四十六話 王都の学校様
「ネットが見てぇ」
いつも当たり前のように見ていた情報が見れないってのはストレスが貯まる。
あの超大作ゲーム、開発どうなったのかなぁ。
「ねっと、ってなんですか?」
ロゼリィが紅茶をお盆に乗せ、真横に立っていた。
食堂で本を読んでいた俺を見つけ、お茶を持って来てくれたようだ。
「な、なんでもない。ははは」
「あーもしかして、エッチなものでしょう。ラビコが言っていました。あなたは頭の中がえっちなことでいっぱいだって」
なにを言っているんだあのキャベツは。自分の格好を良く見てから言え、と。
ロゼリィが静かに紅茶を俺の前に置き、定位置の俺の左側へ座る。
「そりゃーたまには考えるけど、いっつもじゃあないよ」
「ふぅん、じゃあたまに誰のことを考えるのですか?」
ぶっふ。最近ロゼリィ突っ込んで来るようになったなぁ。怒ったような顔でじーっと俺の顔を見ている。
ピーヒュロロロロ~ヒポッ。
宿屋の近くで笛の音が聞こえ出した。
「な、なんです? 笛?」
よしナイスだハーメル。近くで動物大行進が行われているようだ。つかあれ、金取れる見世物だぞ。
そしてまだパーティ集まってないのか。今度動物系の仕事あったら誘ってみるかな。
「さって、話題変えてと。今、本読んでて思ったんだけど、学校って無いのかな」
本来俺は高校一年生。学校に通っていた。
でもこの街の子供達を見ていると、学校に通っているところを見たことが無い。確かにこの街に学校っぽい施設は見当たらないしなぁ。
「学校、ですか。それは勉強をするところ、ですよね。それなら王都にありますよ」
やはりこの街には無いのか。
「王都には各地の優秀な人が集まり、日々切磋琢磨の厳しい修行が行われているとか。国を守る騎士や魔法使いになる為の学校があって、入学するだけでも厳しい入試倍率だそうです」
ほえーどこの世界でも同じなんだなぁ。そういや俺のマントを運んで来てくれたリーガルはその王都の騎士なんだっけか。
「お、なんだい~王都に興味があるのかい~?」
イケメンボイス兄さんの本日のオススメデザートセット、ホイップホットケーキを笑顔で俺の右側に並べ出したラビコ。ふわっとしたホイップクリームが美味しそう。
「にひひ~あげないよ~これは私の好物だからねぇ~」
どうやら俺は余程物欲しそうな顔をしていたらしい。
「そういえばラビコはこの街に来る前は王都にいたんでしたっけ」
ロゼリィが紅茶の香りを楽しみながらラビコに聞いた。
王都の騎士リーガルが来た時、ラビコには終始敬語だったしなぁ。もしかしてラビコってこんなとこにいるべき人じゃないんじゃねーの。
「だから言ったろ~私は天をも操る大魔法使いだって~。王都には私専用の研究室があるぐらい好待遇なのさ~いわゆる神さ、神。あっはは~クリームおっいし~」
その専用研究室とやらには家庭菜園のキャベツがいっぱい並んでいるんだろうか。想像したら面白い。
「俺も魔法使いたいから、王都にある学校行けないもんかね」
「無☆理」
ラビコ即答。ちょ、ちょっとは悩めよ。
「無理無理~社長じゃ学費払えないって~あっはは。あと才能? 無☆し」
うわああああ! ひどくないか、今のひどくないか。
「王都の学校は~可能性のある人を育てる場所じゃなくて~もうすでに才能のある人を伸ばすところなのさ~。でも今度からは間口広げて、可能性ありそうな人も取る準備は進んでいるよ~。人材ってのはどこに眠っているか分からないからねぇ~武器の扱いの上手なひと、魔法の才能のある人はほっといても集まってくんだけど~」
ラビコがニヤァっと俺を見る。
「戦闘系以外の才能ってのを、見つけるのが大変なのさ~。ねぇ社長~」
さっき宿の前を通過した動物大行進の笛使いも戦闘系じゃない結構な才能だと思うぞ。
「そこで私はすごい人をみつけました~なんとその人の元には不思議と才能強者が集まるのです~」
なんだその便利君は。
「はい社長~それがあなたなんです~本人はクッソ弱いんだけど、うははは~」
なぁなぁさっきから俺酷いこと言われてないかな?
いや、いつもこんなもんか。
うん、慣れって怖いね。




