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9 異世界転生したら学校に通うことになったんだが

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四百三話 ラビコ&クロ先生の面白私欲特訓と騎士養成学校様


「……で、どうやったら手から火柱が出せるんだ?」


「社長さ~まだ街の人なのに理想が高すぎ~」



 お城のいつもの部屋に泊まり翌日、朝食後。


 俺はラビコの研究所前のちょっとした広場で火柱イメージトレーニングをする。


「とりあえず~街の人から魔法使いに転職するには~ある程度の魔法知識を問われるペーパーテストと実技試験があって~社長ってば魔法を一切使えないから実技で必ず落ちるのが確定しているけど~ラビコさんは社長を見捨てないよ~。落ちるの確実な記念受験でも頑張る姿が面白……いや、努力って美しいよね~あっはは~」


 ラビコが俺の頭をポンポン叩きながら笑う。


 くそぅ、なんで転生者である俺が魔法すら使えず苦労せにゃならんのだ。


「そんなの分かんねーだろ。独学じゃダメだったけど、一流の魔法使いであるラビコに習えば俺が覚醒するかもしれないし。というわけでよろしくお願いしますラビコ先生!」


 ラビコが世界屈指の大魔法使いなことは間違いないし、机上の空論ではなく、実際に十年近く蒸気モンスター相手に戦い抜いた歴戦の勇者だしな。その言葉や魔法にはとても重みがある。



 聞いたとおり、魔法使いに転職するにはペーパーテストと実技試験があるそうだ。


 ペーパーテストは後回しとして、実技試験では実際に魔法を使わないと合格出来ない。そして俺は一切魔法が使えない。


 このままでは受かる可能性ゼロなので、大魔法使いであるラビコに泣きついたってわけだ。



「おほ~それいいね! 最後のとこもう一回言って社長~ね~ね~」


 なんだかラビコが上機嫌に右腕に抱きついてくる。もう一回? なんだよ一体。


「よろしくお願いしますラビコ先生……」


「うっは~なんかゾクゾクする~これちょっといいかも~あっはは~」


 さっきから何言ってんだこの水着魔女は。


「もう一回~、ね~社長~ホラ上目遣いの涙目で怯える感じで言ってみて~」


 なんか調子に乗ってきたぞ。こっちが習う立場なんだけど、かといって過剰な要求は却下だ。



「もうやんねーって。時間もねーし、はよ火柱頼むわ」


 聞くと一番近い転職試験が行われるのが六日後。さっさと魔法使えるようになってペーパーテストに備えたいんだよ。


「ちぇ~社長はもっとラビコさんを普段から敬うべきで~言葉遣いとか~態度とか~もっと下からくるべきだと思うんです~。その上毎日のマッサージとか~肉体的な奉仕もするべきだと思うんです~」


 あー、ラビコがゴネだしてしまった。実績だけはすごいけど、面倒な先生選んじまったのかな。


 ラビコのことは尊敬しているし、俺の目指す格好のいい大人ではあるのだが、普段の性格が面倒。面白さ最優先で、俺のことオモチャにしてくるし。


「っていうか~さっきから火柱ってなにさ~」


 いやほら日本男児の憧れ、勇者の魔法を除けば単体最強級呪文であるメラゾー○ってのがあってな。俺のイメージとしては、手から火柱みてーな火の塊が飛んでいく感じなんだが。



「アタシも手伝うぜ。キングにゃいくらでも恩を売っておきてーしよ、ニャッハハ」


 壁際の豪華なベンチに座っていたクロが立ち上がり近付いてくる。


 ベンチにはロゼリィにアプティ、ハイラもいるのだが、なんか付き合わせてしまって申し訳ないな。愛犬ベスは楽しそうに俺の周囲を走り回っているが、万が一火柱が出たら避けろよ。


「マジか! 助かるよ、クロ……ってこれすごくないか。世界的に名の知れた大魔法使いであるラビコに、魔法の本場であるセレスティア王国の王女様であるクロに魔法を習えるとか奇跡の講師陣だろ」


