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五百六話 続続恐怖の砂浜 4 それは呪いの着ぐるみ様

「ハハハ! フハハハハ! 見せてもらおう、フルフローラが誇る盾騎士フォリウムナイトの力というものを……!」


「くっ……この圧倒的な悪しき力……欲に支配されている……?」



 ピンクの着ぐるみクマさん一号と、花の国フルフローラの王族ローベルト=フルフローラ様がソルートンの夜の砂浜でバトル。


 なんでこんなことになっているかは……よくわかんね。


 多分俺のせい。



「そうか……! その着ぐるみが悪いのだ! 聖女と名高いあなたほどのお方がこのような欲まみれの力に支配され何かおかしいと思っていたが、その着ぐるみに支配されてしまっているのか……! 分かりました、今その悪しき呪いから解き放ってみせます!」


 ローベルト様がピンクの着ぐるみクマさんの豪速回し蹴りを左手で受け流し、右手でその足を掴みにかかる。


 な、なるほど……! 中身の彼女、彼等は何かのひょうしに間違って呪いの着ぐるみを装備してしまい呪縛から逃げ出せず、助けを求め彷徨っていた、と! それは新説!


 なんてことだ……俺は彼等のSOSを見逃していたのか……多分見た目のファンシーさでお城の人達には深刻さを理解してもらえず、外部から来た俺に助けを求めていたのか。


 だから何度も俺のところに……かわいそうに……それならばすぐに助けねば……!


 ……まぁ今俺はクマさんズに捕獲され、なんにも出来ないけど。



「ははは! さぁ全力で来るがいい! お綺麗な言葉を並べたところで、実行出来る力がなければ子供が見る夢と変わらん。大人なら、責任のある立場の者ならばそれを完遂しなければならない! 国の名を背負う者ならばなおさら……! 自分を信じ集まってくれた者を導き、未来への道を示してみせよ!」


 掴みにかかってきたローベルト様の手を華麗にバク転で避け、地面についた手から緑色の魔力がバーニアのように噴射。バネでも仕込まれたかのような動きでびょいんびょいんピンクのクマさんが跳ね回る。


 すげぇ……着地する寸前に魔力を手足から放つことで、人間の筋力では絶対にありえない動きを実現しているのか! あれが呪いの着ぐるみの力……! 


 でもどっかでこの動き見たことがあるような……うっ……このことを考えると頭が割れるように痛くなる……!



「国の名を背負う者の責任……! 財政難でお城の修理もままならず、王都は田舎王都などと悔しい呼称をされ……かといって解決策を出せていない今の私には厳しい言葉だ……。だが、こんな私でも信じ集まってくれた者もいる……彼等の想いを裏切るわけにはいかない……そう、私が先頭に立ち、皆に明るい未来を示さねば……!」


 ローベルト様が胸付近につけている三つ葉のブローチを目を閉じ握る。数秒後決意したかのような顔で目を開き、両手の拳を胸元でぶつけ合わせ黄色い魔力を発生させる。


「着ぐるみの呪いに飲み込まれながらも心に響くお言葉……やはりあなたは素晴らしいお方だ! 襲われている少年には申し訳ないが、君のおかげで私はこのような出会いを得られた、感謝する! 願わくばその呪いを解き、ロゼリィ嬢の想い人を守りたい……そう、願うだけでなくこれを実行せねば導く者にはなれない! あなたの教えに従い、ここからは全力でいかせてもらう!」


 両手から発せられた黄色い魔力が形を成し、まるで左手に黄金の花を咲かせたようなシールドが出来上がる。すげぇ綺麗だ。


「ほぅ、これが噂の盾騎士の力。美しい……資料では、血が飛び交う戦場に黄金の花が咲き、その光は全ての攻撃を弾く絶対盾、とあったが、まさしくその通り。嬉しいぞ、このような強者と拳を合わせることが出来るとは、ハハ……フハハハハ!」


 クマさんが体を震わせ叫ぶ。


 確かに言うセリフは格好いいが、この着ぐるみクマさんの師事を受けて大丈夫なんすかねローベルト様……。



「うわぁすごいですぅ! あれがフルフローラの盾騎士様の力! 私もナイトっぽいああいう盾が欲しいですぅ」


「さすがに守りは世界トップレベルですね。しかし守っているだけでは勝てないでしょう。攻め手と組む集団戦闘でこそ、あの絶対盾が生かされるのではないかと。滅多に見れない戦いですね、これはデータを取っておかないと」


 ピンククマさん一号の手足の魔力バーニアを上手く使い、バネのように飛び跳ね放たれる渾身の一撃をローベルト様がその盾を使い弾く。


 二人の戦いをピンククマ二号さん、水色クマさんと眺める。


 ああ、俺の拘束は解かれ、三人仲良く並んで体育座りで見ているぞ。ズボンも履いた。


 ピンク二号さんはローベルト様の盾にすごい興味を抱き俺の左腕に絡んでくる。水色クマさんは冷静に戦闘の解説を教えてくれ、どこからか取り出したメモ帳に何やらデータを書き込んでいる。


