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五百三十七話 お出迎えハイラとカップルメニュー様

「はい到着ペルセフォス~。いや~やっぱりペルセフォスは安心するわ~あっはは~」



 翌日の夜二十時、俺たちの乗った魔晶列車が王都ペルセフォス駅へと入っていく。


 冒険者の国の王都ヘイムダルト駅を出発したのが昨日の午後十四時過ぎだったので、一日ちょっとかかったのか。


 その間のご飯は魔晶列車内の売店の固くて味のないパンと辛いスープしか食べていないので、早くカフェジゼリィ=アゼリィで人間のご飯が食べたい……。


 冒頭ラビコが言っていたが、ペルセフォスは地元感があるのと、やはり食べ慣れた美味しいご飯が確実にあるってのが安心に繋がるんだと思う。



 列車内はあれからも揉め事が絶えなかったが、ロゼリィの新武器『白い粉』がラビコたちの暴走を抑えてくれて助かった。


 見せるだけで相手が警戒モードになって動きが止まるって、平和で素晴らしい武器じゃあないか。



「とりあえずお風呂行って、すぐにお城の前にあるカフェジゼリィ=アゼリィで豪遊しよ……」


「おかえりなさい先生! お城のいつもの客室を抑えてありますので、寝る場所はばっちりです! 先生と私は同じベッドでいいですよね?」


 王都ペルセフォス駅に魔晶列車が止まり、荷物を持ってホームに降りた瞬間、右腕に何かが勢いよく絡みついてきた。


 な、なんだこの右腕に伝わる柔らかい物は……ペルセフォスの騎士の制服を着て、ポニーテールを揺らしている女性……ってハイラか!? 


「セレスティア方面から来たってことは、魔法の国セレスティアに行っていたんですか? そのあたりのお話を、朝まで裸で抱き合いつつねっとり語って欲しいですぅ」


 ハ、ハイラだ……魔晶列車からペルセフォス駅のホームに降りたらハイラが抱きついてきた……え、なんでここにいるんだ……?


 誰か時間教えた? 


「なんとなく今日のこの時間に来そうな愛の予感がビンビンしていたので、見送り用チケット買ってホームで待っていました!」


 ニコニコと笑いハイラが言うが、ウソだろおい……携帯端末もSNSも無い異世界でどうやって正確に俺たちが魔晶列車で今日の夜二十時に九番ホームに来るって分かるんだよ。


 あれか、もしかして昨日急に通信機能付き携帯端末が発明されて数時間で全世界に普及でもしたのか? じゃないとありえねぇだろ……なんか脳内に不思議なレーダーでも積んでんのか?


 そういやペルセフォス王都に来たら、毎回ハイラが飛車輪で飛んできて上空にかっさらわれた記憶。


 でもあれは俺達が駅を出たらどこからか壁を蹴る音が聞こえてきて、ちょっと遅れてハイラが来ていたはず。しかし今回はすでに駅のホームで待ち構えていた……って進化してんじゃん。


「あれ? なんか先生から知らない女の匂いがしますぅ……二人」


 ウソだろおい……二人ってクラリオさんとケルベロスのことか? そこまで分かるのかよ! なんなのこの子……! 


