三百六十話 火の国エキサイトツアー5 百万の価値とは様
「ふふ、とてもいいお湯でした。ほらほら、見てください触ってみて下さいこのしっとり肌を」
魔晶列車の駅があるフォレステイに到着後、駅窓口でいつものロイヤルチケットを無事購入。
発車時刻は二十二時。
現在十九時過ぎとまだ時間があるので、ロゼリィリクエストでいつもの温泉施設に来た。どうにもロゼリィはフォレステイの乳白色のトロッとした温泉が好きらしく、毎回同じお店を選ぶ。
目的地の火の国デゼルケーノは相当遠いらしく、このフォレステイから特急でも四日かかるとのこと。お値段もお高く一万G、大体百万円感覚。まぁ、金ならあるからいいんだけど。
正直に俺の気持ちを言うと、美人様であられる女性三人と四日間同じ部屋に入れるチケット一万Gでゲット! ですわ。な? 何も高くはないだろ? ああ、引くなら引いてくれ。
「どれ、おお……吸い付くような触り心地だ」
「ふふ、そうでしょうそうでしょう。フォレステイの温泉はすごくしっとりになるんです」
俺は適当に温泉に入り、愛犬ベスを桶に張った温泉に入れてあげた。
ベスをタオルで拭きながら施設のロビーのソファーに座り女性陣を待っていたら、ロゼリィが湯上がり美人、笑顔満面で走ってきて俺に腕を差し出してきた。
お分かりだろうか紳士諸君。
ソルートンではあまりこういうチャンスはないのだが、旅先ではちょっと気が大きくなったロゼリィの柔肌を触れるチャンスが結構あるのだ。
ロゼリィは普段、肌の露出がほぼない長めの服を着ている。なのであまりその中に隠れた素晴らしいスタイルの身体を見ることが出来ないのだが、旅先では結構薄着になってくれたり、積極的に柔肌を触らせてくれるのだ。
「あ~、ま~たやってる~。もうさ、そんなに触ってほしいならお尻なり胸なり見せちゃえばいいじゃん~。社長なら目の色変えて、獣のように襲ってくると思うよ~あっはは~」
後ろからバスタオルを頭に巻いたラビコが出てきた。体は水着のみで、ロングコートは羽織っていない。もう見た目ほとんど裸ですわ。
「なっ……そ、そ、そういうのはこういう公共の場ではしちゃいけません! ど、どうしてもと言うのなら……お部屋でなら……いいですけど……」
ロゼリィが顔真っ赤にしてモソモソ小声で喋り、下を向いてしまった。後半なんて言ったか聞こえなかったぞ。
「……マスター、ホシツクリームです」
いつのまにか背後にいた湯上がりバニーこと、アプティがなにかのクリームのついた手をニュッと後ろから出してくる。
その大きなお胸様を俺の後頭部に押し当て、ロゼリィに分けてもらったらしい保湿クリームを顔に塗ったくってきたが、俺はクリームを無視し、全ての神経を後頭部に集中させる。
下半身の誰かが「主張してもいいかな?」と路上ポエマー的に声をかけてきたが、まだ待てと抑え、真面目な顔で保湿クリームを楽しんでいる演技をする。
「あっはは! 見て見てロゼリィ~社長ってば反応しないように真面目な顔で必死に我慢してるよ~あっはは、バレバレだっての……あっはは~」
俺の下半身を指し爆笑するラビコ。
ちっ……なんでラビコはこんなに察しがいいんだよ。ロゼリィも視線を下に向け、余計顔を赤らめてくる。
ああ、ラビコの察しがいいのではなく、一目瞭然なんだ。
あれほど言ったのに、俺にだけ聞こえる美しい詩と共に彼が力強く立ち上がり叫んでいた。見たら一発で分かる状態で。
と、このように旅先では数々の童貞チャンスが転がっている。
ロゼリィの柔肌、ラビコの水着、アプティのお胸様、これほどのサービスを受けられて百万円。なんの文句があろうか。追加料金もいいぞ。
夕飯、以前寄った屋台の鉄板焼き。
森の豆々焼きとかいう、記憶で唯一まともだったやつを全員分頼んだ。
「豆本来の味のみ楽しめる高級品だな」
そうとしか言えない、真顔で食うご飯。
以上メシ終わり。
二十二時フォレステイ発デゼルケーノ行き。
王都ペルセフォスに向かう列車なので、こんな時間なのに駅はかなりな混雑具合。
世界的に有名な大魔法使いであるラビコがいると気付いた人でちょっと騒ぎになったが、すぐに列車に乗り込み回避。
ソルートンでは普通にラビコを見れるし地元だからこういうことはあまりないのだが、一歩出ると結構な騒ぎになるなぁ。さすがペルセフォス国王と同等の権力を持つ大魔法使い様だ。
見た目は水着一丁の露出癖魔女なんだがね。
つかこんな水着一丁にロングコートとかいう、超目立つ格好をしているから見つかって騒ぎになるんじゃ。たまにはロゼリィみたいに露出の少ない……あ、だめだだめだ。それじゃあ俺の目の保養にならないじゃないか。
ラビコの水着、よし。




