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四十八話 うどんのあの子と二匹の鬼様

 

「うーん、条件が厳しいなぁ」




 冒険者センターの掲示板を見ながら俺は唸る。



 世界を見て回ろうにも、まずはお金が多く必要。


 才能無しの俺がどうやったって集めるのは無理そうか。最悪ラビコに借りれないか……いやいや、甘えんな。自分でやれる手段を取るべき。


 そして戦力の問題。


 俺は無力。ロゼリィは……連れて行っていいのか分からんが、まぁ宿屋の受付さん。無力。

 頼りになるのはラビコと愛犬ベス。


 こないだの蒸気モンスターとやらが出たら、この二人がいないときつそうだしなぁ。




 パーティ強化の為の人員補給がしたいところだ。


 相場を知るためとりあえず掲示板で傭兵さんの値段調査。


「あ、これハーメルじゃん。まーだ当方屈強ファイターって書いているのか。いい加減動物パレードの主って書けばいいのに」


 強そうな人はさすがに高いなぁ、まぁラビコほどではないがね。アイツ吹っかけすぎだって。一日一万G日本感覚百万円ってどんなだよ。一番高い人で一日二千Gぐらいだってのに。


「無理。払えねえわ」





 落ち込みながらセンターを出る。


 何をするにも金金金金。どこの世界でもここは変わんねぇのな。



「はぁーただいまー」


 今日も宿の食堂兼酒場は混んでいるなぁ。


 しかし本当に女性客が増えたな。


 話題だから、の一回きりのお客さんじゃなくて、しっかりリピーターが多いのがイケメンボイス兄さんのデザート開発能力のすごさだな。毎日違うデザートを値段安めの日替わりセットで出しているのがうけたようだ。


 カウンターから一番遠い、隅っこの席で大きな帽子を被った女の子がプルプル震えているのが見える。なんだありゃ。



「美味しい、なんですのこれ! これが噂のジゼリィ=アゼリィ。昔はただの酒場でしたのに……この変わりよう。一体何が……」


 帽子の女の子と目が合った。あれ、あの子うどんの……。


「あーー! 見つけましたよ、オレンジ服! あれから何度かうどん屋で待っていましたのに全然こないんですから!」


 やっぱりうどんの子だ。


 待っていた? 会う約束してたっけ? 覚えがないが。



「お、久しぶり。安くて美味しい物、いっぱいあったろ」


 相変わらず服、小物、靴と質の良さそうなもの着てるな。


「そうですわね、師匠の言葉は間違っていなかったですわ。この街ですら何店かありましたし」


 師匠? 


「ね、師匠。ここのデザートがすごいんですの。街で噂になっていましたから来てみたのですけど、見たことの無いデザートがいっぱいあって、もう心がドキドキですわ! 値段も安くてこの独創性、一体どんな優秀なシェフを雇ったのかしら」


 おおーベタ褒めだ、やりましたねイケボ兄さん。


「いや、シェフというか調理している人は変わっていないよ。メニューを変えただけかな」


「え? でもここって酒場で、味の濃いぃ物とかで溢れていましたわよね? 急に路線変更したみたいなので、てっきりシェフを変えたものと……」




 俺はお弁当販売から女性客開拓のためのデザート開発の流れを簡単に説明した。



「へぇーそういうことでしたのですね。酒場という印象が強かったもので、この変化には驚いたのですけど、まさか師匠がアドバイザーでしたとは」


「ほとんど調理の兄さんの実力だよ。俺はアイデア出しただけ。毎日頑張って作り続けている兄さんに頭が上がらないよ」


 実際、イケボ兄さんのデザート開発能力の高さにはびびる。俺は毎日驚いているし。




「師匠もここの常連なのですか?」


「まぁ、そうなるかな。というかここの客室に住んでる」


 安いアパートでも借りればいいんだろうけど、ここ居心地よくてなぁ。


「なるほど、では師匠に会いたくなったらこちらに来ればいいのですね。よかった、やっと繋がりましたわ」


 アンリーナだっけか。背が低いから子供かと思っていたけど、俺と同じか一個下ぐらいかね?


「では師匠、ごきげんよう」


 アンリーナが笑顔で帰って行った。






「師匠ですって、ふふ」


「社長~年下に手を出したか~」



 背後に強者のオーラを放つ二匹の鬼が迫っていたことに気付いたのは、右肩左肩を強く掴まれた後だった。










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