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四十九話 イノシシと友情の笛様


「おはようございまーす」



「おーおー待っとったけぇ。よー来たのぅ」


 早朝五時、俺は以前お世話になった農園のオーナーさんのところを訪れていた。


 ここの畑に来ると自然と股間を守るように動いてしまうのはなぜなのか。





 冒険者センターの掲示板にまたこの農園の依頼があったので、ベスと二人でやって来た。


「すまんのぅ、この老体だけじゃあ手に負えない状況でのぅ」


 スラッとスリムなのだが、筋肉は多分俺よりありそうなおじいさん。


 ベスが嬉しそうにおじいさんの足に絡みつく。ここで頂いたご飯美味しかったしなぁ、それを覚えているのだろう。



「イノシシがすごいんですか?」


 掲示板には求む、イノシシバスターとだけ書いてあった。


 以前のときも確かにイノシシはよく来て、ベスが追い払ってくれた。


「それが今回は群れで何度も襲って来てのぅ、サツマイモの被害がすごいんじゃ」


 群れ、ですか。イノシシの集団はちと怖いな。


 あいつらものすごい勢いで真っ直ぐ突っ込んで来るし。以前はベスが爪から出る衝撃波を地面に当てて、巻き上げた土や小石を顔に当てて追い返していた。数匹だから出来たが、群れで来られたら通じなそうだなぁ。



「ンヒィーーーー!!」




「来たでぇ、イノシシじゃ」


 地鳴りのような音が響き、土煙がこちらに向かって近づいてくる。


 うわ、これはすごい数だぞ。ベス一匹でどうにかなる数じゃねぇ。


「ンヒヒーーボフッ! ボフッ!」


 先頭を走っていた一番大きな体のイノシシが、いつもの畑と様子が違うことに気づいたようで足を止める。何匹いるんだあれ、百や二百はいそうだぞ。


 イノシシが俺達のほうを向き、ベスを確認すると方向を左に変えトウモロコシ畑に向かって突進して行った。


「ボフッ! ボフッ!」


 収穫間近のトウモロコシをなぎ倒し、実を食い荒らし始めた。



「こ、こりゃー確かに一人じゃ手に負えないですね」


「んだ。数が多すぎて、鍋打ち鳴らしても聞きゃーしなくてのぅ」



 この数はベスでも厳しいかもしれんな。一対百~二百匹はちと分が悪い。


「さすがに無理かのぅ、サツマイモは今年は出来が良くてのぅ、美味しい物を皆に提供したかったんじゃが……」


 サツマイモのデザートか。薄く切って油で揚げただけでもサツマイモチップで美味しいし、蒸かしただけでもうまい。ぜひうちのデザートの神に渡して美味しい物を作ってもらいたいぞ。



 俺は今回、勝算があるからこそこの依頼を受けた。


 肩を落とすオーナーに俺は笑顔で言う。


「大丈夫ですオーナー。あれだけの数のイノシシを一匹も傷付けずに追い払う方法を俺は知っています」


「一匹も傷つけずに、そりゃーすごい。しかしどうやるんじゃ?」


 俺は腰に差していた一本のアイテムを取り出す。


 それを見たオーナーが不思議な顔をしているが、大丈夫です。これこそ、あの偉大な男、動物大行進の主を呼び出すマジックアイテムなのです。


 大きく息を吸い込み、優しくも力強く激しくそのアイテムに命を吹き込む。



ピュロロローロローヒポッ










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