていたら見かけたソルートン行きの魔晶列車開通を知らせるポスターや、王都からソルートンへ魔晶列車で行く旅のプランが書かれた宣伝のチラシなど。


「そう、今ペルセフォス王都はついに開通するソルートン行きの魔晶列車の話題で大変な盛り上がりをみせている」


 先週冒険者の国からの帰り道にペルセフォス王都に寄ったときにサーズ姫様から二週間の滞在をお願いされ、その理由が魔晶列車のソルートン開通だったな。詳しい話は聞いていないが。


「魔晶列車のソルートン開通。分かりやすいきっかけはこのカフェ ジゼリィ=アゼリィが出来たあたりだろう。王都民からくる国への要望に『ソルートンに安全に行ける手段を確保して欲しい』というものが爆発的に増えたんだ」


 俺たちも何度も行き来しているから分かるが、王都からソルートンに行こうとすると、魔晶列車の東の終点であるフォレステイという街で列車を降り、そこからは馬車で十二時間というかなり過酷な行程を踏むことになる。


 夜をまたぐ行程はモンスターや野盗、さらには蒸気モンスターの被害を受けることもあるという命懸けになってしまう。


 なので普通は早朝にフォレステイから馬車に乗れるよう調整し、半日後の夕方近くにソルートンに到着するプランとなる。


 正直馬車での長時間移動は腰に来るし、安全性が高いとは言いにくい。


 初めて俺がソルートンから王都に行こうとしたら、ラビコが傭兵を雇うなりの自衛が必要とか言っていたよな。しかしいくら傭兵を雇おうが、蒸気モンスターを相手に出来るレベルの冒険者は少ない。


「やはりフォレステイからの移動手段が徒歩か馬車しかないのが不満、という意見が多くてな。調べてみると、野盗やモンスターの被害に会った例も数多く見つかった。対策として道中に騎士の派遣も考えたのだが、なにせ範囲が広大すぎてな……騎士の数も足りない状況で漠然と等間隔に置くのも効果的とも言えず……」


 馬車で十二時間ってどれぐらいの距離か分からないが、その距離の道を毎日警備しようとしたらどれだけの人数の騎士が必要なのだろうか。それは現実的じゃあないよな。


「そこで出てきたのが馬車より安全で早く辿り着ける魔晶列車延伸の話だ。遥か昔、国家事業としてペルセフォス全土に魔晶列車を通そうとしていたとき、フォレステイという街まで線路を通した段階で予算が尽きてしまったそうでな……。急遽追加予算でフォレステイからソルートンに向けて線路を伸ばしたが、それも半分ぐらいまでで打ち切られてしまった」


 そういえば以前ラビコがそのへんの話もしていたな。


「その、言いにくい話ではあるが……当時のソルートンという街はそれといった特徴のない港街で人口も少なく、どちらかというと船での移動が主で、そこまで陸路の整備に予算をかける必要性を見いだせず……ということだったそうだ」


 魔晶列車を作ったのがいつの話か知らないが、ラビコから聞くにソルートンという街がそこそこ有名になったのは十年前にルナリアの勇者さんが旅立って以降とか言っていたような。ほんと、最近だよな。


 それ以前の無名だったころのソルートンってどういう街だったんだろうか。


「だが今は違う。王都民から毎日のようにソルートンに行ける交通手段の要望が届いている。これほどの数国民の要望が集まったのは例がなく、これは応えないといけない、と私はすぐに動いた。予算の確保も通り、計画も紙面上順調に進んでいたのだが、やはり実際にやってみると予想以上にお金がかかってしまい計画の見直しを……と思っていたところに一人の女性が援助を申し出てきたんだ」


 まぁ、列車を通すってものすごい予算かかりそうだもんな……。



「お話の途中に失礼します。その説明に私も参加してよろしいでしょうか」



「……おっと、なんとタイミングのいい。入ってきてくれ。その女性、が彼女さ」


 サーズ姫様のお話の途中部屋のドアを軽くノックし、小柄な女性がにこやかな笑顔で入ってきた。



「ありがとうございますサーズ様、正式な挨拶は後ほど。少々失礼しまして短時間プライベートタイムを……お久しぶりです師匠! アンリーナ=ハイドランジェ、大体のお仕事を片付けて戻ってきました! ヌッフオオオ! これですこれ、師匠のたくましい太ももの筋肉……! これを味わうために私は激務をこなしたのです!」


 軽く咳払いをした途端態度を変え、目を魔物のように怪しく光らせ俺の太ももに顔を突っ込んできた女性。


 ちょ……なにこの人……ってアンリーナか! 確かに久しぶり……だけどこの状況で本性出すのはやめろ! サーズ姫様がすげぇ苦笑いをしているぞ。


「少し……もう少し勇気を出せば師匠の師匠をこの手に……! アンリーナ=ハイドランジェ、時と場所と状況をわきまえず私欲を満たさせていただき……」


 小柄な体にお金のかかっている質の良いスーツを着た女性、アンリーナが人間の首ってそんなに伸びたっけ? ってぐらいグィンと首を伸ばし俺の股間を襲おうとする。



「……マスターを襲うモンスター、と認識します……」


 モンスターになりかけていたアンリーナの顔面を掴み止めたのは、バニー娘アプティさん。さすが俺のアプティさんやで!


「ぐっ……この……無表情バカ力女っ……! いつもいつも私と師匠の愛の時間の邪魔を……」


 アンリーナが必死に抵抗しアプティの手をはずそうとするが、戦闘特化種族アプティさん相手に商売人の細腕では勝ち目ないですよ。



 つかアンリーナは何をしにタイミング良くここに来たんだよ。


 アプティにモンスター判定される為じゃあないだろ……。


 ハイラといいアンリーナといい、暴走系女子が二人揃うと俺の疲労と気苦労が三倍増四倍増なんですが……。







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― 新着の感想 ―
[気になる点] あれ?、メインヒロイン(指輪の銃士)が勢揃いするのって何気に初めてなんじゃ… 気のせいか?
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