 二号と三号さんがやけに俺に親しげにしてくるが、昨日の敵は今日の友ってことなんだろうか。



「ふぁ……」


 無限に続くピンク一号さんとローベルト様の攻防。二人はとても楽しそうなのだが、見ているこっちとしては、実力の拮抗した引き分け延長ゲームを雨天ドローで試合終了になるのをひたすら待っている感じ。


 俺もこうやって格好良く魔法が使えたらなぁ……右手に光の剣、左手には光の盾とかいいよなぁ……なんか今日一日動き回っていたから眠くなってきたぞ……。


「……」


「…………」


「…………──」





「──ハッ!」


「ベッス」


「……おはようございます、マスター」


 あれ……朝? ……ここは……俺の部屋の俺のベッド……愛犬はいいとして、当たり前のようにバニー娘アプティが潜り込んできている……ああ、いつもの朝だな。


 っかしいな……なにかすげぇ不思議な夢を見ていたような。呪いの着ぐるみクマさんズと夜の砂浜で仲良く体育座りしていたとか、ローベルト様が来てクマさんとバトルになったとか……。


「ふぁ~~あ……ったくあのクソ変態……ここまで用意周到に来るとは思わなかったっての~」


 大きなあくびをし、俺の部屋のソファーから気だるそうに起き上がってきたのは水着魔女ラビコ。あれ、昨日の歓迎会で酔いつぶれて俺のベッドに寝てなかったっけ。


「ちっ、何度も言うが私は選ばれるのをただ待つような女ではないのだ。あとちょっとで結果強い子が出来るところだったのに……イレギュラー処理を誤った私のミスだな。しかしおかげでローベルト殿と本音で語ることが出来、良い友人となれた。ははは」


 ラビコの後ろから現れたサーズ姫様がちょっと不機嫌そうに舌打ちをするがすぐにいつもの笑顔に戻り、俺の部屋の窓際で宿の娘ロゼリィに髪をとかしてもらっているローベルト様を見る。


「あ、い、いえ、こちらこそ拳を交えさせていただき光栄でした! まさか大国ペルセフォスのサーズ様と個人的に親睦を深めることが出来るとは……来てよかった……。その、出来ましたら公式にお話をさせていただきたく……今我が国は大変財政状況が厳しく……その……」


 ローベルト様が慌てて応え、後半声が小さくなり、胸の前で左右の人差し指をつんつん合わせチラチラとサーズ姫様見る。


 なんだあの可愛い仕草は。本当に王族様なのか。


「昨日も言ったが、この少年を介して知り合った者とは積極的につながっていこうと思っている。彼が私とあなたを引き合わせたのには、必ず意味があるはずだ。それに隣国が困っているのならば、ペルセフォス王国は必ず少しの知恵と財を差し出そう。かつて我が国は周辺諸国から多大な協力を受け龍を倒し、建国に至った。その恩は、どれほどの月日が流れようと返していく、いや返さねばならん」


 サーズ姫様がローベルト様に歩み寄り、堅い握手を交わす。


「あ、ありがとうございます……うう、実は本当にお金がやばくて、お城の修理も出来ず、人材育成もままならない状況でして……かといって税金を上げるわけにも……ううう」


 ローベルト様が泣き出してしまったが、マジでフルフローラって財政難だったのか……。今アンリーナ主導でロゼオフルールガーデンにカフェを作ろうとしているが、その計画が上手く行けばもっと観光客を呼べるかもしれない。


 そのへんはアンリーナと今度相談だな。



 なんか記憶がおぼろげだが、昨日の夜のクマ襲撃事件は俺の見た夢ではなく本当にあったそうで、俺が寝てしまった直後にお酒が抜けたラビコが血相変えて飛んできてクマさんズを問答無用でひっ捕らえたそうだ。


 アプティも来てくれ、寝ている俺を部屋のベッドまで運んでくれたとか。


 疲れて熟睡していた俺に手を出そうとしてきたサーズ姫様とハイラからラビコとアプティが守ってくれ、激しいバトルの後、そのまま皆さん倒れ込むように寝てしまったそう。



 その後の着ぐるみクマさんズがどうなったかは分からないが、まぁ彼等は頭のいい集団だし野生でもたくましく生きていくだろう。


 着ぐるみ、あれが本当に呪いで、彼等が助けを求めているのならば俺は手を差し伸べてあげねばならん。


 今度彼等に出会えたら、俺のほうから歩み寄ってみようと思う。



 あと、サーズ姫様とローベルト様の距離が昨日より縮んだ感じだったり、本気だの拳で語り合っただのって何の話?


 もしかして俺、数ページぐらい読み飛ばした?





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