 さすがのラビコも驚いた顔をしている。



「や、やあハイラ……お出迎えありがとう……なんで分かったのかとかは怖いから聞かないよ……」


「私は先生の優秀な愛人なんですよ? これぐらいは当たり前です!」


 あ、そう……まぁもうこれがハイラなんだろうし深く考えるのはよそう。


 それにこれはハイラ特有の能力かもしれないし、他と違うからと抑え込むのではなく、むしろ褒めてぐいぐい伸ばしてあげるべき才能なのではないかな。違うかな。うーん。


 とりあえずお風呂&ご飯タイムで冷静になろう。



 駅を出ようと歩いていたら例の「ラビコ様に道を!」部隊がドカドカやってきて、逆に注目を浴びて混雑する儀式を経てお城近くにある温泉施設へ。


「はぁーいいお湯でしたね先生! あれ、先生もしかして少し筋肉付けました? 腕周りがちょっとたくましくなっていますぅ」


 お仕事上がりだと言うハイラもなぜかついてきて、施設の共用スペースでダレている俺の腕をぐいぐい触ってくる。うーん、ハイラの髪からいい香りが……。


 別に鍛えていないから、そんな変わっていないと思うが……俺も少しは異世界で揉まれてたくましくなったのかね。


「あ、あの……私も触っていいですか……」


 お風呂上がりのロゼリィがモジモジと上目遣い。え、触ってって俺の腕か? 別に構わんけど、筋力なんてほぼないぞ?


「ふふ、確かに最初に出会ったころに比べたら少し筋肉がついていて頼もしいです」


 ロゼリィが俺の二の腕を触って笑顔。


 それを見たラビコ、クロ、アプティも俺の腕を触ろうと手を伸ばしてくる。いや、あの何人も同時に俺の腕に手を置かれると、周りからは何かの誓いの儀式に見えていないですかね……。




「さぁ~皆さんお待ちかねのご飯にしよ~。そう、このペルセフォス王都には社長が作ってくれたカフェジゼリィ=アゼリィがあるからね~」


 お風呂上がり、さっぱりして機嫌が良くなったラビコたちを連れ、お城の目の前にあるカフェジゼリィ=アゼリィを目指し歩く。


 いや、お店は俺が作ったわけじゃないんだが……。


「ほぅ、ハイラインが『もうすぐ先生が来ます!』とか不思議なことを言ってお城の客室の使用許可を求めてきたり、猛ダッシュで駅に向かって行ったから何事かと思ったが……本当に君たちが来ていたのか」


 もうすぐカフェに着く、というところで上空から声が。


「う~~わっ……ちっ、ハイラだけでも面倒なのに、変態姫まで出てきたよ……」


 上空から飛車輪に乗った女性がゆっくり降りてくるのを、ラビコが舌打ちで迎える。


 うわわ、この国のお姫様であられるサーズ姫様まで出てきてしまったぞ……。こんな時間なのに申し訳ない……。


 時刻は夜二十一時過ぎ。カフェにはまだまだ多くの行列が出来ていて、以前行われた飛車輪レースで優勝し今年の代表騎士になったハイラ、ペルセフォス王と同権力を持つ大魔法使いラビコ、さらにそこにお姫様であられるサーズ姫様まで登場し、周囲がざわつき始める。


「やぁ、ソルートンではお世話になったな。また君に会えて嬉しいよ。なんというか、あまりにこちらの都合の良いタイミングで来てくれたので、ちょっと驚いているよ。はは」


 制服に身を包んだサーズ姫様が優しく笑みを浮かべ、俺に握手を求めてくる。うっへ、相変わらずとんでもないお美人様だ……。


 サーズ姫様の言う都合の良いタイミングってのは意味が分からないが、これ以上ここで有名人が揃って立ち話をするのは色々都合が悪そうです。


「お手を失礼します! ラビコも来い! お店のオーナーの娘であるロゼリィの特権使って三階の個室を開けてもらう!」


 ラビコやハイラにサーズ姫様をひと目見たいと周囲に人が集まり、かなりの騒ぎになってきたので、俺は慌ててサーズ姫様とラビコの手をつかみお店へ急ぐ。


 このメンバーだと、この二人を押さえておけばなんとかなる!


「おっと、個室か。ならば連れ込む場所を間違えていないか? 駅の向こうにあった派手な色のホテルにまた連れ込んでもいいんだぞ? はは」


「はぁ~? ちょっと社長~私をホテルの個室に連れ込むのはいいけど、なんでこの変態と一緒なのさ~!」


 無礼に対する非難はあとで受け付けます……ってホテルの個室じゃねぇって! お二人の目の前にあるカフェジゼリィ=アゼリィの三階にある関係者用の個室に行こうって話ですって!


