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【書籍化&コミカライズ!】異世界転生したら愛犬ベスのほうが強かったんだが ~職業街の人でも出来る宿屋経営と街の守り方~【WEB版】  作者: 影木とふ「ベスつよ」②巻発売中!
9 異世界転生したら学校に通うことになったんだが

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四百十話 結果引き続きの街の人と荒れるお疲れ様宴会様


「はい、それでは~社長の引き続きの職業「街の人レベル2」を祝ってかんぱ~い! あっはは~」



 お城の前に作ったカフェジゼリィ=アゼリィ。


 そこの三階の大部屋をオーナーの娘であるロゼリィが特権で抑えてくれ、俺に気を使い試験お疲れ様会を開いてくれた。


「か、乾杯……い、いえ、ほら、ソルートンでも試験は受けられるみたいですし、焦らなくてもいいのではないでしょうか……。それにあなたは冒険者より、宿の若旦那がお似合いかと思います!」


 ロゼリィが豊満なボディを揺らし励ましてくれる。


 俺は落ち込んで暴走したフリをして泣きながらその胸に飛び込んでやろうか、と画策するがハイラが俺の左腕に絡んで上手く動けず実行出来なかった。


「だから冒険者センターの判定なんて気にしなくていいんですよ先生! 詐欺まがいの機械で一瞬計って判定とか、笑っちゃいます。先生の素晴らしい才能はあんなサビ鉄では計れないんです」


 なんというか、ハイラは以前から冒険者センターに風当たり強くないかね。俺をフォローしようとして、わざと言っているのかもしれんが。



 え、転職試験? 落ちたよそんなもん、あっさり。


 今朝冒険者センターの会場で試験受けて、即結果出た。ペーパーテストはさすがハイラにアリーシャ、ロージが傾向と対策を立ててくれ、それがほとんど当たり合格。


 しかし実技試験で魔法が放てず、しばらく広場で必死に色んな地球のヒーローのポーズ決めて唸っていたら職員さんの失笑と共に落ちた。


 特に語ることもない、ナレーションベース一枚絵振り返りで十分なレベル。


 お昼には結果も出終わり、お城の部屋の隅で壁に向かって「街の人:2」と表記されたままの冒険者カードを「魔法……魔法」とブツブツ呟き眺めていたら、見かねたロゼリィがお疲れ様会の準備をしてくれ今十九時ってとこだろうか。



「結果なんて受ける前から分かっていたのに~社長ってば未練たらったら~おっかし~あっはは~」


 ラビコがゲラゲラ笑いながらお酒片手に絡んでくるが、当日その場で能力に目覚める転生者物語を俺は何本も読んできたんだよ。俺にはなかったけど。


「……マスターを守るのは私……あとはこの犬。魔法はなくても大丈夫です……」


 バニー娘アプティが紅茶を俺に渡しつつ愛犬ベスを指す。


 いやまぁ、それはありがたいんだけどさ。俺だって自力で皆を守る力が欲しかったんだよ。あと格好いいじゃん、魔法って。


「ほんと、不思議な男だよなキングって。一人で千年幻ヴェルファントムと数分タイマン張れるほどの力の持ち主なのによ、本人は魔法一個まともに使えねぇとかバランスおかしくねぇか? ニャッハハ」


 クロが骨付き肉を食いながら笑うが、間違いのないように言うと、千年幻相手に数分タイマン張れるじゃなくて逃げ回れる、な。数分ってくくりは単に俺の体力の限界がそれしか保たないってことだぞ。運動不足……まぁ情けない。



「はぁ、正直受かるとは思っていなかったし、落ち込むのもおかしな話か。ロゼリィ、気を使ってくれてありがとうな。今日は俺がおごるから好きなだけ騒いでくれ」


 気持ちに区切りを付け、楽しむ方向にシフト。


 ソルートンにだって冒険者センターはあるし、そこでも定期的に転職試験はやっているみたいだし、タイミングをみて再挑戦してみよう。


「さっすが社長~さぁみんな食うぞ~!」


 ラビコが吼え、メニューからお酒を中心に連続注文。しかも高い系狙い撃ちしやがって……この中で一番金持ちのラビコにおごる必要はない気がしてきたぞ。



「あー魔法使いになりてーなぁ……」


 俺はカフェジゼリィ=アゼリィ大部屋、三階の窓から日もすっかり落ちたペルセフォス王都を眺める。


 一階二階はお客さんで大混雑中。今の十九時過ぎはお城の日中勤務の騎士さんが帰る時間なので、それ系のお客さんが多く、お肉系がよく出る。騒がしい店内には笑いが絶えず、スタッフさんフル回転。


