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五百四話 続続恐怖の砂浜 2 襲いかかる三匹のクマさんとNEW勇者様

「フハハ……ハハハハハ! 邪魔者は全て消し去った! 周囲には誰もいない……勝った、我々は勝ったのだ!」



 一番手前にいたピンクの着ぐるみクマさんが大興奮で吼え、持っていた俺の罪状が書かれていたらしい紙を勢いよく引きちぎる。


 こもった声で聞き取りにくいが、普通に喋れるんだよな、このクマさん。


 意思疎通が出来るのなら、なんとか話し合いで穏便にこの危機的状況を打破出来ないものか。



「ここまで作戦通りにいくとは思いませんでしたね。ソルートン組も地に落ちたものです」


 後ろに並んで立っている、その立ち位置的に部下っぽいもう一匹のピンクのクマさんがボフンボフンと手を叩く。


 作戦? やはりこいつら、喋れるだけあって知能は相当高そうだぞ。


 そしてなんだろう、ソルートン組とかいう謎の組織っぽいものは。こいつら何か悪の組織的なものと対立でもしているんだろうか。


 つかその言い方だと、ソルートンにもお前らみたいな着ぐるみ集団がいるってこと? しかもお前らのライバルっぽいし……なんか俺の知らない世界で別の戦いの物語が繰り広げられていたのか。


 着ぐるみクマさん戦記~異世界編~。ちょっと読んでみたい。



「しかし……本当によろしいのですか……このような形で、その……なかば強引にする、というのは……その……倫理的に……。彼と約束した、次までにはもっと鍛えて君を守るという僕の言葉が嘘に……」


 盛り上がる二匹に対し、新顔の水色のクマさんがちょっとクレバー路線。


 ……ここか? この状況を打破するポイントはここにありそう。なんとかこいつを味方に引き入れ、逃げ出せないものか。


「三号、今は迷いは捨てろ。現場に辿り着く過程で悩み、迷うことは構わん。自分なりの答えを出し、結果作戦に参加しない選択肢を取ることも許す。だがお前は答えを出せず、作戦に参加した。ならば迷いは捨てよ! 作戦に参加している多くの者の心が一つにならねば、犠牲者が増えるだけだぞ!」


「は、はい……! 申し訳ありません! ときに非情にならねば、救えない命もある……!」


 弱気な水色クマさんに対し、リーダーっぽいピンククマさんが喝を入れる。


 水色クマさんは普段優しい性格なんだろうな……でも優しさだけでは守れないものもある。迷いは多くの犠牲を生むだけだと、リーダークマさんの言うことも分かるが……。


 見た目ファンシーなクマさん界も、案外厳しい世界なんだな。


 それで、作戦だの犠牲だの、こいつらは何の話をしてんの? なんで俺は軍隊みてぇな着ぐるみ集団に襲われてんの。



「心を一つに……! いくぞ二号三号、ビーチでロマンス作戦、開始!」


「はいっ!」


「……はっ!」


 リーダーの掛け声と共に部下二人が動き出す。


 よく見たら、それぞれの着ぐるみの額のところに数字が刺繍されている。


 リーダーっぽいピンクのクマさんが「1」。二号と呼ばれたもう一匹のピンクのクマさんは「2」。そして新顔の水色のクマさんには「3」とある。


 彼等は自らの体に刻み込まれた数字で呼び合っていたのか。


 ……着ぐるみの製造順とか? なんか格好いいな。壱号機、弐号機、参号機とか、ちょっと男心をくすぐられる。もしかして封印された零号機とかもいたりして。



「……すまない……僕は弱い人間だ……親友である君を売ることになろうとは……せめて痛い想いを感じる前に、一瞬で終わることを願うよ……」


 突然背後に現れた水色クマさんが俺をガッチリ羽交い締めにしてくる。


 いつの間に……なんだこの忍者みてぇな動きと気配を消す達人クマさんは……! くそ、動けねぇ……こいつ新人のくせに場慣れしてんぞ!


 そして俺にはお前みてぇな着ぐるみの親友はいない! 痛みを感じる前に一瞬でとか……何、俺死ぬの? か、勘弁しろよ……! 意味もお前らの正体も分からず死ねるか!


 せめて死ぬ前に童貞脱却はしたいです……!


「連打連撃! 追い打ち無双ですぅ! そぉれ……ッ!」


 水色クマさんに羽交い締めされ動けずにいたら、ピンク二号さんが俺のジャージのズボンを一気に地面までずり下ろす。


 ちょ……っ……! 俺どんな格好で殺されるんだよ!