 こんな状況、いくらお金払っても用意出来ない環境な気がするぞ。


「あっはは~そうだぞ社長~こ~んな恵まれた状況、世界で社長だけしか味わえないんだからな~。これほどの環境を生かせないような、生徒がド無能じゃないことを祈るばかりだね~あっはは~」


 ラビコが俺の背中をバンバン叩きながら大爆笑。


 くそ、転生者をなめるなよ。苦労無くラビコを超えるような魔法使いになってやる。



「うう、羨ましいです……ラビコ様は世界に名を馳せる魔法使いなのですが、弟子を一人もお取りにならないんです。ラビコ様に魔法を習いたいと多くの魔法使いが世界中から集まりましたが、全て断られていましたし」


 ハイラが美味しいものを取り上げられたような子供のような顔をしているが、そういやラビコって弟子がいるとか聞いたことないな。


 一応クロが家出の理由として大魔法使いであるラビコに習うため、となっているが、これってよっぽどすごいことだと受け取られるのか。今まで誰も弟子を取らなかったのに、初めて直接教える弟子を受け入れた、と。


 まぁ……魔法の国に自称ラビコの弟子を名乗っている、ノイギア=ギリオンっていう野菜仲間の女性はいたが。




「それ~走れ走れ~! あっはは~」


「ふぬぁああああ!」


 走る走る 俺は走るよどこまでも。


 野を越え山越え海を越え ラビコを背負いどこまでも。


 背中に伝わる二つの柔きものをエネルギーに変え 走る走る たまにお尻も触っていいのかな 走る はshあああああ重い重い重いぃ! 女性に失礼? 知るか重いのは重いんだよ!


「おいラビコ……! これ本当に魔法の特訓なんだよな! ひたすらヒザが痛ぇんだけど!」


 大魔法使いラビコ様の魔法指南「レベル1」:ラビコを背負って走ろう! を実行中。本当にラビコを背負い、ラビィコール研究所の周囲を走るというものなのだが……。


「はぁ~? ったりまえだろ~どんなことにもまず体力~基本基本~あっはは~先生って呼ばなかったからラスト一周追加~」


 確かに基本は大事だがよ、こんな地味な特訓を求めていたわけじゃないんだが。苦労なくドカーンと魔法が使いてぇんだよ!



 大魔法使いラビコ様の魔法指南「レベル2」:ラビコの肩を揉もう!


「ど、どうでしょうかラビコ……先生。力の加減など……」


「あっはは~、ん~才能無いね~さっきっから胸にばっか目がいっているし~。不合格~」


 椅子に座ったラビコの背後から肩を揉む。


 あんまやったことないから力加減がさっぱり分からん。上から望むラビコのお胸様の形が綺麗で綺麗でつい手を伸ばしそうになる。つーか、さっきの走って体力ってのはギリ分かるが、これは本気で魔法訓練と関係なくね。



 大魔法使いラビコ様の魔法指南「レベル3」:ラビコの体を洗おう!


「おいふざけんな! 明らかに魔法関係ねーだろ!」


「だから~まずはラビコ先生をいい気分にさせてからじゃないと~。弟子が先生の身の回りのお世話するのは当たり前だろ~? ホラ、研究所にお風呂あるから~そこで二人きりでじっくりねっとり全身を洗ってもらって~……」


 だめだ、この先生。私欲が強すぎる。


 ロゼリィもガタンと立ち上がって鬼になりかけているし、わがまま先生は解雇だ。



「クロ先生! やはりここは魔法の本場、セレスティア仕込みの魔法指南をよろしくお願いします!」


 俺はラビコを見限り、猫耳フードにゴーグルがトレードマークのクロに頭を下げる。


「おういいぜ、流れは理解した。んじゃ、ここからはこのクロ様が教鞭を取ってやるぜ。ニャッハハ」


 クロがニヤと笑い、俺の弟子入りを認めてくれた。流れ? 



