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11 異世界転生したら森の民がいたんだが

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四百五十一話 漂流? 近くの港街へ様


「ベッスベッス!」


「……んぁ……どうしたベス……」


 愛犬が寝ていた俺の胸に乗っかり、ぐいぐい顔を擦り付けてくる。


「ってもう朝か」


 船室の小さな窓から眩しい光が差し込み、愛犬の美しい毛並みを照らす。船室、そうここはアンリーナの大型高速魔晶船グラナロトソナスⅡ号の中。


 銀の妖狐の島を無事脱出し、俺はみんなの元に帰ってこれた。蒸気モンスターの水の種族に分類されるらしい銀の妖狐、彼の本拠地である島に命を懸けて助けに来てくれたみんなには感謝しかない。何かお礼を考えないとなぁ。


「……おはようございますマスター……とてもお似合いです……」


 それほど広くはない船室、眠い目をこすり愛犬を抱えて上半身を起こすと、目の前に女性の綺麗な太ももが。バニー姿で露出多めの無表情娘、アプティがそこに立っていた。一応寝る前に船室の鍵はかけたのだが……アプティには全く効かないんだっけ……。


 よく分からないが、アプティはどんな鍵だろうがするっと突破して部屋に入ってくるんだよな。


「おはようアプティ。……お似合い?」


 アプティが視線を合わさず、俺の頭あたりを無表情ながらもちょっと火照った感じでじーっと見ている。なんだ? と思い自分の頭を触ると、そこにはアプティが付けていたバニー耳が……。


「……素敵ですマスター……これが結婚なのですね……」


 そういや銀の妖狐の島でアプティにバニー耳をもらったな。島で俺のお世話をしてくれたメイド二十人衆の一人、短髪元気娘ドロシーが俺にガラスの指輪をくれたとき、ちょっとムスっとした感じでアプティが頭に付けていたバニー耳を渡してきたような。

 

 そしてそのあたりから結婚がどうのと言うようになったが、何なんだろうか。


「男が付けるもんじゃないだろ、これ……まぁいい、これはありがたくもらっておくよアプティ。街に着いたら代わりのバニー耳、新しいのを買ってやるから、人前でキツネ耳は出すなよ」


「……はい、マスター……嬉しいです」


 銀の妖狐の島で判明した驚愕の事実、なんとアプティはあの銀の妖狐の妹だそうだ。さすがにこの情報は表には出せないよな。ラビコが知ったらどうなるか……。まぁ蒸気モンスターだろうとなんだろうと、アプティは大事な仲間だ。なにがあろうと俺が守るさ。


 銀の妖狐や他の人型タイプの水の種族の蒸気モンスターと同じようにアプティにも自前でキツネ耳があり、人間に怪しまれないように普段は隠しているとか。出し入れ自由なのか……。


「よし、じゃあ船の食堂に行って朝ご飯にしよう」


「……はい、マスター。あの……出来ましたら今度、自分の耳を撫でて欲しいです……」


 俺は今はバニー耳もキツネ耳も無いアプティの頭を優しく撫で食堂へ向かう。




「あ、おはようございます。ぬるめの紅茶を用意してありますよ」


「お、ありがとうロゼリィ。さすが気が利くなぁ」


 船の食堂へ行くとすでにみんな揃っていて、ロゼリィが俺を見つけるとガタッと立ち上がり嬉しそうに駆け寄ってきた。


「今まで当たり前のように思っていた朝起きてあなたが来るのを待つという時間は、私にとってとても大事な時間なんだと思い知らされました。もう勝手に離れてはだめですよ……ずっと私の側にいて下さいね」


 数日ではあったが、俺はみんなと離れ離れになっていた。そのせいでだいぶ迷惑と心配をかけてしまったようだ。


「ああ、ごめんなロゼリィ。大丈夫、もうしないからさ」


「な~に朝から二人の世界を作り出しているんだか~」


 ロゼリィの頭を撫でていたら、つまらなそうに肘をついていた水着魔女ことラビコがぬるめの紅茶を一気に飲み干した。それ俺の紅茶……。


「そういうのは~今回一番の功労者であるラビコさんに、誰よりも先にやるべきだと思うんです~」


 火の種族の蒸気モンスターであるアインエッセリオさんと一緒とはいえ、ラビコは銀の妖狐の本拠地であるあの島に単身乗り込んできてくれたからな。そういう意味では一番の功労者なのかもしれない。