「はぁ……! すっごいですぅ! これは見惚れてしまいますぅ……三号さん、お願いしますよ、せぇのっ!」


 背後の水色クマさんに足払いを喰らい、俺は仰向けに砂浜に倒れ込む。星空が綺麗……。


 すぐさま両手を上に伸ばされ、水色クマさんが腕を動かせないように乗っかってくる。さらに胸元にもピンク二号さんが乗っかってきて、上半身を完全に封じられる。


 くそ……! なんなんだよこいつら!


 ……ピンク二号さんの中身は女性らしく、胸元に感じる押し付けられるお尻の感触が心地よい。


 腕に乗っかってきている水色クマさんの中身は完全に男。すげぇかってぇ筋肉だし。こっちの感触は早く忘れたい。


「……きたか……ついにこのときが……! もう一歩が踏み出せない好き合う二人。迷いを捨て意を決した男にデートに誘われ、夜の砂浜で不器用ながらも精一杯の想いを告げられる。私は断るはずもなく、ずっと待っていました、と優しく微笑む。出会いから長い時を経て一線を越えた二人は興奮が収まらず激しく抱き合い、そのまま夜の砂浜で初めての快楽を……!」


 胸元に乗っかっているピンクの着ぐるみクマさんのせいで見えないが、風が心地よく通り抜けている俺の下半身に何かが迫っているようだ。


 リーダーっぽいピンクのクマさんが、怯えてミニマムになっている俺マグナムを着ぐるみの手で突いてくる。


 や、やめてぇ……! 俺どんな辱めを受けて死ぬの!? あああああ……こんなことならロゼリィとかラビコとかアプティとかクロに頭下げて、お胸様とかを生で見せてもらいたかった人生だった……その、えぇっと……出来ましたら下のほうも見たかった……。


 あと、リーダーっぽい一号さんのポエムは何?


 今の俺が襲われている状況と全く微塵も噛み合わない実況なんですけど。



「……うーむ、大きくならないな。どういうことだ二号。彼は欲に飢えた獣で、いつでも臨戦態勢だと聞いたのだが」


「えぇと……でもこの形態も可愛いですよね。私はどんな大きさでも大好きですぅ」


 二匹のピンクのクマさんが俺のミニマグナムを見て品評会。


 さすがの俺でもこの状況で大きくなるかよ! マジで怯えてんだっての!



 くそ……これはまずい。命&貞操の危機ってやつだ。


 俺一人ではどうしようもないので、助けを呼ぶぞ! こういうときいつも助けに来てくれていた勇者アーリーガルは、宿で歓迎会に参加している。


 ハイラもサーズ姫様もその歓迎会を満喫されているはず。


 ラビコは……そういやサーズ姫様が用意してくれたお酒なのか薬なのか分からない物を飲んで潰れていたな。


 アプティは……そういやハイラとアーリーガルが用意した多量の紅茶とアップルパイに夢中だったな。


「…………」


 ここから宿まで結構距離あるけど、叫んだら愛犬は来てくれるかな? 無理かな……ちょっと不安が残る……。


 まずいな、襲われた状況とタイミングが最悪だぞ。



「……なにか動きがおかしいと後を追ってみたが……これはどういうことか……あなたほどのお方がこのような暴挙を……! 事情があるのなら聞かせてもらおう。しかし返答次第では、私はあなたに拳を向けることになる。一方的な力で親友の想いを踏みにじるのならば、私は立場を捨て鬼にもなろう……!」


 助けてくれそうなパーティーメンバーのリストアップを脳内でしたが、結構八方塞がりで脱出無理ゲーじゃん……となかば諦めていたら、遠くからゆっくり近付いてくる声が。


 この声、花の国フルフローラから来ているローベルト様か?


 よかった……名のある騎士、ローベルト様が来てくれた! 確かこのピンククマさん一号ってその可愛らしい見た目に反して、ペルセフォスの隠密騎士アーリーガルを簡単に打ち負かせる実力者なんだよ。


 ローベルト様はフルフローラが誇る盾騎士フォリウムナイト。彼女の実力ならば、こんな野生化した着ぐるみクマさんに負けることはないだろう。多分!



 つかマジお願い……助けて……。







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― 新着の感想 ―
社長が修羅場潜りすぎて状況分析が冷静すぎる。 異世界に来て一年もたってないと思うのですが。 流石だ。王の目。 クマさんが斜め上にレベルアップしてて面白い「笑」 くまさん戦記…クマクマべ  …ゲフンゲフ…
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