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13 異世界転生したらルナリアの勇者が現れたんだが

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五百九話 クロのお給料の使いみちと魔晶ウエポン様


「で、なんだよ二千Gってのは。結構な大金だぞ、それ」



 足湯から満足顔で上がってきた愛犬を丁寧に拭き、宿ジゼリィ=アゼリィ一階食堂でイケボ兄さん特製朝食をロゼリィ、アプティ、クロと一緒にいただく。


 水着魔女ラビコだけは現れず、さっき訪れた海賊風船乗りガトさんの話を宿のオーナーであられるローエン夫妻と共に聞いているそうだ。


 

「にゃっはは、それがアタシの自慢の魔晶銃がイカレちまってよ。それを直してぇんだが……安く見積もっても一千G、ぼったくり高級店デュアメロディだと二千Gはかかりそうとかいう……にゃっはは……」


 朝食を終えた俺は猫耳フードをかぶったクロを引き連れ、お店があるソルートンの中心街に向かっている。この世界の通貨で一千Gは日本感覚十万円、二千Gは二十万円ぐらいだろうか。


 なんでもクロが持っている魔晶石のエネルギーを利用して魔法弾を放つ武器、魔晶銃のパーツの一個が壊れたんだと。


 パーツは大きな街なら手に入る物らしいが、魔晶石のエネルギーを変換する根幹部分のパーツらしく、消耗が激しいうえに高価な物だそうだ。


「デュアメロディか、そういや出来たばっかりのときに行ったな。そこでクロと会ったんだっけ」


 魔晶石アイテムを取り扱う高級店デュアメロディ。世界展開のチェーン店らしく、最近このソルートンにも出店してきた。お値段はかなりお高め。クロがぼったくり、と言うのも分からんでもない。


 火の国デゼルケーノに行く前、お店でカメラを物色していたら話しかけてきたのが猫耳フードをかぶったクロだったっけ。


 その後カメラが欲しくなり、デゼルケーノまで直接行ったんだよな。


 まぁ当時の俺はカメラが欲しいわけではなく、デュアメロディを高級エロ系グッズを扱うお店だと思って入店したんだがね。


「しかしよクロ。以前と違って今のお前は宿ジゼリィ=アゼリィでお風呂のボイラーとかの魔晶石で動く設備の管理役として雇われているわけだから、お給料は毎月貰っているよな? 二千Gが高いとはいえ、払えない額じゃないだろ」


 宿ジゼリィ=アゼリィはメニュー改善、宿全体のリニューアル以降相当の売上を叩き出している。


 オーナーであられるローエンさんジゼリィさん曰く、払うもん払わなきゃ人材は育たない、というホワイト企業っぷりで、従業員さんにはソルートンという地域の相場では考えられないぐらい破格のお給料を出している。


 クロも宿に雇われているので、相応のお金はもらえているはずなんだが。


 でも急に二千G、日本感覚二十万円は難しいか。



「いやまぁそうなんだけどよ、この魔晶銃ってやつがさ、使うたびに高価な魔晶石をガンガン消費するわけでよ……。武器って使わないと腕が落ちるから、毎日トレーニングで銃を撃つんだけど、そのたびに魔晶石を買わないとならなくて……あああああああ! なんでこう魔晶石ってクソ高ぇんだよ! おかげで給料入るたびに即全部魔晶石と等価交換の日々なんだよ!」


 クロが急にキレだし、うっすい財布を地面に叩きつけた。


 パスン……と悲しい音が鳴り、布を張り合わせただけみたいな財布がそよ風に舞う。うわ、なんも入ってねぇぞあの財布。



 まぁ……魔晶石って高いんだよね。


 俺もバニー娘アプティが能力使うたびに魔晶石を補充しないと危険な状態になるから常時買い備えているけど、毎月かなりの額が飛んでいくからな……。


 アプティの正体は人間ではなく蒸気モンスターで、生きるためには魔力を必要とする。この世界で手っ取り早く魔力を補給するには魔晶石が一番いい。


 俺はアプティに何度も命を助けられたし、恩返しの意味を込めて俺の命が続く限り魔晶石を買う。


 アプティは毎朝優しく起こしてくれ、掃除・洗濯も手伝おうとする俺を制してでもやってくれる。


 バニー衣装のおかげで半分見えている生のお胸様を至近距離から凝視しても怒らないし、お尻を地面に頬をつけての超ローアングルから覗き込んでも怒られない。正直今の俺にはアプティのいない生活は考えられん。