 お店の外まで行列が出来ているから大変か……ってあれ、その行列に並ぼうか悩んでいる女性二人組は見覚えが。




「こ、ここだね……いつもながらすごい混んでいるね……」


「う、うん……これ並ぶのはキツイなぁ。でも他に手がかりないし、行くっきゃないか」



 俺はお店を出て女性二人組に近付く。


「よお二人共。カフェジゼリィ=アゼリィへようこそ。夕飯か? なら俺がおごるぜ」


 驚いたように振り返る女性二人組だが、俺の顔を見てぱぁっと笑顔になった。いつも学校の制服だったから、私服の彼女達を見るのは初めてだな。


「あ! いた! よかったぁ、友達に聞いたらここのカフェにいるのを見かけたって聞いたから来てみたんだ」


「こ、こんばんわ……あの、そのオレンジの服すごく目立つね……」


 気の強そうな子がアリーシャ。もじもじしながら俺のオレンジジャージを指してきたのがロージ。二人共、昨日まで学校で仲良くしてもらった二人組だ。


「胸元君もご飯食べに来ているの? ここっていっつも混んでいてすごいよね。でもこの行列に並ぶ価値があるぐらい、味が美味しくて安いって学校でも評判なんだよー」


「わ、私……先週家族で来たんだ……すごく美味しかったなぁ……」


 お、ロージさんご来店感謝。


 二人共私服かわいいなぁ、化粧も軽くしていて、学校とはまた違った雰囲気だ。


 アリーシャは腰あたりがゆったりめで足首あたりが細くなったズボンにパーカー。ロージがヒラヒラスカートに、これまたヒラヒラがいっぱいついたシャツ。


「あ、いやここ知り合いのお店で、俺ここの雇われオーナー代理なんてやってんだ」


 そう言うと、二人が目を見開いて俺に迫ってきた。


「ちょ……! あなた私達と同い年だよね!? 王都のお城の目の前の一等地にこれだけ大きなお店出せるって……あなたどこの金持ちの子供なの!?」


「す……すごい……! 私達なんかよりよっぽど胸元君のほうが将来に向かって進んでいるんだね……」


 さっき言ったが、俺は雇われオーナー代理な。アリーシャの言葉に当てはまる子供は、カフェジゼリィ=アゼリィのオーナー夫妻のお子さんであるロゼリィになるな。


「ま、まぁ色々あってな。はは……」


 どこまで説明すりゃいいのか悩む。


「そ、それより試験は!? 受かっ……た?」


「……魔法使えなかったけど、なんとかなったの……?」


 二人がマジで心配そうな顔で聞いてくる。俺が学校をやめたから二人との関係は切れたかと思っていたが、気にしてくれていたのか。しかも探して来てくれるとか……ありがてぇ。



「落ちた」


 俺が笑顔で言うと、二人も気まずそうな笑顔で固まる。まぁもういいんだ、次また頑張るさ。




「え、い、いいの? 夕飯ごちそうになって」

「……嬉しい……胸元君とご飯だ……」


 立ち話もなんなので、二人を宴会に誘った。見慣れないメンバーで驚くだろうが、ラビコにハイラがいるから色んなお話聞けるだろ。



「あ~社長ってばトイレなっが~い……ってこの短時間でなんで二人も女調達して連れ込んでんだ~!」


 三階の大部屋に入った途端、ラビコの怒声が。


「ち、調達って……学校でお世話になった二人だっての」


 ラビコが高級酒瓶(空)を両手に装備し、魔法使いのくせに二刀流の達人がごとく酒瓶をブン回して襲ってきた。この酒好き魔女……もう酔ってんのかよ!


「……マスターは今心が弱っています。女の体に癒しを求めるのも理解出来ます……」


 バニー娘アプティが無表情にラビコの酒瓶二刀流を素手で受け止める。さすがアプティさん、近接戦闘は頼りになる。


 あと、俺を勝手に女に逃げたみたいなキャラ設定にしないでくれないかな。



「はぁ~? だったら私に来いよ~! なんで正妻ほったらかして現地の愛人連れ込んでんだ~!」


 な、なんだ……何かラビコ荒れてないか……?


 連れてきて早々この騒ぎ。ラビコが脅すもんだから、二人がポカンと口を開けて震えているじゃないか。



「キングさぁ、乙女心ってやつを理解しないとヤバイって。アタシもそうだけどさ、キングが学校に行っている間の五日間、みんなキューンって寂しかったんだぞ。ラビ姉は我慢出来ずに学校に押しかけて講師なんてやったぐらいだしよぉ。そこに新人の愛人連れ込まれたときたら、なぁ?」


 クロがささっと近寄り耳打ちしてくれたが、あ……そういう……そこは考えが及ばなかった。どうにも自分のことばかり考えていたな……反省……。


 確かに俺が学校に行っている間、みんな何していたんだろう。



「すまなかった。学校に行っている間、みんなに寂しい思いをさせてしまった。悪かったよ、ラビコ」


 俺はラビコに近寄り、頭を優しく撫でる。すると肩で息をするほど荒れていたラビコがシュンと大人しくなり、俺に力いっぱい抱きついてきた。


 さ、酒瓶が腰に食い込んで痛てぇ……。


「……寂しかった……でも分かってくれたのならそれでいいかな~あっはは~」


 ラビコがいつもの笑顔になり、機嫌を直してくれたようだ。よかった……。


 ふとラビコの後ろを見ると、ロゼリィにアプティにクロがずらっと一列に整列。なにやら順番待ちをしているご様子。え、これ一人ずつやんの……そして愛犬ベスまで並びやがった。


 

 連れてきたアリーシャにロージが、この意味不明な状況にさらに驚き言葉を失っているじゃないか。


 早く二人の現地調達愛人疑惑を晴らし、学校でお世話になった友人であると名前入りで紹介したいんだが……。







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