「そ、それを言うのなら私も頑張りました! 言いたくはありませんがこの船を出したのはこのアンリーナ=ハイドランジェ。そう、このアンリーナがいなければみなさんはここまで来れなかったと……!」


「あ、アタシもあの爪女のいい加減な案内がアテになんねぇからよ、頑張って夜の海の遠視をやっていたんだぜ!」


 テーブルについていた大きなキャスケット帽をかぶったアンリーナと、猫耳フード付きコートにゴーグルをつけ大股開きで座っていたクロが慌ててガタンと立ち上がる。


 いや、誰が一番とかいう場面じゃないな。みんな俺の為に命懸けで来てくれたんだ、一番とか二番とか関係ない。


「…………」


 後ろでバニー娘アプティが私も、と無言のアピールをしてくるが、あなたは俺を銀の妖狐の島に連れ去った張本人でしょうが。俺を守ろうとした行動だと理解はしたけど。


「そ、そうだな、みんな頑張ってくれたんだもんな。ソルートンに帰ったらそれぞれにお礼をしようと思って……」


「あ、師匠。大変言いにくいのですが、残念ながらソルートンへは帰れません」


 この騒がしい感じも懐かしくていいのだが、朝からトラブルはごめんなので無難に収めようとしたらアンリーナが真顔で一言。


 え? ソルートンに帰る為にみんな苦労して島まで来てくれて、俺だって銀の妖狐とアインエッセリオさんの説得を頑張ったんだけど、帰れないってどういう……。


「師匠を探しに船で出てきたのですが、残念ながら私達に師匠のいる場所は分かりませんでした。それであの蒸気モンスターの女性と交渉をし、結果彼女が微量の魔力を辿り銀の妖狐の島をみつけてくれました。しかし先程クロ様が言われたように、蒸気モンスターの女性は「あっちかのぅ、いやこっちかのぅ……」といささか不安定な先導をなされ、相当な時間海上を彷徨うこととなり、充分に積んだはずの燃料の魔晶石が尽きてしまいました」


 アンリーナが表情変えずに言うが、そういやラビコも島でアインエッセリオさんの誘導がどうのと文句言っていたな。


 そして燃料が尽きた……ってそれってもしかして俺達現在この大海原を漂流中ってこと……? それやばいじゃんか!


「あ、燃料が尽きたというのは、ソルートンに帰る分の燃料が無いということで、ここから一番近い港街への分は確保してありますので大丈夫です」


 そう言うとアンリーナが海図をずばっとテーブルに広げ、現在地を交え解説をしてくれた。


「現在地はソルートンから遥か南、花の国フルフローラの東の位置となります」


 なんとなく赤道の上辺りになるのかね。船内は魔晶石で動く冷房が効いているから快適だが、ジリジリくる日差しは南国だもんな。


「というわけで我々は燃料補給をすべく、向かっているのはソルートンではなく花の国フルフローラとなります」


 そうか、早く家があるソルートンに帰りたいが……燃料が無いのなら仕方がないか。花の国フルフローラは紅茶を求めて一回来たのと、デゼルケーノに行くときに通ったな。


 ロゼリィが好きな国だし、お礼含めちょっと観光旅行でもしていきますかね。



「もうあと一時間もかからず、花の国フルフローラの最大の港街であるビスブーケに到着いたします。船の補給と、我々の休養も兼ね、あとは師匠と私の愛を深めるために多少の観光プラス愛の肉体関係を築くために滞在してもバチは当たらないのではとっ……!」


 アンリーナが後半鼻息荒く熱弁するが聞き流すとして、前半部分は賛成で休養はしたいところ。


「よし、みんなへのお礼を含め、ちょっと観光旅行と洒落込もうか。いざ花の国フルフローラへ!」


「はい! 嬉しいです、花の国フルフローラはお花が綺麗で雰囲気が大好きなところですので。あとやっぱりリーダーであるあなたがいるとばっちり締まりますね、ふふ」


「花の国フルフローラか~。ま~社長が行くって言うのなら行くけど~」


「フルフローラってぇと、あっつくて紅茶が美味いところだっけ。ま、キングと一緒ならどこでも行くけどよ、ニャッハハ」


「……紅茶……マスター、美味しい紅茶が私達を待ってくれています……早く行きましょう……」


 ロゼリィにラビコ、クロにアプティも乗ってきてくれたし、船の補給ついでに花の国フルフローラを観光といきますかね。







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