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五十一話 海に行きたい男様


「水着、買おうかなぁ」



「え!? み、水着ですか?」




 今俺が住んでいるソルートンの街は季節的にはまだ夏らしく、半袖一枚でも暑いぐらいの気温。


 せっかく異世界の夏だってぇのに、俺はなんら夏を満喫していないことに気が付いた。


 キャンプはした、旅行もした。


 でもそれとこれは違うんだ、水着、そう水着のお姉さんをいっぱい見たいんだ。見ないと俺の夏は終われない。




「海ぐらい行って夏を感じたいんだ」


 こないだ砂浜行ったら、ハーメルに出会って、結局海を楽しめなかったしな。鯨は見たけど。


「み、水着は……その、体のラインが出るので……に、苦手です」


 ロゼリィがモジモジし始めた。


 ほう、と俺がロゼリィの体のラインがあまり見えない服の上から透視してみる。


「ロゼリィは自分の魅力に気が付いていないんじゃないかな。自信を持っていいと思う、俺はロゼリィの水着が見たいぞ」


 直球で言ってしまったが、ああ、ぜひ見たいね。


 ロゼリィはかなりのものをお持ちなので、見れるときに見ておきたい。夏過ぎたらチャンス無くなるし。


 なぜかロゼリィが顔を赤くして下を向いてしまったが。



「あっはは~社長は欲にストレートだなぁ~。本当に見たいんだなぁ~ってのがビリビリ伝わってくるよ~」


 ラビコが雑誌の夏の海特集のページを広げ雑談していた俺達に近づいてきた。


「雑誌に紹介されているような場所には行けないが、このソルートンの海も十分綺麗だし、俺は行く」


 俺の決意は固い。キッと迷いのない男の視線をラビコに向ける。


「あはは……そういう目は違う場面でちゃんとした口説き文句を添えて使うと効果的だと思うよ~。ん~そうだねぇ、行けるなら王都ペルセフォスの南にあるリゾート地、ティービーチのカエルラスター島なんかに行きたいけどねぇ」


 カエルラ? ああ、雑誌に出ているな。人気ナンバーワンの海か。


 ここからだと旅費だけでお一人様千G、十万円とか掛かるのか、無理。



「パーティーのリーダーとして指示する。明日海に行くのでワクワクしておくように!」


 いつから俺はリーダーになったのか自覚はないが、とりあえず権限みたいのを行使してみた。


「わ、分かりました! よ、用意します!」


「あっはは~別にいいけど~天気の具合が……いやなんでもないよ~了解社長~」


 ウソリーダーのはったりが通じたので俺は笑顔で水着を買いに走った。




「何か鬼気迫る雰囲気でした……」


「あはは~社長は疲れとかアレとか溜まっているんだろうねぇ。私達でどうにか出来る問題だし~一肌脱ぎますか~」


 ロゼリィとラビコは無言で頷き合った。






 俺は水着を求め、商店へ。


 どれでもいいのだが、お店の端っこのほうにワゴンがあるのが見えた。


「ああ、処分品ってやつか。黄色に緑、まぁ売れ残りそうなデザイン……う、これは……」


 ワゴンの奥のほうにさらに不人気で売れ残ったと思われる、ついているタグのヘタレ具合いからして二、三年前のモデルが出てきた。


 はっきり言って見た目はダサイ。しかし俺はこれを買わなくてはいけないような衝動に駆られる。




「ありがとうございましたー」


「いい買い物をした」


 買ったのは特に何の装飾もないオレンジのハーフパンツタイプの水着。



 どうやら俺は異世界に来て知らず知らず、オレンジはいい物だと思い始めているようだ。












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