三十八話 るるるるるぶカレーと寝袋の魔女様
「ご飯炊き上がりましたー!」
ロゼリィが笑顔で鍋の蓋をパカッとひらく。
湯気が立ち、白米の甘い香りが広がる。お米完成、こちらのルーもあと少しで火が通る。
「ふおおお~カレー~カレー~! たまらんのぅ~」
ラビコがヨダレをたらしながら身震いをする。
気持ちは分かる。朝からずっと歩き通しでみんな疲れている。そこにこの香辛料たっぷりのカレー、俺も気が急くぜ。
辺りはもう暗いが、各所で対モンスター用明かりが焚かれているのと、食事の準備でみんな火を使っているのでかなり明るい。
テント広場の裏に川が流れていて、そこに共同の炊事場がある。各テントごとに場所が割り当てられ、薪は有料だが、かまどは常設。水も湧水が引きこまれ、使いやすいようになっている。
鍋、食材も売っているのだが、観光地値段で高い。だからラビコは街で仕入れたのか。
「辛口カレー完成だ。みんな食うぞー!」
「おおお~」
「カレー大好きです!」
「ベスッ」
お皿に盛り付け、手を合わせ食材に感謝。あ、ベスは買ったペットフードな。
「おいしいです!」
「ピリピリピリ~辛おいしぃ~あっはは~」
うめぇ。肉は街からじゃ管理が無理なのと、現地だと高いので肉無しカレーだが十分うめぇ。
周りを見ると、焼きそば、煮込み鍋、バーベキューとみんなおいしそうだなぁ。
片付け完了。
テント利用者は隣の宿屋のお風呂施設を5Gで使えるとのことでお風呂へ。
今日の疲れと汗を流す。女湯は見えない、すまんなみんな。
俺もう眠いんだ……。
ふああ……歯磨いて寝よ。
虫除けの煙を焚き、周囲に置いてからテントの中へ。
ベスはテントから伸びてる雨避けの下な。
中は五人は寝れそうな広さ。俺らには十分……だが寝袋が真ん中に三つ川の字よりも狭く、くっつくレベルで並べられてある。
「社長~待ってましたぁ~ささ、さささ、どうぞこちらに~」
ニヤニヤとラビコが指したのは真ん中の寝袋。右にラビコ、左にロゼリィが陣取っている。
「なぜに俺が真ん中……」
「いやぁ~これが一番正しい姿じゃないかな~と。にっひひひ~」
ラビコが魔女の笑顔。
いやこれ、肩が触れるってレベルじゃねーぞ。
とりあえず寝袋に入ってみる。真横にロゼリィ、ラビコの顔が来る……これ気になって寝れないんですが。
「シ、シャンプー小さいの買ってみました。バラの香りだそうです……」
ロゼリィが髪をアピールする度、甘い香りがする。ラビコからも石鹸のいい香り。
「………………………………」
俺は目をぐっと閉じ、無心の世界へと旅立つ。
「あれれれ~? どうしちゃったのかな~社長は~。チャンスなんじゃないかな~? これチャンスなんじゃないのかなぁ~?」
目を閉じていても想像がつくラビコの魔女笑顔。
俺にとって異世界生活の最大の障害ってラビコなんじゃないんだろうか、と最近気付いた。