 セレスティア王国クロックリム王女様の魔法指南「レベル1」:クロの夢を叶えてあげよう!


「じ、じゃあキングはアタシをお姫様抱っこ……」


「……おいクロ。一時的に得た先生という立場を利用して俺で遊ぼう、とかそういう流れじゃねーぞ。しかもなんだよお姫様抱っこって。お前不良っぽいわりには子供っぽい夢持ってんのな」


 本物のお姫様をお姫様抱っこって、そういうギャグかよ。言動がザ・不良のクロにかわいらしいこと言われると、ギャップで愛らしく見えるぞ。


「う、うっせぇな! いいだろアタシがどんな夢持っていたってよ! いいからヤんのか!? ヤんねぇのか!? あ、分かったぞ……怖ぇんだろ? キングはまだ女を抱いたことがねぇみたいだし、どうせヤる直前にド緊張で萎えて立たねぇに決まってる! 足腰が!」


 うむ、よくぞ最後にキチンと足腰が、と言った。それ言わないと色々まずい発言だからな、俺への。


 色々説明が足りないクロの発言の解説をすると、お姫様抱っこをする直前に、これから女性を抱き持ち上げるという緊張で足が震え、気持ちが萎えて腰に力が入らないんだろってことを言いたかったらしい。……大丈夫だよな?



「はは、何か面白いことをしているみたいじゃないか」


 講師陣に恵まれず、ラビコとクロと俺で揉めていたら背後から聞き慣れた声が。


「本性がバレた以上、ここからはさらに積極的に行かせてもらうぞ。ハイラインに聞いたところ、君は今魔法使いへの転職を目指しているとか。ならばラビィコールのふざけた茶番になど付き合わずとも、寄り道無く最短距離で知識と経験が得られる方法があるぞ」


 にこやかな笑みで現れたのは、ビシッと姿勢良くペルセフォス王国の制服を身に纏ったサーズ姫様。うん、ラビコと違ってやはり普段のサーズ姫様は格好がいい。


「なんだド変態~よくも恥ずかしげもなく社長の前に出てこれたもんだな~。普段の真面目な感じが演技でしたってもうバレてんのに~あっはは~」


 ラビコがまーた煽るが、サーズ姫様は表情も変えずニコニコ。


「問題ない。私が取る行動に変化はないさ。むしろバレたことにより、さらに積極的にいくことが出来る。もう隠す必要もないし、本当の私を彼に理解してもらったということは、今まで以上に深くつながることが出来るというものだ、はは」


 ああ、ふっきれましたかサーズ姫様……。


 いや、いいと思いますよ。王族のお仕事って俺なんかじゃ計り知れないぐらい精神的にキツイみたいだし、貯まるストレスも相当だろう。


 今のサーズ姫様は何も隠さず、とてもいい笑顔をしているし。


「君には一秒でも長く王都にいてもらいたい。そして私は君に心から気に入られたいし早く君に跨がりたいので、使えるものは全て使う。恩を売りコネを使い金を使い体を使い君を追い詰めたい」


 すごい内容の言葉をすげぇいい笑顔で言ってくるが……よ、よかったのかな……? ふっきれて……。


「う~わ……本音丸出し過ぎると社長が引いちゃうよ~最低限、理性ある人間であるという体は崩すなよ~」


 さすがのラビコも引いているが……。



「おっと、まだ調節が上手くいっていないか、はは。要するに、私の権力を使い、君をペルセフォス王国が誇る施設、騎士養成学校に短期入学させてあげよう、と言っているのだ。そこでなら、即戦力レベルの知識と経験を短期でも得ることが出来る。冒険者センターでの転職試験などたやすく突破出来るであろう」


 騎士養成学校? そういやお城の一番街側、七枚目の城壁のところに大きな学校があったな。確かハイラがそこ出身だっけ。



 なるほど……面白半分なラビコ達に習うより、超実戦向きな騎士学校で習うってのはアリだな。


 そのお話、詳しく聞いてみようか。






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