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8 異世界転生したら火の国があったんだが

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三百九十二話 砕け散った青年騎士様


 ペルセフォス王国聖なる祭典。


 遥か昔、初代の国王様とその奥様がご結婚された、ペルセフォスにとって大事な日。


 街は豪華な飾りで溢れ、聖なる日を祝う国民で王都はとても賑わっている。


 ソルートンでも何かイベントやっているのかなぁ。



 主に商店街や記念館、ペルセフォス城に多く人が集まり、国が出来た日を祝い昼から祝杯をあげているが、記念の日なんだからいいのではないだろうか。



「も、申し訳ありませんラビコ様! このアーリーガル=パフォーマ、どんな処罰も甘んじてお受けいたします!」



 中心街からちょっと離れた、ペルセフォス駅を越えた先にある歓楽街。


 このあたりは下町的な雰囲気で、基本ソルートンの五割増しから二倍ぐらいの物価のペルセフォス王都で、ソルートンに近い安めの値段設定のお店が多い場所。


 といっても二割から四割増しぐらいだろうか。


 ちょっと雑然とした雰囲気で、安い飲み屋やエロ系のお店が多くある。



 その歓楽街でも大変目立つ建物が、このピンクのホテル。


 以前サーズ姫様に無理矢理連れ込まれそうになった、男女の思いが最高潮に高まったときにお互いを求め、その愛を育む為に比較的安価で場所を確保出来る専用の……ああ、ラブホな。


 聖なる祭典を純粋に楽しむとすれば国が出来た日を祝うのだが、もうひとつの流れとしては、ハイラ曰く若い男女が浮足立つ日らしい。


 初代国王様と奥様の出会いにあやかって、若い男女が自分達もそういう関係になりたいと、この王都に漂う甘い雰囲気を利用してよりお互いが近付こうとする……ああ、やりたい、と普段より頑張って行動する日な。


 なので街中は手を繋いだ男女で溢れていて、当然このエロいホテルにも多くの男女が吸い込まれていっている。



 俺はそのピンクの建物の入り口でペルセフォス王国が誇る隠密、イケメン王子風のモテメン、リーガルと二人仲良く地面に正座し、この国の国王と同じ権力を持つという水着魔女ラビコにお説教を受けている。


 王都でのラビコの知名度、人気は絶大で、通りがかりの若い男女が驚いてラビコを二度見している。彼等の気持ちを代弁してみようか。


 な、なんでラビコ様がこんな歓楽街のエロゾーンにいるの!? 


 だと思う。


 そして二人の男を地面に正座させ説教している状態。これ、通りがかりの人はどう解釈しているんだろう。


 リーガルだって王都じゃ名のある騎士だろうし、いいのだろうか。


 まぁ王都では無名の俺には関係ないことか。


 お説教はいいけどさ、お前等の体面上場所変えね? なんでエロいホテルの前で正座なんだよ。


 愛犬ベスはお風呂に短時間しか入れなくて、ちょっと機嫌悪いし。



「サーズ様に日頃から彼には出来る限り協力してあげて欲しいと言われていまして、それに加え僕自身も彼を尊敬していまして、学べることは学んでいこうと思っていた所存であります!」


 リーガルが地面におでこ擦り付けての土下座。


「はぁ~……ちょっと目を離すとこれだ。まさかリーガル巻き込むとはね~。社長さ~エロに対して行動力あり過ぎだって~」


 ラビコが呆れ顔で溜息を吐くが、何が悪い。俺だって健全な男の子。


 当然エロにはいつでも興味フルチャージ状態さ。


 若さゆえの個人の自由だろ……あ、俺が未成年って部分のお説教? それはまぁ、ね。でも俺はまだエロ本は買っていない。未遂ではあるが、堂々潔白である。


 あ、未遂だからお説教ですんでいるってことね。


 ああ、なるほど。



「最初何事かと思ったね~。ついにうちの社長の性欲が暴走して、男でも構わん状態になったのかと思ってさ~あっはは~。なんかお尻はやめてくれ、とか叫んでいるし~」


 それリーガルな。


 エロ本屋の場所をリーガルに聞き案内してもらったのだが、未成年はよくないとリーガルに言われ、じゃあ買ってきて欲しいと頼んだら渋られたから、過去にサーズ姫様のお尻をエロい目で見ていた事実で強請ったらリーガルが慌てて暴走しただけだっての。


 無理矢理長い一文で説明してみたが、ああ、全部俺が悪いな。



「仕事中に悪かったね~リーガル。うちの社長のワガママに付き合わせちゃってさ~。たま~に良いことは言うんだけど~基本がこの通りエロ少年だからさ~社長から学ぶ情報はちゃんと取捨選択しなよ~あっはは~」


 ラビコが正座してる俺の頭をぽんぽん叩きながら笑う。


「い、いえ彼のとても柔軟な思考と、一つのことに対する情熱はとても勉強になりました! サーズ様に彼から学べるチャンスがあれば、勤務中であろうと抜けても構わないと言われておりますのでご心配には及びません!」


 このエロ本道中記・男×男(熱)に何を学ぶところがあったというのか。リーガル君はその真面目過ぎる性格はちょっと崩したほうがいい。



「そ、それとこれは私が言える立場にないのは承知なのですが、ぜひともお願いが……」


「ああ、悪いけどさリーガル~女ってのは結構男の視線には敏感でさ~チラッチラ変態のお尻見てんのとっくにバレてるよ~? 余計なお世話で言うけどさ~あの変態姫に惚れるのはやめておいたほうがいいよ~。現実と理想のギャップで心やられるから、あっはは~」


 モジモジとリーガルがラビコに上目遣いでお伺いをたてようとしたが、魔女がそれを粉砕。


 なんだよ、リーガルのサーズ姫様のお尻凝視はとっくにバレてるうえ、年季入ったやつだったのかよ。そういや手慣れた感じで見ていたしなぁ。


「──────」


 あ、リーガルが白目剥いて固まった。


 ひどいなラビコ、純粋な青年騎士の恋心を一撃粉砕とか。


 俺には出来ねぇ。



 なんかすまんなリーガル。俺、主犯だけど無傷だわ。





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