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12 異世界転生したらお姫様が集まったんだが

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四百九十九話 お姫様お姫様お姫様 10 イケメン王子アーリーガルと綺麗なお尻様

「あの、出来たらお名前を……」


「ジゼリィ=アゼリィっていう今流行りのお店があるんだけど、一緒にどう~?」


「うわイケメン……え、王都からの観光客なんですか? いいなぁ帰る時私も連れてって欲しいなぁ」



 嫉妬憎悪嫌悪ねたみ逆恨み……ああ、憎しみで人がコロせたら……いやさすがに言い過ぎたな、訂正しよう。ああ……憎しみで対象の男の関節を全て逆方向に曲げられたら……!


 憎い、この世が憎い。なぜ神はイケメンフェイスなんて無双パーツをアーリーガルだけに与えたのか! なぜ俺は異世界に来たのに顔は日本と同じ冴えないフェイスなのか!


 主人公は俺のはず……なのになぜソルートンの若い女性の黄色い声は、隣を歩くソルートンの暗い場所を地図にメモることで忙しい男に集まるのか。


 ねぇ女性のみなさん、そのイケメン王子の横に俺っていう、超つまんなそうにダレてる暇そうな男が見えていないんですかね。ええ、超暇なんすよ、俺。誰か話しかけてもいいんすよ。



 時刻は十六時過ぎ、少し日が傾き始め夕方が近い雰囲気漂う港街ソルートン。夕飯に向けた準備を始めている家もあり、街道に美味しそうな香りが漂う。


 宿ジゼリィ=アゼリィでは持ち帰りの惣菜も店頭で安めに売っているので、作るのが面倒な人、あと一品欲しいという人はぜひご利用下さい。


 

 ペルセフォスからお忍び観光でソルートンに来ているサーズ姫様御一行。街を案内して欲しいというので、午前はサーズ姫様、昼から十五時まではハイラ、そして最後はイケメン王子フェイス、アーリーガルを俺が親切にも案内している。


 男二人で街を巡る。さすがにサーズ姫様やハイラと違って特にトラブルは起きないだろうと思っていた……のだが、甘かった。


 ソルートンじゃ滅多に見れないクラスのイケメン、アーリーガル。


 通りかかる若い女性ほぼ全員が彼を凝視し、その王子フェイスに赤い顔で話しかけてくる。集団の女性なんか俺を弾き飛ばして、な。


 クソガァァ! 男同士ならトラブルも起きないだろうし、楽しく街を案内出来るかも、と思っていたが、なんだろうこの生まれ持った物の差を感じるイベントは。俺の劣等感ゲージが限界突破すんぞオラァァァ!



「いやぁソルートンにはまだまだ隠された暗闇ポイントがあったんだね。地元の人の意見はとても参考になったよ」


 寄ってきた女性陣一人一人丁寧に対応し、今は親友との時間を楽しみたいんだごめんねと謝り、クルっと俺のほうを見て満足気に追加情報を書き込んだ地図を見せてくる。親友って俺かい。


 うぅむ、このへんの柔らかい感じの対応の良さがモテる要因なんだろうか。いやでもあれだろ? 俺が同じこと言うとキモがられるんだろ? 知ってる、結局顔なんだって……。


「地元っても俺がソルートンに住みだしたの最近だしなぁ。生粋のソルートンっ子を当たったほうがもっと良い情報あるんだろうけど」


 適当に思いついた暗がりを案内しているが、俺は異世界から来た人間なんで、そんなにソルートンに詳しいわけじゃあないんだよね。




「そういやリーガルは魔法使えるのか? 使えるんなら俺に教えてくれよ」


 街の中心部を流れる川沿いにある公園のベンチに座り休憩。まだ諦めたわけではない魔法習得。アーリーガルって顔はイケてるが、魔法はどうなんだろうか。


「え、魔法かい? ……まぁ、簡単なのは使えるけど、隠密に特化したものが多いから君が求めるようなものはないと思うよ。あと教えられるほどの才能が僕にはないかな、ごめんね」


 申し訳なさそうに謝る王子フェイスアーリーガル。なんとなく背後にキラキラとしたイケメンエフェクトが見えたが、それが隠密魔法なのか? それとも俺の激しい劣等感が見せた幻か?


「そっか魔法は無理か、じゃあ代わりに女にモテる秘訣を教えてくれ」


「え、か、代わりに? 話が急に変わっていないかい?」


 俺の代替え案に慌てたような仕草を見せるイケメン王子。別に話は変わっていないだろ。さっきからお前モテまくってんじゃん。


「いや、その……僕は女性に多く話しかけられるけど、そういうのがモテているって言えるのかな」


 は!? さっきまでの自分のモテっぷりを全否定か!? ああそうか、いっつもあんな感じだから、僕にはアレが日常で、特別モテている光景ではございませんってか! これだからイケメン様はよぉ!