 そういや王都にこのカフェを作ったとき、サーズ姫様とハイラにピンクのホテルへ連れ込まれそうになった記憶が……。


 

「だ、旦那! 旦那じゃないっすか!! 嬉しいっす! わざわざ来てくれたんすか! しかもまたラビコ姉さんにサーズ様と手をつないで来店って、やっぱ旦那はこの国の覇者っすね!」


 混雑するお店に入り、店員さんにこのお店の責任者兼シェフのシュレドを呼んでもらう。


 相変わらずのイケメン顔で筋肉ボディのシュレドが飛んできて、すぐに三階を案内してくれた。手をつないで来店じゃねぇよ、トラブル回避のために怒られるの覚悟で強引に連れ込んだんだよ。


「やぁシェフシュレド殿、お昼も来たが、夕食もお世話になるよ。カップルコースなどなかったかな? 今回はそれをお願いしたい」


「わ、分かりました! 今すぐお作りします!」


 サーズ姫様が慣れた感じでシュレドに注文。あら、お昼も来てくれていたのか。


 週報告ではなく、月報告のほうでカフェのメニュー表をソルートン本店に送ってもらっているが、カフェジゼリィ=アゼリィにカップルコースなんて無いはずだぞ……。



 なんでか緊急参戦で二人ほどメンバーが増えたが、ご飯はみんなで笑顔で食べたほうが美味しいに決まっている。サーズ姫様たちも夕飯はまだみたいだし、ご一緒させてもらおう。


 トラブルなく笑顔で夕飯を。


「ぶっはは~カップルだって~残念ながらこっちは夫婦なんだよね~。指輪も貰えていないザコ姫は下がってろっつ~の、あっはは~」


「はは、それは彼からもらった感謝の指輪だろう? それなら私も同じ意味の込められた二連の指輪型ネックレスをもらっている。ラビィコールと私の立ち位置は同じはずだが?」


「そうです! ラビコ様たちの指輪にはなんの効力もありません! ソルートンの浜辺で欲のままに求め合う熱い夜のロマンスを過ごした私たちこそが夫婦であり愛人であって……」


 トラブルなく笑顔で。


「はぁ~? じゃあキスは~? 私もうしたし~!」


 トラブルなく笑顔……


「残念ですラビコ様……私もすでに先生とは吸い合うような熱い口づけを……」


 トラブル……


「頬にはソルートンの別れ際にしたが……遠慮せず口にいけば良かったな。いや今からすれば問題ない。どれ少年、私と……」


 トラ……


「お待たせしやした! サーズ様ご注文の創作料理『カップルたちの宴』です! このスプーンに乗った一口サイズの料理をお互いに食べさせ合うっていうスタイルっす!」


 ニッコニコ笑顔のシュレドが短時間で作り上げた、本来メニューに無いカップルメニューがテーブルに広げられる。ナイスタイミングだシュレド、おかげでサーズ姫様たちの揉め事が止まった。


 ふむ、確かに料理スキルの高さが伺える手のこんだ創作料理だが、お前は宿屋連合なんだからサーズ姫様のリクエストに応えるじゃなくて、オーナーの娘であるロゼリィを応援、じゃないのか?


 まぁ……サーズ姫様にお世話になっているのは確か。それは事実。


 見ると、ラビコ、ロゼリィ、クロ、アプティ、ハイラにサーズ姫様用にと、人数分のスプーンに盛られた料理がある。


 そういやシュレド、カップルたちの宴とか言っていたな。サーズ姫様用にだけじゃなく、揉めないように全員分作ってくれたのか。



 うんシュレド、気を使ってくれてありがとう……なんだけど、これ女性側は一回ずつだけど、男側の俺だけ六人分食うやつじゃん。



 あの、俺への気遣いは……?







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