「わ、分かったから人通りの多い街道でキレんのやめろ。二千G、俺が払うから」


 周囲の視線が俺たちに集まり、ヒソヒソと俺を指差す人が増えてきたので慌ててクロの頭を撫で落ち着かせる。なんでクロが街道でキレてんのに俺が注目浴びるんだよ……。


 ああ、すまんが金ならあるんだ。


「ニャハー! さっすがキング、話が早いぜ! やっぱ余裕のある男は違ぇな! ホラ、代わりに好きなとこ触っていいからよ!」


 俺が払う、と言った途端クロから怒気が消え、超笑顔で俺の腕に絡みついてきた。


 はぁ……クロって本当に魔法の国セレスティアの王族様なんだよな? 出会って以降そういうオーラをマジで感じないんだが。庶民感覚、そう、庶民感覚をお持ちの親しみやすい王族様、と思うしかないか。


 そしてクロさん、今好きなとこ触っていいとか素敵な言葉を発しなかったですか。


 い、いいいいんすか!? お胸様とかツンツンしちゃっても……いいんすか!


 ……いや、金銭を払う代わりに女性の体を触るのは違法行為。俺は紳士だし、そういうのはイカン。


 そうだ、クロ自身でお胸様とかを揉んでもらい、その姿を俺がねっとり眺めるというのはどうだろう。うん、ナイスアイディア、ナイス合法。この世界に動画を撮れるカメラが無いことが悔やまれる。



「はぁ……まーたラビコよろしく童貞の俺をからかってんだろ。どんなに飢えていようが、俺はそういう触り方はしない。ましてやクロは俺が全てをかけて守ると決めた大事な女性で、大切な仲間なんだ。その想いは決して揺るがないよ」


 俺の頭の中では決め顔で言ったセリフと真逆の、十八禁超えの映像化不可能なプレイが繰り広げられているが、口に出さない妄想は個人の自由。


 つか俺の大事な仲間に実際に手を出すわけねぇだろ。


 ……ただ、今のクロのセリフは脳内アーカイブ化し、夜の俺の想像の一人バキューン……に使わせていただきます。


「ニャッハハー、やっぱかっけぇなぁキングは。別にからかったわけじゃねぇし、アタシはマジでキングが好きだから言ったんだよ。全てをかけて守ると決めた女性、か……ニャッハハ、それって告白じゃん。いいぜぇ、アタシはいつでもキングのタイマン勝負を受けんぞ! ニャッハハ」


 クロがちょっと照れたように笑い、華麗なステップと共にファイティングポーズ取る。


 なんで大事な仲間、からタイマン勝負の話になってんだよこのヤンキー娘。魔法も武器も使えない、格闘技知識ゼロの俺が普段から鍛えているクロに勝てるわけねぇだろ。



「ほら、バカ言ってないで、さっさとパーツ買いにお店に行くぞ」


 クロは気にしていないが、正直さっきから街道を歩く人の俺に対する視線がすごいんだよね。


 さっさとここから移動しないと俺の世間体がマントル突き抜ける。俺は優しくクロの肩に手を回し、一緒に歩くように促す。


「ウヒャ……それやべぇってキング! 好きな男にそれやられたら、アタシみたいな奥手女は即落ちだっての、ニャッハハ!」


 クロが抵抗せず赤い顔で俺を見てくるが、誰が奥手女だ。


 俺のパーティーメンバーでその奥手という言葉が当てはまるのはロゼリィか俺だろう。


 ああ、俺にはさらにチキンハートも追加効果で発動だ。




「でもクロって普通に魔法使えるんだろ? なんでわざわざ魔晶石を使って疑似魔法を放つような武器使ってんだ?」


 ふと疑問に思う。クロはあの魔法の国セレスティアの王族様。


 当然クロは魔法が使えるし、水着魔女ラビコ曰く血のなせる業、セレスティア王族しか使えない柱魔法なんてとんでもない魔法すら使える才能の持ち主だぞ。


 腰のごついベルトに二丁の銃を下げ、背中には魔法の杖っぽい物も装備しているクロ。


 でも杖を構え魔法を使うことはほとんどない。


 銃が格好いいから? それなら納得だが。


「これか? そうだな、まず何より格好いいだろ? コンパクトでありながらこのゴツっとした重量感、たまんねぇよなぁニャッハハ」


 終了。


 銃は格好がいいよな! 俺もそう思うぞ!


「この魔晶ウエポンってやつは最近、といっても……九年ぐらい前だったか、まぁそんぐらいに確立された新たなカテゴリーの武器でよ。これぞアタシが求めていた物だ! と思って飛びついたのさ」


 九年ぐらい前に確立された新たなカテゴリーの武器、か。


 魔晶ウエポン、ちょっと興味あるな。詳しく聞いてみようか。



「見ろよキング、この金属特有のテカリ、たまんねぇよなぁニャッハハァ」



 クロが恍惚の表情で銃に頬ずりを始めたが、どうしても俺にはこれがエロい光景に見えてしまうんだが、俺はおかしいのだろうか。







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