「確かに僕は顔が良いけど、さっきみたいなのは、見た目が良い男性と付き合って周囲に自慢して優越感に浸りたいが為に近寄ってくるようにしか見えなくてさ……いや、僕が過去に一回だけそういう扱いを受けただけで、全てをそうやって曲がった目で見るのは間違っているんだけどね。でもなかなかあの経験が抜けなくてさ……」


 ……ちょっと俺がモテなすぎて興奮してしまった。すまなかった。


 そうだな、過去にそういう目にあったからって全てをそう見てしまうのは良くないことだ。さっき寄ってきた女性達だって、ただ純粋にお前と楽しく話がしたかった人だっているだろう。


 なんかいっつもモテているから悩みなさそうに見えたが、過去のトラウマ背負っていたのか。


 そして一度女性と付き合ったことがある、と。


 クソガッ……ああ、これは別に某ファイナルなゲームの属性最上位魔法じゃないぞ。俺の最大級の嫉妬な。あとこいつ、ナチュラルに僕は顔が良いけどって言いやがったな。


「女性にモテる方法って、それは僕が君に聞きたい情報だよ。君はいっつも格好いいんだよね。男女問わずいつも君の周りには人がいて、それがどんどん増えていく。あのお忙しいサーズ様がわざわざ時間を作って君に会いに来るぐらい」


 アーリーガルが羨望の眼差しで俺を見てくるが、さすがにイケメン王子フェイスに熱く見つめられたら俺も変な気に……はならない。男に見つめられて喜ぶ趣味は俺にはない。


 そういうのは銀の妖狐だけでお腹いっぱいですわ。あいつ動きがキモいから二度と会いたくねぇし。


 サーズ姫様は体験型騎士教室と別件の事業の話のついでに宿に寄っているだけだろ。俺に会いに来たわけではないって。


「サーズ様の護衛でソルートンに来たのだけど、本当は僕も君と会って話がしたかったんだ。なんだか君といると楽しいし、一緒にいると自分の肩の力が抜けていくのが分かるんだよね。なんかこう仕事で張り詰めていた心の中の複雑に絡んだ糸を一発で解いてくる感じっていうのかな。仮面をかぶることなく素直に笑顔になれて、本当の自分の顔になれる気がするんだ。多分サーズ様もそう、だから君に会いに来たのだと思う」


 俺には計り知れないが、王族のお仕事ってすっげぇストレス溜まりそうだよな。以前サーズ姫様本人もそれっぽいこと言っていたし。


 まぁよく分からんが、この後歓迎会を開くからそこで日々ペルセフォスの為に頑張ってくれているサーズ姫様をおもてなしして、少しでも笑顔になってもらいたいものだ。



「あのサーズ様に認められるってすごいことなんだよ。しかも君は好意も寄せられているし……正直羨ましいよ」


 好意ってか、俺を反応が面白いおもちゃとか思っていないすかね。ラビコもそうだろうし。


 サーズ姫様は弟君であられるリュウル様を可愛さ余っておもちゃにしていた節があるが、俺は新たにみつけたその遊べる弟、って思われていそうなんですが。


 そういやアーリーガル君はサーズ姫様のことが好きなんだっけ。


 いや実物のサーズ姫様を見て好きにならない男はいないだろう。美人で頼れる姉御肌でスタイル抜群、お胸様もすげぇでかいし、なんといってもサーズ姫様はお尻が素晴らしい形しているんだよなぁ。


「そういやお前、隠れてサーズ姫様のお尻をエロい感じで眺めているそうだけど、あれもうやめとけよ。ラビコにとっくに本人にバレてるって聞かされたろ」


「ちょっ……! お尻の話は勘弁してくれ! あれは若気の至りで、最近は絶対にバレないようにこっそりチラっとだけに抑えているんだからさ! 誤解のないように言うと、職業柄どうしても相手のお尻を見ることがあるんだ! その、人って結構お尻の力の入れ具合で次にどう動くか予想が出来るんだよね。その情報を仕入れる為にどうしてもお尻を見ることが多々あって、そしたらだんだんお尻フェチになってきて、そう、実は君も形の良いお尻をしているんだ。男のお尻だろうと美しい物にはつい目がいってしまって……!」


 あ、やべぇ……こいつにお尻の話はタブーだったっけ。バレないようにって、絶対それは無理。百パーセント気が付かれているだろうし、その後リーガルが言ったお尻で動きが分かるどうのは本当の話? 焦って言い訳紛れの嘘っぱち?


 つかそんな興奮して真っ赤な顔で俺の両肩掴んでくんなよ! 俺の尻も見ていたとか、そんな告白いらんわ!


「……男のお尻……あ、兄貴……まさかそっちもいけるんすか……いや噂では聞いていたけど、本当だったとは……」


 大興奮状態のイケメン王子と取っ組み合いをしていたら、背後から野太い震える声が聞こえてきた。


「あれすか、そいつ女みたいな顔だから女装でもさせて……なるほど……。巨乳ちゃん、妹、そして締めに男のお尻……さすが兄貴、そういうローテーションで回して強い刺激を求めているんすね……。もうやりすぎて、普通の刺激じゃ満足出来ない体に……。ど、どうしよう、この情報は自慢になるのか……いや、尊敬する兄貴の武勇伝は全て流す、そう決めたんす! 俺も腹くくって覚悟決めて行ってこなきゃあな!」


 手に持っていたメモ帳を落としかけた世紀末覇者軍団の一人モヒカン一号だったが、震える手を抑え、邪気と迷いを払うように首を振り、ダッシュで冒険者センター方向へ消えていった。


 お、おい……! またお前かよ! どうして短時間で三度も遭遇すんだよ! 


 しかも最悪のタイミングで来やがって……なんだよ強い刺激を求めたローテーションって!



 

 数日後の話にはなるが、しばらくのあいだ俺をみかけると、男連中が苦笑いでお尻を抑え逃げていく光景がソルートンで大流行した。






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