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9 異世界転生したら学校に通うことになったんだが

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四百十三話 ハイラの私怨記録と魔法より大事な物様


「だ、だって許せなかったんです! 昨日今日出会ったような新顔が私の先生に色目を使ってきて……」



 冒険者センターで行われる魔法使い転職試験を受けようと頑張っていたら、サーズ姫様が気を使ってくれ俺を騎士養成学校に短期で通わせてくれた。


 サーズ姫様側としては、現在検討中のペーパーテスト等では分からない才能の持ち主を受け入れる体制「一芸保持者」枠確保の為のデータ取りを俺でしたかったってことらしい。


 その参考データ記録役にハイラが名乗り出て、学校にいるあいだずっと笑顔で俺のお世話をしてくれたのだが、肝心のデータ取りはほとんど出来ていなかった模様。



 学校で行われた魔法実技授業で女生徒に向かった流れ弾をハイラに指示し魔法で弾いてもらったのだが、それ以降その女生徒と友人が俺と仲良くしてくれた。


 アリーシャとロージという俺と同い年の二人組。


 別に二人は色目を使って来たわけではなく、助けてくれたお礼がしたかったってことだろ。


「アリーシャさんが二十五回、ロージさんが十八回も先生に触ったんです! たったの四日間で……!」


 うーん、ハイラさん……そういうの全部カウントしていたんですか。


「初対面から四日で、か。数が多いな……」


 サーズ姫様がハイラの私怨報告を聞き眉をひそめ唸る。いや、あなたはこのノリに乗っからないで下さいよ。


 この悪ノリを止めてもらうにはサーズ姫様に突っ込めるクラスの人物、ラビコ……はないな。あいつはむしろ面白方面に突っ切る。


 ここは新たな戦力、クロだ。


「あ? おいアタシは違うぞ! 確かにキングの側にいる期間は昨日今日かもしんねーが、遠くからウロウロ付きまとっていた期間入れたら結構なんだぞ! ああ、犯罪者一歩手前どころか一歩踏み入ったクラスの付きまとい……」


 助けを求め同じお姫様である猫耳フード装備のクロにチラリと視線を送ったら、大慌てで早口トーク。


 ちげぇって……昨日今日の新顔って言えばクロもって意味じゃねぇって。あなたのお姫様って地位を生かしてサーズ姫様を止めてくれってことなんですが……。



「……とまぁ冗談はこの辺りにしてだ。ハイラインの報告書ではどうにも偏見や私怨が多くて情報がまとまらなくてな。ここは直接本人に意見を聞こうと思って君を呼んだ次第だ」


 良かった。サーズ姫様が自ら我に返ってくれた。


 えーと、学校に通ってみた感想でいいのか?


「さすがというか、騎士養成学校の設備は充実しているし、規模も素晴らしいと思います。学生の士気も高く、上を目指そう、絶対騎士になってやるんだみたいな気迫を感じる生徒も多くいました」


 ハイクラスの騎士学校に通えるだけあってプライド高そう、って意味も含まれるが。


「真剣に騎士を、上位を目指している姿は良いと思うのですが、その分余裕みたいな物は感じなかったです。そこに俺みたいな異端、魔法も使えない半端者が入ってくると、足手まといには関わりたくない雰囲気というか、部外者っていう視線が結構きたかなぁと」


 そこまで騎士にならなきゃ、みたいな気迫を感じない、学生生活を楽しみつつ成績を維持しているアリーシャやロージみたいのも当然いたけど。


「なるほど、余裕……か。騎士養成学校に通う者は代々騎士をやっている家系の者が多く、親が騎士なら当然子も騎士に、という風潮が見られてな。よく追いつめられたような表情の学生を見たよ」


 サーズ姫様が抑揚なく言うが、代々、か。そりゃあ子供に選択権はなさそうだな……。


「それと予想通りではあったが、やはり厳しい視線を向けられたか。いやすまない、実際に嫌な思いをした君にやはりあったか、は失礼だな。データ取りを押し付けた上、辛い思いをさせてしまい申し訳なかった」


 いや、こういうのはどこでもあると思いますよ……ってサーズ姫様が思いっきり頭下げてきたぞ。


「か、勘弁して下さい……俺なんかを騎士学校に通えるよう手を回してもらって、サーズ姫様には感謝しかないですよ。冒険者センターでの試験には落ちてしまいましたが、学校に通うことでアリーシャとロージという大切な友人と出会うことが出来ました。魔法使いの試験に受かるよりもっと大事な物を手に出来、俺にはプラスしかなかったです」


 元から試験に受かるとは思っていなかったし……はは……。


「魔法を使えるようになることより大事な物、か……君はすごいな。いや、だからこそ多くの人を惹き付けるのだろう。君はこれからも何者にも染まらず、真っ直ぐ自分の道を歩んでほしい。これぞ私が惚れた男、君こそ英雄の心を持つ男」


 サーズ姫様が男なら百パー落ちる優しい笑顔で俺の手を握ってくる。至近距離でこの笑顔はヤバイ。百戦錬磨である俺でも……あ、いや童貞の俺なんか瞬コロっす。


「おい変態、調子に乗んなよ~。社長は基本誰にでも優しく接するからよく勘違いする女がいるんだよ~。うちの社長の未来予想図に入っていない女はすっこんでな~あっはは~」


 サーズ姫様とぼーっと見つめ合っていたら、水着魔女ラビコが不機嫌そうに間に入ってきた。お、助かった……おかげで我に帰れたぞ。


「チッ……邪魔が入ってしまったか。もう少しで二人の間に結果強い子が生まれる行為が出来たのだがな。感想が聞けて助かった。一芸枠の問題点も見えてきたし、対策が必要なことも分かった。制度実装にはもう少し話を詰めないとならんな」


 軽い舌打ちをしたサーズ姫様が俺の手を離し、間に入ってきたラビコに鋭い視線を送る。


 ハイラの書いた報告書に何やら軽く書き込み、最後にサインをし豪華な箱に入れる。それを見たハイラがほっとした顔で胸を撫で下ろしているが、お仕事が完了したってことなんだろう。


 もう少しで結果強い子が生まれる行為が出来た、か。


 あれかな、やっぱエロいやつかな。まぁサーズ姫様の冗談なんだろうが、俺の心にしっかり今のボイスを録音し刻んでおいて、夜に頑張る時使わせてもらおう。




「魔法を使えるようになることより大事な物、か……やっぱすげぇなキングは……」


 

 サーズ姫様と別れ二階の借りている部屋に戻る途中、何事か真剣に考え込んでいたクロがぼそっと呟いた一言が少し気になった。


 



 








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