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【書籍化&コミカライズ!】異世界転生したら愛犬ベスのほうが強かったんだが ~職業街の人でも出来る宿屋経営と街の守り方~【WEB版】  作者: 影木とふ「ベスつよ」②巻発売中!
8 異世界転生したら火の国があったんだが

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三百八十一話 想いを繋ぐために欲しい物様


「それではホテルに戻ります。お昼ご馳走していただき、ありがとうございました」



 王や騎士さん、料理人さん達に頭を下げ、俺にとって豪華なのか豪華じゃないのかよく分からない祝宴会場を後にする。


 いや、国の危機を救ってくれてありがとうという、その気持ちは充分に伝わってきたぞ。単に出してくれた料理の味とか見た目が好みではなかったというだけで、それは俺の我が儘だろう。


 目玉はさすがに……いや、俺の好き嫌いが激しい舌の我が儘なんだ……ろう。



「昨日夜着いて深夜には戦闘と、相当にお疲れだろう。我がデゼルケーノには有名な温泉が多数ある。ぜひその疲れを癒やしていって欲しい。滞在中、何か困ったことがあればすぐに私に言ってくれ。デゼルケーノの英雄の声には必ず応えてみせる」


 この国の王様であるロンデイネ=デゼルケーノさんが笑顔でそう言い、名のある騎士全員勢揃いでお城の外まで見送ってくれた。


 なんともすごい待遇だ。


 それほど砂漠の主、千年幻ヴェルファントムの被害はすごかったのだろう。



 騎士の数名が祝宴会場で俺の側に来て、古いものから新しいものまである数十枚の写真を見せてくれた。


 それは毎年撮っている騎士の集合写真らしく、写っている半数以上の騎士が砂漠で千年幻ヴェルファントム含む蒸気モンスターに果敢に立ち向かい、その命を散らしてしまったそうだ。


 彼等の想いがついに報われた、と涙ながらに語られた。


 俺が思ったのは、彼等はやはりこのデゼルケーノという国が好きなんだろうな、ということ。国が好きだからこそ、ここに守りたい物があるからこそ騎士になったのだろうし、逃げずに立ち向かった。それはとても格好いい姿だと思う。


 結果命を落としてしまったことは悲しいことだが、志半ばに倒れてしまった者の想いを継ぐ騎士達がこうしてデゼルケーノにはたくさんいる。


 集合写真は騎士全員が普段から持ち歩き、想いを繋いでいるそうだ。


 なんか自然環境は過酷なところだが、その分なのか、人の繋がりが強いところなのだなぁ。


 俺もペルセフォスに危機が訪れた時は、使える物全てを使って守りたいと思う。写真、そうだな、やはり写真は撮ったほうがいいんだ。



 身近の人の写真は撮っておこう。だってそれは想いであり、繋ぐ力なのだから。




「というわけで俺はカメラを買う」


 ホテルに戻る馬車の中、俺は高らかに宣言をした。



「は~? 社長さ~ロンデイネから温泉で疲れを癒やしていって欲しいって言われた後にその宣言ってさ~タイミングどうなの、それ~。絶対裸撮ろうとしてるし~」


 右隣りに座っている水着魔女ラビコが窓の下についている小さなテーブルに肘をつき、不満そうに俺を見てくる。


「いや、俺がここに来た目的がそれのはずだ。タイミングは事が一段落したからであって、何の他意もない。う、うん、ない」


 ち、さっきラビコも騎士達の写真を見ているだろうし、この流れなら買ったカメラの試運転にたまたま温泉で入浴中の女性陣の集合写真を撮れてしまうのかな、と思ったが……甘かったか。


 真面目な顔で言ったのだが、あっさり目論見がバレて、後半挙動不審になってしまったし。


「お? カメラ買うのか? いいぜ、馴染みの店あっから連れてってやるよ」


 付き合いの長いラビコはすぐに察し、的確に俺の浅はかな考えを言い当ててくるが、クロは昨日まともに話したばっかだから深く考えず乗ってきてくれた。よし、突破口はここか。


「そうか、馴染みってことはクロはデゼルケーノによく来ているのか? 情報ゼロで探そうとしていたから助かるなぁ」


 俺の正面のアプティの横に座っているクロ。


 パンクっぽい短パンから見える太ももが大変エロい。うーん、実にもったいないなぁ。結構な美人さんなのだが、髪がボサボサカットだったり、化粧をほとんどしていなかったり。


 う、クロの健康的な太ももをこっそり見ていたらロゼリィに左腕をつねられた。なんでこう俺の周りの女性陣は視線に敏感なのか。


「おうよ。アタシはこの魔晶銃を使うからよ、たまに来て部品とか買って整備してんだ。ちょっとした故障ならペルセフォスとかで手に入るパーツでチャッチャと自分で直せんだけどよ、お手上げんときはデゼルケーノまで来てんだ。まーおかげで金がいくらあっても足りねーの、ニッヒヒ」


