四百八十八話 俺のこの手に魔法を 6 エレファント大開放とラビコの魔力様
「社長に見て欲しいんだ……私の全部」
「お、おい冗談はよせ……! もっと自分の体を大事に……!」
ソルートンの南にある砂浜。
そこの林の中にポツンと建っている小さな木の小屋。周囲に魔法結界が張られていて、常人には見ることも出来ないらしい。俺には普通に小屋が見えるけど。
水の国オーズレイクで出会ったエルフ、エルメイシア=マリゴールドさん。どうやら彼女が昔ここに結界を張り小屋を作り、一時期住んでいたそうだ。
そしてその時子供だったラビコが魔法を教わっていたが、半年程で何の前触れもなくいなくなってしまったとか。
「うん、大事にしてきたよ。その大事にしてきたものを社長にあげるっていってんの」
水着魔女ラビコに誘われ久しぶりに結界を越え中に入ったのだが、急に火照った顔になったラビコにエロい感じで絡まれているんだが……。
おふぁ……正面から抱きつかれ、み、耳に吐息が……あ、あかーん。
「ぷふ……はい油断した~。ここなら思う存分開放しても大丈夫だよドーンっと、あっはは~」
我慢しきれない感じで笑うラビコ。そしてなんだろうこの股間の開放感。
アフリカの大地を悠々と歩く象さんの映像を見たことがあるが、彼等の気持ちはこういう感じなのだろうか。そよぐ風がとても心地良い。
「相変わらずすっご~。アプティは毎朝これを見ているのかな~うっらやま~。つんつ~んっと、あっはは~」
うん、俺のジャージが下げられてい……
「あっはは~じゃねぇ! 何を勝手に俺の股間を開放してんだよ……! あと突くな!」
俺は半泣きでジャージのズボンを引き上げる。そういや以前もラビコに同じようなことされたな……俺には学習能力が無いのだろうか。
ちょっとエロい感じで女性に迫られたら頭真っ白ですわ。さすが俺、他者の追従を許さないぶっちぎりの童貞っぷり。
「あっはは……ごめんごめん~。前回と同じことしたら社長はどう反応すんのかな~って遊んでみたんだ~まさか大成功するとはね~あっはは!」
腹を抱えてゲラゲラ笑うラビコ。
くそぅ……まーた俺で遊びやがって……ラビコ達がつけている指輪を売ってくれたお店の店主、魔法剣士のナディさんよ、これ本当に俺に構って欲しくてやっている、俺に甘えた行動なん? 絶対面白いこと最優先の行動だろ。
「いいじゃ~ん、ここは誰にも見えない場所なんだし~。それにアプティには毎朝見せて、私には見せないとかずるいと思うし~」
誰にも見えない場所だから俺の股間は開放していい、じゃねぇ。お前が見ているだろうが、超至近距離で。
あと誤解のないように言うが、アプティは俺の服をいつも洗濯してくれていて、なぜか毎回寝ている俺の服を全部剥いで裸にしていくだけだ。
それを俺が見せている、と犯罪者のように表現しないでくれ。俺はむしろ被害者だ。
アプティにはいつもこう言って注意している「洗濯をしてくれてありがとう」と。
「っの野郎……俺だって男なんだから、暴走することもあるんだぞ……。ましてや好みの女性に例え嘘とはいえ誘われたら、マジでさわ、さ、触ってしまうかもだぞー!」
「だからさ~、嘘じゃないって。好きでもない男の裸なんてこれっぽっちも見たくないっての~。社長のは見たいからズボン下ろしたんだっての~。多分アプティだって同じ理由でしょ~。あと触りたいのならお好きにどうぞ~っと、あっはは~」
あかんわ、俺じゃ喋りでラビコに勝てねっす……。もうどの言葉が本当で嘘か分かんねぇ。アプティが俺のを見たいから脱がしてる? それはうっそだろ。
「はぁ……もういいや……俺の負けだ。で、なんだよ話って」
なんでかラビコと二人になると、こういう感じになるんだよな。ラビコが思う、面白い方へ面白い方へ、みたいな。
「あっはは~なんだっけ? なんか社長と話していたら楽しくて忘れちゃったな~」
おいふざけんな。それじゃあ俺はまーたこの小屋付近で無駄に股間フルオープンさせただけなのかよ。
「うそうそ~。最初に言ったけどさ、私を見て欲しいんだ。ほら、社長のその王の眼、千里眼の力で私の魔力ってやつが見えないのかな~って」
ラビコが笑いながら自分の胸あたりを指す。魔力を見る? なんだそりゃ。
「魔力? っても俺、魔法使えないし、魔法の根本も分からないからなぁ……なんかすげぇ紫色の魔力がラビコから見えるぐらいで、それが何の意味があるのかも分からないぞ」
「……そっか~……私さ、もっと強くならないといけないんだ。でも何をしたらいいのか分からなくて……お師匠に色々聞きたかったんだけど、姿も見せてもらえなくてさ~あはは……」
強く、ね。つっても俺じゃどうしようもないぞ。こっちが魔法を教わりたいんだっての。
エルメイシアさんがラビコに言っていたのは、俺の側にいろ、だったっけ? あとはラビコが望む力はラビコの中にあるとか……それ結構無意味な問答じゃねぇの。いや、俺の理解力が足りないだけなのかね。
まぁあの人も後半、ラビコにとって一番の壁になるのは俺の周りに女がワラワラと寄ってくることだ、とかどこまで本気で聞いていいのか分かんねぇ感じだったしな……。
「……すまんな。俺じゃ力になれないかもな」
「ううん、気にしないで~。な~んか最近考えがまとまらなくて落ち着かなかったんだけど、今日社長を面白半分でいじったら気分転換出来てスッキリしちゃった~あっはは~」
っの野郎……でもまぁ、ラビコがいい感じの笑顔を取り戻したっぽいし、いいか。
宿に戻る途中、もう一度ラビコの魔力を見てみるが、その紫の魔力の中心が白っぽい……? その白い魔力に紫の魔力が覆いかぶさっている感じだろうか。
これが何の意味があるのか、今の俺にはさっぱり分からないのだが。




