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五十三話 天空から降るもの様

 


 その日は朝から空を黒い雲が覆い、時折り雷が鳴る。


 そんな日だった。





「雪……」


 俺は朝、宿屋の客室から見える窓を見て驚いた。外が白いのだ。


 慌てて二階から一階に降り、外に飛び出る。


「うはー! 雪だ雪! 寒くもないのに雪だ!」


 普通雪は気温が三度を下回ると雨が雪へと変わり、地上に降ってくる。


 なので日本にいるときは天気予報を見て、最低気温が三度を下回っていると雪を覚悟したものだ。


「うへー暖かいのに雪とかなんか気持ち悪いけど、白銀の世界だ!」


 今の気温は十五度は下回ってはいないはず。


 それなのに雪が降り積もり、周囲は白銀の世界になっていた。さすが異世界、俺の常識が通用しないぜ。この気温で溶けない雪とかすごいな、これぞ異世界! 




「雪ですねー。たまにこういう変な雪が降るんですよ。年に一回あるかないかぐらいですけど」


 ロゼリィが受付から出てきて俺の横に並び、傘をさしてくれた。


「俺はこの地域には長く住んでいなかったから知らないんだが、雪ってこういう溶けないものなの?」


 溶けない雪とかいかにも異世界で、俺は少し興奮していた。


「いえ、冬の寒い日には普通に冷たい雪が降りますよ。こういう溶けない雪は珍しいですね」


 なんだ、ロゼリィからしてもこの雪はおかしいものなのか。


 気になって手で触ってみると、さすがに体温では雪は溶けていく。変な雪だな。



「……………ん」


 雷が時折り鳴っていて耳に響くのだが、なんというか不自然に鳴るものなんだな。


 連続で鳴ったり、風切り音みたいな音が聞こえたり。黒い雲と時折り不自然に鳴り光る雷に溶けない雪、変な天気だな。




 せっかく雪なので、俺はベスを連れ散歩へ出かける。ベスが嬉しそうに走り回っているなぁ。


「ベスーあんまはしゃぐなよー」


 宿屋で傘を借り、寒くもないのに雪というちょっと不思議な空間を歩く。


 いいねぇ、なんか異世界来てる感じだ。みんな雪かきに追われ大変そうにしている。馬車が動けなくなっていたり、ちと被害が出るのは綺麗ごとではないんだが。



「あれ、あの鎧……」


 街中に普段見かけない馬に乗った人を多く見かける。


 白系の鎧や服を纏い、武器を携帯している。なんとなく見覚えがあるなと思ったが、あれ前俺のマントを届けてくれたリーガルが着ている装備にカラーリングが似ているな。ってことは国の騎士ってことか。



 ベスが時折り空を見上げ、じーっと動かなくなる。


「どうした、ベス。あ、やっぱ雷怖いのか」


 無敵のベスといえど、雷は怖いのか。俺は笑顔でベス抱え上げ、頬ずりする。


 こうするとベスは安心するんだ。



「ベスッ!!」


 ベスが空から視線を外さず、警戒の咆哮。


「どうした、ベス。雷でも落ちるのか?」


 俺は体制を低くし、気休めの雷対策をする。



 音が鳴ったので見上げると、流れ星。


「え、流れ星ってかい。なんとも異世界ってのは、なんでもありなんだなぁ」


 遥か上空の黒雲から白い光りがかなりの速度で移動し、消える。


 それが数回続き、今度は白い飛行機雲みたいなものが黒い雲から飛び出し、消える。


「飛行機雲……? この世界に飛行機ってあるのか?」


 このあいだ歴史の本みたいのを読んだが、この世界の文化はそこまで進んでいるとは思えない。


 「また光った、かなり激しい光だ」


 黒い雲の中で光が発生し、今まで一番大きな雷が鳴る。うひぃ、怖ぇぇな。



「ベスッ!!!」


 ベスが悲痛の叫び。これはおかしいぞ。


「どうしたベス!」


 上空の光りからまた何かが飛び出し、街の裏の大きな山に向かっていく。


 途中で消えない。ずっと光を発しながら山に向かって真っ直ぐ落ちていく。



「あれ……人……?」


 俺の目はそこまで視力はよくないのだが、チラと落ちていくものが見え、それは人のように見えた。


 見間違いか、見たとおりか。空から人ってかい。


 天空の城でもあるってのか? 馬鹿馬鹿しいありえね……。


 いや、ここは異世界。ぜひあって欲しい。そういうものがあってくれないと俺は異世界とは認めない。



「行くぞベス! 雪山登山だ!」


「ベスッ!」


 二人は合点承知と山へ向かって走り出した。











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