 クロが苦笑いしながら腰の太いベルトに付けられたゴツイ二丁の銃を見せてくる。


 ゴツイながらも綺麗な装飾が施され、汚れもあまりなく、普段からしっかり手入れされているのが分かる。


「アタシは新しい物が好きでよ、数年前に確立された魔晶ウエポンってやつにガッツリ飛びついたんだ。いやー新しくて格好いいのは気分最高なんだけどよ、これがまた金食い虫で参ったぜ。撃つには当然魔晶石が必要だし、あっつーまに高価な魔晶石がガンガンなくなっていってよ……ニッハハ……ハァ」


 あれ、最初自慢げに魔晶銃を見せてくれていたのだが、次第に暗い顔になり下を向いてしまった。


「魔晶銃か、俺初めて見たよ。こういうのもちゃんとあるんだな」


「こういうの?」


 異世界にも銃とかあんのな、という意味でぽろっと言ってしまった。クロが不思議そうな顔で俺を見てくる。


「あ、いや、魔法を使えない人でも使える魔法武器ってことな。俺全く魔法使えないから憧れるわ、こういうの」


 慌ててフォロー。するとクロが笑顔になり、魔晶銃に頬ずりをし始めた。ちょっと……エロい。え、俺だけか? そう思ったの。


「そう! まさにそれよ。魔法が使えなくても主力級の火力を出せる救世主、それが魔晶ウエポンってやつなんだよ。いいよな……魔晶銃。ニッハハ」


 おお、やっぱ銃に頬ずりってエロいって。あーもう俺の性癖じゃあそう見えるんだって。極度の変態ですまんな。



 しかしクロは千年幻ヴェルファントム戦のとき、普通に魔法使っていたよな。


 魔法が使えなくても火力が出せる救世主、魔晶銃。家出中でお金がキツイ状況、本人は魔法が使えるのにあえて浪費の激しい魔晶銃を使う理由って何なのかね。


 銃が格好いいから? ああ、それならよく分かる。


 この世は効率が全てではない。本人が好きな物を使えばいい。


 効率で選んでいたら、全員が同じ装備に同じ能力で何にも面白くはない。そんな簡単に勝てるからと効率で選ぶハンコ野郎は、この世をとても上手に生きていくんだろう……ああ、うらやましい。


 でも俺はせっかく異世界に来れたんだ。日本じゃ出来なかった、効率で選ばず自分が好きな物、で周りを固めて生きていくさ。


 俺の目的は異世界での人生を全力で楽しむこと。


 苦労したっていいじゃないか。それが冒険だし、仲間と刻んだ想い出になるのさ。そしていつか異世界の全てをこの目で見てやるんだ。



 

 一旦ホテルに戻り休憩。


 そして午後二時すぎ、クロの案内でカメラを買いに街に繰り出すことに。



 街中はお祭り騒ぎになっていて、皆笑顔でお酒やらを飲んでいる。ラビコを見つけると、涙ながらにお礼を言ってくる状況。


「なんかすごいんだな……こんな騒ぎになっているとは」


 俺が街の盛り上がりにちょっと圧倒されていたら、ラビコがニヤニヤと右腕に絡んでくる。


「自分のやったことの大きさが理解出来たかい~? 本来なら世界に社長の名前が知れ渡っているところさ~。ほんと、とんでもない男と知り合えたもんだよ。おかげで私の人生変えられちゃったし~あっはは~」


 まぁ確かにとどめは俺というかベスだが、一人で出来たことではないし、ラビコとクロの支援あっての撃破だったからな。


「そうですね、あなたと出会って人生が変わった人はとても多くいると思います。そしてみんな笑顔になっている。あなたは魔法が使えないといつも嘆いていますが、あなたのやっていることは魔法では決して出来ないとても素敵なことなんですよ?」


 そう言ってロゼリィが優しげな笑顔で左腕に絡んでくる。


 いやなんと言われようが、俺は魔法が使いたい。異世界に来た意味ないだろ、魔法使えないと。あとロゼリィ、もうちょっと胸を押し付けてくれ。


「……マスターはとても不思議な人です。気になっていつまでも側にいたいぐらいです」


 んほー……バニー娘アプティが久しぶりに俺の尻をすくい上げるように鷲掴んでくる。やめろってそれ、油断してると変な声出るだろ。



「ニッハーすっげぇな、いやさすがキングってとこか。今まで遠くでこっそり見ていたが、こうやって目の前で女三人はべらす姿は大迫力だぜ! 色んなエロい噂が飛び交う理由が分かんな! つかこの状況なのにいまだにどの女にも手を出してないとか、いつまで童貞を楽しむ気だよキング。ニャッハハ!」


 道の分からない俺達を先導して歩いていたクロが目を見開いて大爆笑。


 楽しんでねーよ! 苦労してんだよ! 何が悲しくて異世界でも童貞を満喫せにゃーならんのだ。異世界を全力で楽しむのに、夢の童貞豪遊生活とかいう要素は含んでねーからな。


 そんなキャッチコピーの異世界旅行ツアーなんぞ誰が行くか!


 毎晩こそこそとアプティのほのかな視線感じて怯えながら一人でやってんだよ……!



 くそ……本当にいつか暴走してやろうか。


 ……ああ、当然二十歳越えたらな! 待ってろ成人式! 異世界にあるのか知らないがな!






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